第23話 悪い男にはお仕置きを
この話で第一章が終わり、次の章の助走が始まります。
―――――
俺、三谷耕三。優子のスマホに入っていた矢田の録画を利用してあの女を脅して、都合のいい女にしようと思っていたけど、冗談でもああいう事を言われると、流石にビビる。目が本気だったからだ。
俺は、放課後、学校からの帰り道一人で歩いているといきなり前後に車が停まった。中からサングラスを掛けた体のでかい男二人が現れて
「来て貰おうか」
咄嗟に逃げようとしたけど、一瞬で捕まった。車の中に入れられると目隠しをされた。
「騒ぐと殺すぞ!」
「ひっ!」
良く分からないが、車を降ろされて引っ張られる様に連れて来られた。目隠しを外されると
「三谷耕三だな。間違いないか」
「ひっ!」
「答えろ!」
「は、はい」
「そうか。お前の様な卑しい身分の輩が分不相応に口にした言葉にお怒りになっている方がいる。お前のような愚かな生き物は、輪切りにして東京湾に捨ててもいい様なクズだ。
脅すだけでいいと言われたが、あの方をお守りする俺達にはそんな優しい事は不向きでな」
その男が顎をクイっと動かすと足に激しい痛みが走った。後は、体中に激しい痛みが襲って気を失った。
気が付いたのは病院のベッドの上だった。左足が吊られ。右腕はギブス。頭には包帯が巻かれ右目は眼帯が付けられていた。胴体も包帯が巻かれて固定器具で固められている。目を開けると
「気が付いたかね」
「ここは?」
「江南(こうなん)病院だ。君は道路に捨てられていた。素っ裸でね。身分証明になるものが全く無いのだが、君は一体誰だね」
「えっ?!」
俺は急に体中が震え出した。そして恥ずかしけど失禁してしまった。あの女が言っていた事は本当だったんだ。幸い記憶はあるらしく、名前と住所、親の名前と電話番号を教えた。
警察官が入って来たけど先生が
「何かに非常に怯えています。長い話はしない様にして下さい」
「分かりました」
私は、次の日も登校したけど、誰も口を利くどころか視線も合わせてくれない。その上、耕三も居ない。
予鈴が鳴って担任の先生が入って来ると
「三谷耕三君は事故に遭って、登校は一ヶ月後となります」
「「「「えーっ!」」」」
皆が驚いている。何が有ったんだろうか。でもその期間休むという事はぎりぎり学期末試験は受けられるが進級出来る点数を取るのは難しいだろう。でもどうして?
一ヶ月かぁ。もっと優しくしてあげればよかったのに。あの人達、怖いからなぁ。これで少しは懲りただろう。後は仕上げだな。
私は家に帰ると
「お嬢様、これを」
「なに?」
「あの男のポケットの中に有ったスマホです。既にロックは解除してあります。ご覧になりますか」
「あの録画は消して有るわよね」
「抜かりなく」
「それを渡辺の家のポストにでも入れておいて」
「はっ!」
「待って、三谷の家のPCは?」
「既に二課に渡して有ります」
「ふふっ、手配が早いわね」
「恐れ入ります」
さて、これで利用価値もない雑魚は消えた。さてどうするかな。でもこれでは借りは返してないか。
俺は、抜け殻の様な思考になっていた。大吾が気分転換にバスケを一緒にやろうと言ってくれたが、とてもする気にはなれない。
かと言って、放課後、ダラダラと家に帰ってもあいつの事を思いだすだけだ。空っぽの頭の中で考え付いたのが図書室だ。静かだし寝ていても本を読んでいても誰も文句を言わない。
予鈴という目覚ましもある。優子に裏切られた俺は、その週の水曜日から放課後、最終下校時間の予鈴が鳴るまでそこにいる事にした。
この学校でここに来たのは優子が体育祭の時、バトンタッチの練習を見ている時以来だ。
なんでこんなにあいつの事ばかり頭に浮かぶんだ。
ぼーっと毎日外を見ているか、本を読んでいるか、偶にだけどその日の授業を復習しているか、寝ているかだけだった。
あれから一カ月近くが経った。いきなり我が家のポストに入れられていたスマホの画像を弁護士を通して警察に持ち込んで解析して貰った所、私以外にも何人かの女性が私と同じ目に遭っていたようだ。
そして分かった事は、あれをする前に精神を興奮させる麻薬の様な薬物を飲まされていた事が分かった。
私もする前に水を飲んだ方が良いと言って二人で飲んだけど、あれにも入っていたのだろうか?
弁護士はそれまでは同意による行為であり、三谷の責を問うのは難しいと言っていたが、これによってこの件は大きく動いた。
学校への報告もあったらしいが、私は被害者扱いという事になり、本人が退学の意向がない限り学校からは何もしないと弁護士が言っていた。
また、事件の内容が、生徒には精神的に影響が大きすぎて健全な心の成長を阻害するとして、公表はしないという事だった。
単なる学校側の世間に対する隠ぺいだ。でも私達被害者からすれば良かったのかも知れない。
私だけが知っている事だけど、三谷は薬物使用による強制不同意性交罪として重い罪になるだろうという事と、未成年である三谷の両親に慰謝料の請求が出来ると言っていた。これであいつはもう学校に来る事は無い。
でも、クラスの子はそんな事知らない。私はあれ以来、誰も話しかけてくれるどころか冷たい視線を向けられるだけだった。
いじめが無いのはせめてもの救いだ。
「ねえ、君。もう最終下校時間だよ」
「……………」
「ねえ、起きて」
「う、うん?」
「う、うんじゃないわよ。君が退出してくれないと図書室が閉められないの」
「えっ?」
寝てしまっていたのか。俺が起き上がると、目の前に肩まである艶やかな髪の毛にちょっと丸顔で大きな目、可愛い唇の女の子が立っていた。
「ほら、早く退出して」
「わ、分かった」
寝ぼけ眼のまま図書室を追い出された。
「なに、あの子」
私は、退室の為に図書室を見回ると、あの子がいた席の下にノートが落ちていた。拾うと名前欄に
「ふーん、柏木悠斗って言うんだ。明日返さないと。でも明日来るのかな?」
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次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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