第15話 楽しい筈のドズニーランドなのに


 プールに行った後も祐也とは毎日会った。やっぱり家が近いと便利だ。そして七日から九日まで二泊三日で祐也の家族とうちの家族で二泊三日の海水浴。


 外房の御宿という所だ。昼は海水浴、夜は花火。お父さん達もお母さん達も妹達も大はしゃぎ。天気も良くて滅茶苦茶楽しかった。


 海から帰って来てからも祐也と一緒に遊んだ。そして残念だけど十三日から十六日まではお互いのお母さんの実家にお盆でお出かけ。寂しいけど仕方ない。


 お母さん達の実家から帰って来て本当は十八日に例のプールのある遊園地に遊びに行こうとしてたんだけど、チャラ兄さん達のこととか、後、私が二十二日にドズニーランド行く事になっていた為、中止。家で遊ぶ?ことにした。




 迎えた二十二日。朝が早い。東京駅の矢田さんから言われた場所に午前七時に集合した。


「おはよう来生さん、十和田さん」

「「おはよう、渡辺さん」」


「おはよう、渡辺さん、来生さん、十和田さん」

「「「おはようございます。矢田さん」


「みんな集まったわね。じゃあ行こうか」


 私達女の子六人で電車に乗ると二十分も掛からずにドズニーランドの駅に着いた。

「うわーっ、もうこんなに人が居る」

「皆待合せ見たいね」


「早くゲートに並ぼう」

「「「「「うん」」」」」



 矢田さんの友達二人、名前忘れたけど、人当たりのいい子達だ。今日は楽しめそう。


 チケットは全員ネットで購入しているけどファストパスとかは取っていない。ゲートは二つ。持ち物検査もするらしい。だから入場に時間掛かると思っていたけど、思ったより早く入れた。


「みんな、先ずは火山コースターだよー!」

「「「「「おーっ!」」」」」


 何故か皆乗りが良い。女の子六人が一緒に走る姿は他の人からどう映るか知らないけど

「渡辺さんは、足早いわ」

「そっかな」


 矢田さんや他の二人は来た事が有るのかグッズを頭に付けていた。結構似合っている。私も悠斗と来ているけど、あういうグッズはちょっと苦手。



 全員で三十分並んで何とか乗った。来生さんや十和田さん、それに矢田さんまでがキャアキャア言っている。学校のイメージと全く違って思い切り可愛い女の子だ。私も前に悠斗と来ていなかったら、同じ事になっていたな。




 コースターも終わり、今度は女の子らしく?メリーゴーランド。乗りながらお互いにスマホで写真の撮り合い。楽しい。



 メリーゴーランドが終わったら、今度は舞台イベント。このドズニーランドのメインキャラクターが踊ったり歌ったり、悠斗と来た時とはまた違った楽しさがある。


 そして一度休憩。


 今度はドズニーのヒストリーレビューを見た所で、お昼になった。



「みんな、お昼にしようか」

「「「「「うん」」」」」


 西部劇風のレストランで少し高いけど楽しいランチタイム。女の子六人も居ればワイワイキャアキャアと楽しい会話で盛り上がった。


 そこに一時間位いた後、順番にトイレタイム。終わった所で次のアトラクションに行こうとした時、


「矢田さん、渡辺さん」


 何か聞きたくない声が後ろから聞こえて来た。皆で振り返ると


「あっ、五反田君達じゃない。どうしたのこんな所で?」

「俺達もドズニーランドに来ていて、皆でお昼食べ終わって出た所で矢田さん達を見かけたから声掛けたんだ。一緒に遊ばないか?」


「ふーん。私はいいけど」


 矢田さんの友達二人は良いって顔している。来生さんと十和田さんはいい顔をしていない。私も嫌だ。


「渡辺さん、来生さん、十和田さん。どうする?」

「私は…」


「五反田君、渡辺さんに君嫌われているから、近づいたり話しちゃ駄目よ」

「えーっ!そ、そんなぁ」


「これだったら、良いかな渡辺さん」

 そこまで言われてしまうと


「来生さん、十和田さんは良いわよね」

「う、うん」

「うん」


「じゃあ、決まりね」

 私、良いって言っていないのに。



 渡辺さんを私のグループに入れる為に五反田を利用しようとしたが、こいつは馬鹿過ぎて価値がない。

 

 だから別の方法を考えた。五反田を対極にして、他の男子を近付けさせ、そいつが上手く渡辺さんの心を溶かしてくれれば、私のグループに誘う事も出来る。


 五反田はその後、あいつの興味を満足させればいい。しかし上手くやってくれるかな。出来なければあいつの隠し事をばらすだけ。




 そんな訳で、男子六人と一緒に動く事になった。でも全部で十二人もいると午前中の楽しさが全然消えてしまった。


 アトラクションへの移動もばらばら。そんな時、私に声を掛けて来た男子がいた。

「渡辺さん、俺、三谷幸三(みたにこうぞう)って言います。まだ話した事もなかったので嬉しいです」

「三谷さんは、なんで今日ここに?」


「夏休みに入る前に今日ここに行かないかと言われたんですよね。特に用事もなかったし、男六人じゃ、面白くもないけど付き合いで来て見たらこうなった。ラッキーかな。一度話して見たかったんです」

「そうですか」


 面白くないけど五反田よりましか。適当に話をしていると次のアトラクションに着いた。五反田の様にベタな感じがしないだけいい。


 二十分待ちで船に乗った。私達だけで結構占めている。でもキャストが楽しい説明をしていて三谷君と一緒に笑ってばかりいた。


そんなに悪い感じの人じゃない。決してくっ付いて来る事も無く適当に距離を取っている。良かった。五反田と比較してしまうからそうかもしれないけど、これならまだいい。



 最後のアトラクションで終わりだ。女子ばかりだから花火は見ない事になっている。皆でアトラクションが通るのを待っていると都合悪く、行きたくなった。


「三谷君、ちょっと席外すね」

「あっ、俺も」


 終わらせて外に出ると三谷君が待っていてくれた。そして


「渡辺さんって、1Aの柏木と付き合っているんだよね」

「うん」

「そっかぁ、やっぱりなぁ。これ見て」


 三谷君が差し出したスマホの画像には悠斗と渋山のラブホ街を歩いて、矢田さんが入って行ったラブホの前で話している私達が映っていた。


「こ、これって」

「うん、偶々、仲間と歩いていたら渡辺さんと柏木が居たから、悪趣味だけど撮影しちゃった。別に誰にも言わないから安心して」

「うん、ありがとう。その時は怖い物見たさで二人で歩いていたの」

「そうか、そうなんだぁ。でもこの画像見た人、渡辺さんのそんな言葉信じるかな?」

「えっ?!」


「ねえ、一度でいいから話をする時間くれないかな。ほんと一度でいいんだ。そしたらこの画像その場で消すから。あっ、この事柏木には言っちゃ駄目だよ。言ったら、ばらしちゃうからね。それに会う所もファミレスとかでいい。それなら安心でしょ」


 断り切れなかった。こいつの言う通りだ。こんなものSNSにアップされたら、悠斗と私が付き合っていたとしても、私達はまだ高校一年生。不順異性交遊で退学は間違いない。


 そんな話をしながら元の場所に戻ったけど、せっかくの最後のアトランクションは、言われた事で頭が一杯で、記憶になかった。


 それが終わり、男子達と別れた私達は電車で帰った。一緒なのは東京駅までだけど、みんなが私の顔を見て心配していた。矢田さんもだ。彼女は本当に何も知らないんだろうか?


 おかしい。あいつは最後のアトラクションの前までは上手くやってくれていたはず。

 それなのに帰ろうとした時の渡辺さんの表情は今までの楽しかった表情が消えている。あいつ余分な事していないだろうな。


―――――

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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