第20話 いつもと違うクリスマスと冬休み


 今年のクリスマスイブは終業式の前日。俺は優子と一緒に過ごす予定だ。前日の土曜日も俺が稽古に行った後、優子と会ったけど、今迄と何かが違う。


 前までの優子だったら、翌日のクリスマスイブで頭が一杯だったのに、今年は俺と過ごすクリスマスイブに積極的じゃない。




 クリスマスイブの当日、朝午前九時に俺の所にやって来た優子は、いつもなら俺のベッドに潜り込んで来るのに潜り込んで来ない。ここ一か月間いつもそうだ。


 俺のベッドの横に座りながら

「今日午前中は、お買物行ってぇ。映画見て食事してそれからは悠斗の部屋で一緒で良いかな?」

「ああ、そうしよう。早速出かけるか?」

「うん、それでね。明日、矢田さん達が学校終わったらクリパしようって言われているの、行って良いかな?」

 これなんか、前だったら行きたくないの一言だったのに。


「優子は行きたいのか?」

「うーん、付き合いも有るし、仕方ないかな。午後二時から午後五時位までクリパをカラオケでやる予定」

「そうか、じゃあ、終わったら会えるな」

「学期最後だし、二次会に行くかも知れない」

「えっ?!二次会行くの?」

「うん、付き合い」



 どういう事なんだ。本当にクリパなのか。今迄絶対にこんな事言わなかったのに。

まさか…だよな。優子に限ってそんな事は無いと思う。中学二年の時に暴漢から救って以来、俺とずっと付き合って来た。


 もしかしたら倦怠期って奴かな。大吾に聞きたいけど、あいつも恋愛経験、俺より薄いし。でも参考に聞いてみるか。



「優子、少し遅いけど朝食一緒に食べるか?」

「悠斗、もう午前九時過ぎだよ。私は家で食べて来た」

「そうか。じゃあちょっと待っていてくれ」

 おかしい。前だったら、私が作るとか言ってくれたのに。一度疑い出すときりがないか。



 俺が、朝食を食べ終わると早速デパートのある街に行った。お互いのプレゼントを買う為だ。プライベートショップを見ながら


「悠斗、今年は何にしようか?」

「そうだな。リングとかいいけど、学校に着けていけないしな。でも一緒に身に着けられるものがいいな」

「うん、私も。何にしようかな」

「あれは?」

「ペアグラス。色違いを二脚ずつ買って、片方を悠斗の家に、もう片方を私の家に置いて、会った時はそれで飲み物を飲むの」

「おっ、良い考えだな」


 買ったのはマグカップだ。俺は白をベースに植物の絵が描かれているカップ。優子は淡いピンクをベースにクッキーなどのお菓子が描かれているカップだ。


「ふふっ、可愛いね。これなら暖かい飲み物も冷たい飲み物も使えるから一年中使える」

「そうだな」



 その後は、前から決めていたクリスマスイブに相応しいラブストーリーの映画を見た。そして少し遅くなったけど、いつもの〇ックじゃなくて、ちょっとリッチなクリスマスランチを二人で食べた。


 この時は、全くいつもの優子だった。ちょっと我儘で直ぐにくっ付いて来る。


 そしてその後は俺の部屋に戻って、思い切り楽しい事をした。梨花はいない。午後七時になって


 コンコン。


「お兄ちゃん、優子お姉ちゃんいる。ご飯だよ」

「食べて行くか」

「うん」


 まるで、俺の心のしこりを飛ばしてくれる様な一日だった。優子の家に送って行ったのは午後十時。


 遅くなって済みませんって謝ったら、お母さんから連絡も来ていたのか、えっ、泊るのかと思っていたけど、なんて冗談か本気か知らない事を言われて苦笑いしてしまった。


 明日の放課後、優子は矢田さん達とクリパだ。俺はどうするかな。




 翌日、俺は放課後一人で帰った。大吾に聞こうと思ったけど、あいつは部活があると言っていた。


 家に帰った後、お母さんに頼まれて駅前のスーパーに買物来ていた時、優子のお母さんとバッタリ会った。


「あれ、悠斗君。今日も優子と一緒じゃないの?」

「ええ、優子は放課後午後二時からクラスの友達とクリスマスパーティをすると言ってました」

「そ、そうなの」


 おかしいわね。今日も悠斗君と会うから夜は遅くなるって言っていた。てっきり悠斗君と一緒だと思ったのに。



 少し遅めのお昼をお母さん達と食べてから一人でダイニングに居ると

「お兄ちゃん、今日は優子お姉ちゃんと会わないの?」

「うん、カラオケでクラスの子達とクリパだって」

「へーっ、陽子ちゃん達と私もカラオケ行くから会うかな?」

「お前受験生だろう。そんな暇あるか?」

「お兄ちゃんの高校なら何も問題ないよ」

「そ、そうか」

 妹は出来が良いからな。



 


「耕三、ずっとこれなの?」

「優子は嫌いか、好きだろう。俺プレゼントはこれだ!」


 くーっ!


 溺れているのは分かっている。でも抜け出せない。悠斗は絶対に大切な人。でも耕三との関係は絶てない。分からなければいいんだ。



 夕方になり

「優子、俺と柏木とどっちがいい」

「何の事?」

「勿論人間としてだ」

「悠斗に決まっているじゃない」

「じゃあ、もうおしまいだな。二人で退学か?」

「ど、どういう事?」

「柏木と手を切れ。俺を選べ」

「出来ないよ」

「でも、こっちは俺なんだろう」

「言わないで」




 そう言えば、明日から冬休みの宿題一緒にやる予定だな。今日の事聞いてみるか。



 翌朝、午前十時に優子は冬休みの宿題を持って我が家に来た。俺の部屋は狭いのでリビングでやっている。


「悠斗、これって」

「ああ、これか、これはだな…」

 あれ、優子の喉元に赤い点がある。


「なあ、優子、喉に赤い点があるけど?」

「えっ、あはは、昨日カラオケで痒くなって掻いてたら傷がついちゃった」

「そのカラオケ大丈夫だったのか?」

「それは大丈夫だよ」


 あいつ、昨日、私の体にわざとキスマークを付けていた。止めてって言ったのに。悠斗と三日は出来ない。上手く言い訳しないと。


 でも悠斗は、宿題を優先したのか、全部終わった三十日に求めて来た。体からは綺麗に消えていたから分からない。


 一度、終わると

「優子、正月は一緒に初詣行こうな」

「勿論だよ。悠斗もう一回」

「うん」


 偶にはこうしないと疑われちゃう。


―――――

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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