第14話 楽しいプールにもやはり定番が
今日は八月三日。悠斗とプールに行く日だ。遊園地に付属しているプールだけど、この辺でレクを兼ねるプールはここしかない。
家の最寄り駅から一時間近く掛かるけどそれはそれで悠斗と居れば楽しい。午前八時半に駅の改札で待合せて電車に乗る。
学生も社会人も夏休みのシーズンに入っているのか、とても電車は空いていた。でも途中から段々混んで来て。
「やっぱり夏休みだな」
「オンシーズンだからね」
目的の駅に着くと同じ車両に乗っている人のほとんどが降りた。
「やっぱり皆ここが目的かぁ」
「オンシーズンだからな」
「早くチケット売り場に並ぼう」
「そうだな」
チケット売り場は遊園地とプールの両方のチケットを売っているから窓口が、三つ有っても結構並んだ。
プール券だけ買うと
「次は両方だね」
「そうだな」
次というのは八月十八日の事だ。ちょっと先だけと楽しみ。
俺達は、ゲートで一度チケット見せてから右に曲がりもう一度チケット見せて中に入る。入ると左側に男女別の更衣室がある。
「ここで待ち合わせな」
「うん」
俺は更衣室に入るとTシャツとデニムを脱いでサポータと海水パンツを履く。貴重品を防止水バッグに入れて、更衣室をでる。十分も掛からない。
待合せ場所で待っていると、他のお客さんも同じように待っている。ほとんどが男性だ。まあ、そうだよな。
俺が出てから十五分位すると優子が出て来た。俺の顔を見るとニコッとしたのは良いが、男達の視線が優子に注がれているのが分かる。
肩まである艶やかな髪の毛が、水泳キャップでまとめられているけど、その分、顔の輪郭がはっきりと出ている。切れ長の綺麗な目、すっとした鼻、プリンとした可愛い唇。
それに中学三年生の頃から見ても十分に育ったお胸さん。ショップでは、十分に隠してくれると思った水着けど、半分位しか隠れていない。
括れた腰に大きすぎないお尻がオレンジの水着とパレオで隠されている。手にはラッシュガードと防水バッグだ。
優子が近寄って来て
「悠斗、どうかな」
目の迄クルリと回る優子に
「とっても似合っているからラッシュガード着ようか」
「えっ、だって悠斗にもっと見て欲しかったのに」
「これからもっと見れるから」
「ふふふっ、分かった」
全く。周りの男共の注目の的になっている。
取敢えず流れるプールの傍の空きスペースを探すと…無い。
「悠斗、あそこは?」
「ちょっと遠くないか。そこが空いているよ」
「監視台の下じゃない」
「でも安全だよ」
「悠斗は強いでしょ。あっちに行こう」
「仕方ない。行くか」
俺達は、監視台から遠い端っこに行くと持って来たシートを引いた。簡単に準備運動をした後、優子がラッシュガードを脱いで、お財布を俺の防水バッグの方に入れるとプールに入った。
売店で借りて来た浮輪に優子を乗せて
ぷかーっ、ぷかーっ。天気は良いのだけど…。
水の流れに乗っているだけだ。泳ぐほどの広さも深さもない。まあ、安全で良いんだけど。
「悠斗、あれしない」
優子が指差したのはウォータースライダー。高いのと低いのと二つある。高いのは三回転している。優子大丈夫かな?
「いいけど。大丈夫か」
「問題ないよ」
浮輪をシートに置いてプールの縁を歩くと、優子への視線が凄い。先に歩かせているけど、後ろから見ても魅力的なスタイルだ。まあ、俺の優子だからね。
高い方の待ち行列に並んだ。十五分位して順番が来た。最初に俺が座ると係のお兄さんが、
「彼女さんは、彼氏さんのお腹に腕を回してしっかりと手を結んで下さいね」
「こうですか」
優子が思い切り絞めてくる。胸の圧が凄い。
「はい、大丈夫です。ではスタートです」
始めはゆっくりだけど、パイプを潜りながら右に曲がり左に曲がり、それを三回繰り返した時に、相当のスピードが出ていた。そして
ザッブーン。
「きゃあ、面白かった。もう一度やろう」
「あ、ああ」
いくら優子の体を知っているとはいえ、結構なインパクトだ。滑る度に優子の胸が俺の背中に擦れてくる。
三回滑った所で
「優子、もう勘弁してくれ」
「えーっ、だらしないなぁ」
俺の大事な所がサポータを破りそうだ。
「あっ、お昼過ぎている」
プールの中にある時計台を見ると午前十二時を過ぎていた。
「お昼にするか」
「うん」
二人で売店に行って、フランクフルト、焼きそば、アメリカンドッグとジュースを買ってシートに戻った。日差しが強い。でものんびりとしていい。
二人で話をしながら昼を終えて休んでいると
「お姉ちゃん、可愛いねぇ。俺達と遊ばない」
声の方を向くと、まぁそれなりの定番のお兄ちゃんが二人いた。茶髪にピアス。カラフルな海水パンツだ。
「あんた達、見て分からないの。二人でいるんだから邪魔しないでしょ」
「そんな奴より俺達の方が楽しいって。ほら行こう」
一人が優子の肩を掴もうとしたので、叩くと
「痛てーな。なにしやがんだよ」
そう言って俺の顔を殴ろうとしてきた。簡単に避けると
「お兄さん達、相手するのもいいけど、後ろ見たら」
「なに!」
監視員のお兄さんと警備員が後ろから迫って来ていた。
「ちっ、行こうぜ」
「ああ」
監視員は、俺に目配せして大丈夫かと聞いていたので、俺が頷くとそのまま監視台に戻って行った。
「ワンパターンってあるんだね」
「まあ、優子が魅力的な証拠だろ」
「ふふっ、悠斗嬉しい事言ってくれるね」
「彼氏だからな」
そんなじゃれ合いをしながら他の種類のプールにも行って午後三時まで遊んだ。
「そろそろ帰るか」
「うん」
更衣室で簡単にシャワーを浴びてタオルで体を拭いて着替えて更衣室の前で待っているとそれから十五分位して優子が出て来た。
「お待たせ、帰ろう」
「うん」
遊園地のゲートを出て駅に行こうとしたところで、運悪く、プールでナンパをして来たチャラお兄さん二人と会ってしまった。
「おい、さっきは酷い事してくれたよな」
「……………」
ウザい。早くどっかへ行ってくれ。
「黙ってんじゃねーよ」
いきなり俺のTシャツを掴もうとしたのでその腕を返して相手の背中に押し付けると
「お兄さん達、止めなよ。俺達はもう帰りたいんだ」
「ふざけるな」
もう一人の方も俺に殴りかかって来た。抑えていた男を突き飛ばすと殴って来た拳を避けてそのまま脇腹に右ひじを思い切り叩きこんだ。
グェ!
後は、左回し蹴りで腰を蹴りぬくとそのまま前に頭ごと地面に突っ込んだ。
「だから止めろと言ったのに。おいまだやるか」
悔しそうな顔をして二人が知らない方向に逃げて行った。
誰かが教えたのだろう。今になって警備員が駆け付けて来た。
「大丈夫か君達」
「問題ないです。俺達もう帰りたいので」
突っ込まれる前に優子の手を引いて駅の方へ向かった。
電車に乗りながら、優子が
「夏になると何であんな奴らが出てくるのかな?」
「ムジナと同じだからだろ。暖かくなれば出てくる」
「なにそれ、面白い。ところで七日から悠斗の家族とうちの家族で海水浴だね」
「ああ、楽しみだ」
「でもその後、お互いお母さん達の実家に帰省だし。少し会えないよね」
「十三日から十六日までだから。それに毎年じゃないか」
「それはそうだけど」
その日は、降りる駅の改札で別れた。
―――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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