第12話 夏休みの予定


 翌日は木曜日、矢田さんに夏休みの予定を言う日だ。私は教室に入ると矢田さんが来生さんと話をしていた。


「おはよ、来生さん、矢田さん」

「おはよ、渡辺さん。今、来生さんから予定聞いていた所。私がメモするから口頭でいいから予定教えて。何するまでは言わなくていいからね」

 聞き方が、全く真っ当だ。


「えーと、七月二十一日から三十一日までと、八月三日、七日から九日、十三日から十六日と十八日」

「凄いなぁ、羨ましいわ。分かった。他の子とも調整するから帰り迄には行く日とメンバ教えるね」

「あの、一応予定なので、予定ずれたらごめん」

「そんなの分かっている。皆も同じだから」

 それだけ言うと自分の席に戻って行った。何人かの子と話をしている。


「渡辺さん、さっきの予定って、全部柏木君と?」

「ふふっ、ちょっとだけ違うけど、ほとんど一緒。あの日付はイベントが決まっている日。それ以外でも彼と一緒だよ」

「その話、聞かなかった事にする。もう熱中症気味」

「あははっ、ごめん、ごめん」



 午前中の授業が全て終わった所で矢田さんが私達の所に来た。

「渡辺さん、来生さん。行く日は八月二十二日。行く場所は、ドズニーランドにしようって事になった。どうかな?」

「私はその日は大丈夫」

「私も」

「良かった。細かい事打合せする時間無いから行く人達とのグルチャ作るからスマホの連絡先教えて」

 仕方ないか。


 来生さんと一緒にスマホの連絡先を教えてから悠斗の所に行った。大分他の人は帰っている。

「遅かったな」

「うん、矢田さんに行く日とか教えて貰って」

「そうか。帰りながら話すか」

「うん」



 昇降口で二人で履き替えてから校舎を出た。校門を出ると直ぐに優子が手を繋いで来た。

「行く日は八月二十二日、行先はドズニーランド。細かい事は後で連絡するからってスマホの連絡先聞かれちゃった」

「なんか、話の流れが計画的すぎるな。この前から思っていたんだけど」

「うーん、でもあそこでスマホの連絡先教えないとは言えないし」

「何か気に入らないな。二十二日か、被せる予定が無いな」



 この日は、優子と一緒に俺の家で一緒にコンビニ弁当を食べて、俺の部屋のエアコンを一杯かけて、気持ちいい事をした。梨花は中学だから午前授業の仕組みはない。でも二時間位しか差がないけど。



 午後三時には、洋服を着てリビングで本を読んだりしていると優子のスマホが鳴った。

「あっ、ドズニーグルチャのお誘いだ」

「何それ?」

「矢田さんが言っていた二十二日に出かける人達の連絡グルチャ。これで細かい事教えてくれるんだって。取敢えず参加にする」

「誰が入っているか分かるか」

「ちょっと待って。えーと、矢田さんといつも一緒の二人、それと十和田さんと来生さんと私」

「ふーん、六人かぁ。夏休みに女子がグループで行くには上手い数だな。それに優子が知っている人が来生さん、十和田さん、それに矢田さんもか。後は矢田さんの友達で優子の知らない人二人。なんかあの人マジで行きたいだけなのかな?」

「私もそう思う」

「今回の件は深く考えすぎたかな。前が前だったからな」

「そうね」

 


 翌日の金曜日は矢田さんも五反田も話しかけて来なかった。やっぱり気にし過ぎか。次の三連休は、いつもの様に二人で過ごした。最近、エアコンフルにしないと汗だらけになる熱い。


 そして終業式。体育館に集まって校長先生の話を聞いて、生徒指導の先生から夏休みの過ごし方とか説明されて、教室に戻った。


「大吾、夏休みは部活か?」

「ああ、バスケは大好きだからな。それと家の手伝いだ」

「頭下がるぜ」

「小さい頃からやっていれば、それが普通だと思う様になるよ」

「流石だな。じゃあ、夏休み明けにな。登校日は有るけどさ」

「ああ、じゃあ先にな。部活有るから」

「おう」

「悠斗、お待たせ」

「あっ、渡辺さんだ。柏木、渡辺さん、また夏休み明けに」

「おう」

「うん」


 バシッ!


「痛い!」

「まただ。全く」

「いいじゃないか。挨拶位」

「私にもしなさいよ」

 周りが笑っている。仲が良いんだなこの二人。そういえば内山っていい奴だな。



 俺達は、昇降口に行って、上履きを靴袋に入れてから校舎を出た。校門を出ると直ぐに優子が手を繋いで来た。



 あーぁ、友達だけでも良かったんだけどなぁ。矢田が当分近寄るなって言うから仕方ないか。

「また、渡辺さん見ているの?」

「だって、可愛いし、話位したいだろう」

「あんた、女子だったら誰も良いんじゃないの?」

「そんなことない。俺にも選ぶ権利はある」

「あっそ、勝手に言ってたら。じゃあねぇ。あっ、約束忘れないでね」

「分かっているよ」

 何なんだ矢田の奴、俺に命令ばかりして。




 そんな話をされているとは知らずに


「悠斗、夏休みだね。宿題どっちの部屋にする」

「優子の部屋。広いから」

「でも妹の陽子いるし」

「うちも梨花がいる」

「あの二人、俺達と同じ太子堂中学だろう。知合いじゃないのかな?」

「陽子から梨花ちゃんの事聞いた事ない」

「俺もだ」


「じゃあ、あの二人を一緒に宿題させたら。私達がうちなら、陽子は悠斗の家って事で」

「無理有り過ぎるけど、聞いてみるか」

「うん、今日はどうするの?」

「いつもと同じ。あの子達も帰り早いから、あれは無しで俺んち来るか?」

「もちろん」



 駅のコンビニでお弁当を買って俺んちに帰ると誰も居なかった。

「あれ、梨花は帰っていると思ったのに」

「いいじゃない。終業式の日だから遅いんじゃないか」

「そうかもな」


 優子とお昼を食べていると

「ただいま」

「お邪魔しまーす」

「「あれ?」」


「あの声は陽子」


「お姉ちゃんやっぱりいたんだ」

「あれ、梨花ちゃん、妹の陽子知っているの?」

「当たり前じゃない。同中なんだから。お姉ちゃん達も同じでしょ」

「じゃあ、相談があるんだけど」

「駄目、夏休みの宿題、自分達と被らない所で二人でやれって言うんでしょう」

「どうしてそれを?」

「お姉ちゃんの頭の中なんてお見通しよ。勉強以外は悠斗さんの事ばかりのお花畑なんだから」

「「……………」」

 二人で何も言えなかった。


 こうして翌日から夏休みがはじまったのだけど…。


―――――

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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