第16話 許されない

途中から後半にかけて気持ち悪い場面が出て来ます。怒りにまかせて決してワイングラスを投げたり、コーヒーカップを投げたりしない様に。…おちょこも投げないでね。…フォークもダメェー。


―――――


 俺、三谷幸三。都立大橋高校に入学した。1Bには自己紹介の時に目立った人が二人いた。一人はイケメン五反田信夫。でもこいつは馬鹿だという事が直ぐに分かった。


 もう一人は渡辺優子さん。めちゃくちゃ可愛くて綺麗。スタイルも抜群。でも後で1Aの柏木と付き合っている事を知った。まあ、当たり前だ。


 俺はそれなりに受けも良いし、適当に人と距離を保つのも得意だ。生きる術でもある。だから周りと適当に付き合っていた。



 1Bの中に仕切りたがっている矢田康子という女子がいる。ブスでも無いが特に可愛い訳でもない。そいつは五反田と渡辺さんを自分のグループに入れて、クラスの中で優位な位置を占めようとしているけど、俺にとってはくだらない事だ。


 でもこいつらは、1Bで気分よく過ごすのには役に立ちそうだ。だから声を掛けられるままに付き合っていたら、今回のドズニーの話が有った。


 計画では、途中で矢田さん達と合流して親交を深めようと言っている。その中には渡辺さんの名前も有った。


 そして矢田さんから言われた言葉。渡辺さんと仲良くして欲しい。最初意味が分からなかったけど、五反田を対極として渡辺さんの心を溶かして仲良くして欲しいという事だった。


 意図は何となく分かる。だからこれを利用させてもらう事にした。まさかあれがこんな所で役に立つなんて思わなかった。それは


 彼女が柏木と一緒に渋山のラブホ街を歩いている所を見つけたのでスマホで撮っておいた。


 その時は、特にそれを何する気も無かった。でもドズニーランドで二人で話したり船に乗っている内に、興味が湧いた。


 でも簡単に断られるだろうと思って誘ったら、簡単にOKしてくれた。チャンスが向こうからやってきた感じだ。


 普通の男女なら、あんなものどうにでも理由はつくが、あの二人が付き合っていると言う周知の事実が邪魔をした。




 今日は、渡辺さんとファミレスで会う日。昼頃会って、上手く行けばいい。失敗しても何の問題も無い。あんな録画俺には興味も無いから。




 私、渡辺優子。夏休みが終わる直前の土曜日。三谷君と会う事にした。悠斗には言わない約束だけど、悠斗が用事が無い時はいつも会う習慣が有るからこの曜日しかなかった。


 私は、三谷君が指定した渋山のファミレスに行った。あまり場所は良くないけどファミレスなら大丈夫だろう。


 行くともう彼は来ていた。私が入り口に姿を見せると軽く手を振っている。近付いてテーブルを挟んで反対側に座ると


「ありがとう渡辺さん、来てくれて。とても嬉しいです。食事しながら話して終わりにしましょう」

「はい」

「渡辺さんも選んで。俺先に来たから料理決めてあるから。あとドリンクバーも」

「はい」


 私はスパゲティのペペロンチーナとドリンクバーを選んだ。彼はハンバーグステーキセットとドリンクバー。


 注文してから、ドリンクバーを一緒に取りに行って席に戻ると


「これ約束だから」

 そう言って、私と祐也の映っていた録画を目の前で削除してくれた。


「こうして会えるだけでもとっても嬉しいです。二学期始まってもしつこくなんかしないから、ここだけ色々話をしましょうか」


 彼は約束通り、消してくれたし、話の内容もドズニー事だったり、自分が過ごした夏休みの事で、ごく普通に楽しい時間だった。私も話す事に抵抗が無かった。



 料理が来ると食べながら、

「俺、先にドリンクお代わりするから、その後渡辺さん言って来て」

「分かった」

 ごく普通の事だ。食事中だからそうするしかない。


 彼女がドリンクサーバに行った。これはほんのいたずら。

 渡辺さんが何事も無く帰るか、運命が変わるかは、彼女が水を飲むか飲まないかに掛かっている。

 さて、自分の運命をどう決めるかな?

 


 料理も食べ終わってドリンクも飲んだ後、水も飲んで口の中をすっきりさせると


「じゃあ、渡辺さん帰ろうか」

「うん」


 これで終わりなんだから、もっと楽しく話してもよかったか…。あれっ?


「渡辺さん。どうし…」


 



 後はよく覚えていない。


 気が付いたら、

「ここは?えっ、何で私裸?」


「気が付いたの渡辺さん。とても良かったよ。しっかり撮らせてもらったし」

「三谷君、これはどういう事?」

「ファミレスを出たら、渡辺さん、急に俺に寄りかかって来て、とても帰れそうにないから、近くのここに入ったのさ。

 でも君の寝顔や体を見ていたら、ちょっとムラっと来ちゃって。君が悪いんだよ。そんなに可愛い顔でそんなにいい体なんだもの。目が覚めたからもう一度しない?」


「する訳ないでしょ。直ぐに帰る」

「へーっ、じゃあ、これ今からSNSにあげるね」


 三谷のスマホに撮られていたのは、彼からされている私の姿だった。


「どうする。俺は別に良いんだよ。それに君初めてじゃないし、柏木には分からないだろう」


 そう言って、私の体に触って来た。最初いやがったけど、SNSにアップすると言って段々抵抗が出来なくなった。


 悔しいけど、めちゃくちゃうまかった。我慢に我慢したけど駄目だっだ。何回も気絶しそうになって、大きな声を上げてしまった。何回されたのか分からなかった。




 おかしいなぁ。優子に何回も連絡しているけど全然既読が付かない。電話しても出ない。もう午後三時だ。何か有ったのかな。とにかく優子の家に行って見よう。



 俺は優子の家に行くと誰も居なかった。仕方なしに家に戻って優子から連絡が来るのを待った。




「渡辺さん、凄いね。驚いちゃった。偶には会ってね。でも学校じゃ、全くの他人でいよう。お互いバレたくないでしょ」


 私は、シャワーも浴びないで洋服を着ると

「ふざけないでよ」


 バシッ!


「痛いなぁ。何するんだよ。君だってあれだけ喜んでいたじゃないか」

「うるさい!二度と連絡するな。お前の連絡先はブロックしてやる」

「あっそう。じゃあSNSにアップするよ。目が覚めた後のも録画したから。こっちの方が渡辺さん迫力あるよね。

 それとね君と柏木のラブホ街の録画。PCにも入っているから。彼にばらして俺に危害でも加えたら、その時は二人共退学だから」

「……ばかやろう」


 私は、ドアを開けて思い切り外に出た。会いたい、悠斗に会いたい。でもこんな体じゃ駄目だ。とにかく家に戻ってシャワー浴びたい。



 私は、家に戻るとお母さんの声も無視してお風呂に飛び込んだ。とにかくボディーシャンプーで何回も体を洗った。あいつの匂いを消したい。髪の毛も三回洗った。


 でも、悲しくなって、シャワーの栓を全開にして顔に浴びながら涙を流した。


 悔しい。悔しい。本当に悔しい。悠斗に会って全部話したい。嫌われたっていい。悠斗には全部知って欲しい。でもあんな画像がSNSに上がったら悠斗も退学になってしまう。

 とにかく、明日は悠斗に会いたい、いや今からでも会いたい。


 スマホを見ると、えっ?!何回も連絡が入っている。当たり前だ。でも直ぐに声を聞きたい。


『優子、どうしたの?全然出なくって』

『悠斗、今から会いたい。直ぐに会って』

『分かった。直ぐに行くよ』

『待ってる』


 俺はお母さんに優子の所に行って来ると言うと返事も聞かずに飛び出した。何か有ったに違いない。


 全速で走って彼女の家に着いてインターフォンを鳴らすと直ぐに優子が出た。


「上がって。私の部屋に来て」

「うん」


 目が赤い。


 俺達は優子の部屋に行くと直ぐに俺に抱きついて来た。理由は分からないけどボディシャンプーと髪の毛のシャンプーの匂いが一杯した。

「どうした優子?」

「こうさせて。何も言わずにこうさせて」


 優子が思い切り抱きしめてくる。俺も彼女を抱きしめた。どの位経ったか分からない。ドアの外から陽子ちゃんが声を掛けて来た。


「二人共もう午後七時ですよ。終わりましたか?」


 全く勘違いされている。


「悠斗、明日は朝から会って。そして思い切り抱いて。お願い」

「それはいいけど…」

「ごめん、今はそれしか言えない。悠斗。私には悠斗しかいない」

「俺も優子しかいない」


「じゃあ、帰るね。明日はいつもの様に午前十時でいい?」

「いや。明日は午前八時に悠斗の部屋に行く」

「分かった。お母さんに言っておく」

「うん、お願い」



 俺は、家に戻りながら優子に何かが有ったに違いない。でもそれが何かなんてこの時点では知る由もなかった。


―――――

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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