第17話 どうすればいいか分からない


 私は、悔しくて中々眠れなかった。眠ろうとしてもあの時の記憶が蘇って眠れない。結局、うつらうつらしながら午前七時になってしまった。もう眠れない。


 ちょっと、早いけど悠斗の家に行った。お母さんには約束だからと言っておいた。


 インターフォンを押すと直ぐに悠斗のお母さんが玄関を開けてくれた。

「おはよう、優子ちゃん。悠斗から聞いているわ。部屋に行ってあげて」

「はい」


 おかしい、いつも微笑みが絶えない可愛い顔が悪い方に緊張している。何か有ったのかしら。



 私は、梨花ちゃんに気付かれない様にゆっくりとドアを開けて部屋の中に入った。悠斗はまだ寝ている。


 寝顔が可愛い。タオルケットはベッドの下に落ちてTシャツとトランクスだけになっている。私は下着だけになった。自分の体を触る。悠斗しか知らなかったのに。


 タオルケットを手に取ると悠斗の横に寝てタオルケットを二人に掛けた。悠斗の体に自分の体をくっ付けて右腕を彼お腹に回して顔を彼の脇腹にくっ付けて目を閉じた。




 うん?暖かい。右腕を動かすと優子が目を閉じていた。スースーと寝息をたてて寝ている。


 昨日の事を考えると…。よく見ると優子の顔色が良くない。それに苦しそうな顔をしている。絶対に何か有ったんだ。とにかく今はこのまま寝かせてあげよう。



 午前十時になった。俺は流石に目が覚めたが、優子はまだ寝ている。髪の毛をゆっくりと撫でながら寝顔を見ているとゆっくりと目を開けて来た。


「悠斗…」


 目に涙が溜まって来た。そして

「悠斗、悠斗…。抱いて思い切り抱いて。めちゃくちゃにして」

「どうしたんだ」

「いいから!お願い!」


 隣に梨花がいるかもしれないけど、優子の顔が必死になっている。


 だから、いつもより…。


 優子が思い切り抱き着いて来る。夢中になっている。いつもと全然違う。いつもより何回も気絶しそうになっている。どうしたんだ。


 二回終わると落ち着いたみたいで俺の顔を見て


「私、私、私…。やられちゃったよ」

「何だって!誰だ」

「言えないの」

「何故だ!」


「言ったら私達、退学になってしまう」

「どういう事だ」


 私は三谷に言われた事を悠斗に話した。でも名前は言っていない。


「なんて野郎だ。優子、お前となら退学になろうがどうなろうが構わない。そいつがSNSにアップする前に抑え込んでしまえばいい。家は分かるか?」

「分からない」


「分かった。今度連絡してきたら直ぐに俺に知らせろ。お前と会った所で首と胴体を切り離してやる。警察なんか動きが悪い」

「駄目、そんな事したら悠斗が」

「俺は構わない。優子の方が大事だ」

「でも…」


 俺は、一度部屋を出ると梨花はいなかった。お母さんも居ない。お父さんは勿論仕事だ。

だから思い切り優子を抱きしめた。


 

 お昼を食べずに午後三時までした。

「悠斗。お腹空かない?私空いちゃった」

「そうか、お腹空いたのが分かれば少し気が持ち直したか」



 遅すぎる食事を二人でするとまた部屋に戻った。二人でベッドの端に座りながら

「悠斗、休みの間はずっと傍に居たい」

「勿論だ。後、四日しかないけどずっと居よう」

「うん」



 一緒に居る間も悠斗は名前を教えろと言って来た。なんで教えないんだと怒る時も有ったけど、私は悠斗が大切。人殺しなんかにさせたくないと言って頑なに三谷の名前は出さなかった。


 もし教えたら悠斗の性格だ。間違いなく三谷を殺さないまでも五体満足で居させる訳がない。そうすれば悠斗は捕まってしまう。退学も免れない。


 それでもあいつの対応を二人で考えた。でもいい方法が見つからない。


 警察になんか言ったら、動きが遅い分アップされてしまう。勿論、意図的に会って悠斗に殺させる訳にもいかない。生きていたらアップされるからやるとしたら殺すしかないけど。


 スマホを取り上げてもPCにコピーされている可能性が高い、いやコピーされているはずだ。


 だとすれば…。いい方法が見つからない。あいつを付けて家に踏み込む事も出来るけど、バレない様に付けれるだろうか。バレたら終わりだ。


 全く解決策が見えないままに二学期が始まってしまった。スマホのアドレスを知られているから1Bにいないだけじゃ意味がない。



 二学期初日、悠斗と一緒にいつもの様に手を繋いで登校した。あいつと顔を合わせたくない。悠斗と教室の前で別れて1Bに入ると来生さんが挨拶して来た。


「おはよう渡辺さん」

「おはよう来生さん」


「どうしたの、顔が暗いけど」

「えっ、うん何でもない」

「そうなら良いけど」


 あいつは、私の左後方にいる。意識して見ない限り見えないから無視をした。幸い、矢田さんも五反田も近寄ってこない。


 始業式が体育館で有った後、教室に戻ると矢田さんがやって来た。


「おはよ、渡辺さん、二学期も楽しくやろう」

「……………」

 それだけ言うと離れて行った。単なる挨拶か。



 渡辺さんがおかしい。三谷に頼んで渡辺さんと話す事に抵抗を無くさせ、二学期から私達のグループに入れようと思ったけどあれでは全然駄目だ。


 ドズニーランドで最後のアトラクションの一つ前まではあれだけ楽しそうにしていたから問題ないと思ったのに。


 どちらにしろ、明日にでも三谷に聞いてみるか。



 私は、次の朝、渡辺さんが来ていない教室で三谷に

「三谷君、渡辺さんとは上手く行ったんでしょ」

「ああ、途中まではな。最後のアトラクション見る前に偶々一緒にトイレに行ったら、もう近寄るな、話しかけるなって言われてさ。俺もそれまで上手く行っていただけに全然理由が分からないよ」

「それ本当なの?」

「俺が矢田さんに嘘つく理由もないし、何の得にもならないよ」

「分かったわ」


 おかしい、午前中あれだけ笑って、船のアトラクションが終わった所までは全く上手く行っていたのに。


 何か有る。でも原因はどっち。多分、三谷。でもあいつもいきなり嫌われたと言っている。

 

 このままでは一学期と同じだ。五反田は使えない。渡辺さんのあの様子では、何も話してくれないだろう。何とかしたいが。




 私は、中休みには必ず悠斗の所に行った。昼休みも直ぐに悠斗の所に行って悠斗と中山君と一緒にお昼を食べた。放課後も悠斗と一緒だ。


 あいつからも連絡はない。でもこのまま何も無い訳はない。


―――――

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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