第27話 後遺症は後を引く
入学式の次の日は、午前中は普通授業、午後からは部活オリエンテーションがある。午後からは二年、三年は、このオリを見てもいいし帰ってもいい。一年生は、午前中校舎の案内を受けた後、午後このオリに参加する事になっている。
俺は、この時間、図書室は開いていないし、家に帰っても一人で仕方ないのでこのオリを見る事にした。多分去年と同じだろうけど。
この学校は部活が活発だ。運動部は硬式野球部、男女テニス部、男女バレーボール部、男女バスケ部、男女サッカー部、男女剣道部、男女空手部とかある。文化部も演劇部、軽音部、ブラスバンド部がある。
ただ、これだけあると当然紹介時間も短く、一つのクラブが説明時間五分、入れ替え時間を含めると、二時間近くかかってしまう。
俺は、大吾が出る男バスの紹介まで見て帰る事にした。何処の部も過去の実績や入部したらこんなに楽しい事が一杯あると言っている。中には本当かよと思ってしまう所も有った。
やがて男子バスケ部の番になって、大吾と先輩達が壇上に上がった。結構緊張しているのが良く分かったけど、つかえずに紹介していた。流石だ。
男バスの紹介が終わったので帰ろうとすると視線を感じた。その方向を見ると、
うっ、優子が俺の方を見ている。冗談じゃない。視線を直ぐに逸らして出口の方に向かった。
今更だろう。なんで俺を見るんだ。最近男と会っていない様だけど変な事考えていないだろうな。
こっちは、まだあの録画を思い出して吐き気をもよおす時があるというのに。しかし、いつになったらあいつの事を頭の中からサッパリ忘れる事が出来るんだ。
教室では距離が離れているとは言え、嫌でも目に入ってしまう時がある。そんな時は必ずっていいほど寂しい顔をする。いい加減にしてほしいものだ。
次の日は、俺達の午後の一番の授業が自習時間になった。但し体育館で図書オリを聞くのは問題ないらしい。
教室に居ても仕方ないので大吾と一緒に…あれ矢田さんも来る。他の人も結構体育館に行く様だ。皆図書オリ興味あるのかな?
体育館に行くとまだ始まっていなかった。壇上で榊原先生と塚野さんが説明の準備をしている。後ろにプロジェクター投影板が置かれていた。
最初に榊原先生が説明を開始し始めると、何故かみんな注目している。皆が来た理由が分かった。これか。なるほど。俺も理解できる。榊原先生綺麗なんだよな。スタイルもいいし。
榊原先生が最初の説明を二十分位した後、塚野さんがちょっと緊張した感じで説明し始めた。
特に蔵書の所では、ラノベやアニメ単行本も用意してあると言うと、新入生が喜んでいた。
そんな説明を聞いていると何故か矢田さんが、小声で
「柏木君、図書委員にならないの?」
「俺には不向きですよ」
「そうかな。そうでもないと思うけど」
「何を根拠に?」
「後は教室に戻ったらね。ここでは私語禁止」
自分が言いだしたくせに。
一通りの説明が終わった後、榊原先生が図書委員の募集をしている。なりたい人は私か塚野さんに声を掛けてくれと言って終わった。
図書オリが終わったので、俺達は、一度教室に戻った。そして席に着くとまた矢田さんが
「ねえ、柏木君。図書委員やりなよ。塚野さん一人なんだしさ」
「それ言うなら矢田さんやればいいじゃないか」
「私こそ不向きよ。ところでさぁ。覚えていない私の事?」
俺はじーっと彼女の顔を見たけど、去年1Bに居た事覚えていると適当な事言うと
「ふん、全くもう」
なんで、俺は矢田さんからこんな態度取られなければいけなんだ?
やがて、塚野さんが戻って来た。
「柏木君、聞いてくれていたんだ」
「えっ、分かったの?」
「勿論」
「ふふっ、柏木君、塚野さんもこう言っているよ」
「矢田さん、要らぬ事言わないで」
「何の事?」
「さぁ?」
何とか、柏木君を図書員にさせたい。塚野さんは性格も優しくて人当たりもいい。私達が話しかけてもいつも笑顔で会話してくれる。だから塚野さんと柏木君が接点を持てば、柏木君も嫌でも私達と話す事になる。
しかし、こいつ本当に私の事覚えていないのか。まだ三年しか経ってないぞ。
今日から、図書室が開いた。家に帰って部屋に居るとどうしてもあいつの事が頭に浮かんでくる。
だから当面の間、俺は最終下校時間になるまで図書室にいる事にした。新学期が始まったばかりだ。予習する教科は一杯ある。
受付は、榊原先生と塚野さんが交代でやっているけど、どう見ても塚野さんの方が多い。それに最初の内は、新入生も図書室に来ていたけど、その内決まった生徒しか来なくなった。
そのほとんどは、俺と同じ様に勉強か本を読んでいる奴ばかりだ。後は塚野さんが言っていた二年生、三年生の常連さん達だ。
それに図書オリが終わって二週間弱が経つというのに誰も図書委員の応募には来ていない様だ。
今日も最終下校時間を知らせる予鈴が鳴った。テーブルに出して有った教科書とノートを仕舞うとバッグを肩に担いで図書室のドアを出ようとして塚野さんに呼び止められた。
「柏木君、ちょっと待っていてもらえる?」
「構わないけど」
俺は昇降口で待っていると塚野さんがやって来た。
「まだ一緒に帰れない?」
「無理」
「そう、分かった」
寂しそうに言うと自分の下駄箱に行って靴を履き替えるとそのまま校舎を出た。少し時間をおいてから校舎を出ると彼女が校門の所にいた。下を向きながら歩いている。
多分、図書委員の事だろうけど、なんで俺に声を掛けるんだ。他の女子や男子に声を掛けてもいいじゃないか。理由は分からないけど今はとにかく、女子からは離れておきたい。
―――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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