第11話 しつこい奴ら


 私、矢田康子。ここ都立大橋高校に入学して1Bのクラスになった、自己紹介の時、二人の目立った生徒がいた。


 一人は五反田信夫。高身長でイケメン。もう一人は渡辺優子。とても可愛くて、私なんかとは比較にならない。その上スタイルもいい。直ぐにこの二人とは仲くなりたいと思った。


 最初に五反田君に声を掛けたけど、彼は渡辺さんがお気に入りらしい。そして話しかけても全く相手にされないと言って凹んでいた。


 私は、渡辺さんを仲間に入れる事によって、このクラスを仕切るグループの花にしようと考えている。


 だから、五反田君を利用して渡辺さんに近付き、友達になろうとした。彼程のイケメンだったら、渡辺さんは簡単に友達になると思っていたのだけど、どうも1Aの柏木君と付き合っている事が分かった。


 それが理由かもしれないが渡辺さんの五反田君に対する塩対応は凄いものがある。

 私も渡辺さんに頼んで、もっと五反田君にクラスメイトとして仲良くしてくれと言ったけど、それも駄目らしく、とうとう柏木君が中休みに1Bに来るようになった。


 私と同じ中学校から来た女子、それと気の合う女子とで楽しくやっていく為にこのクラスをある程度自分達に都合の良い様に変えたい。


 でも私達だけは絵にならない。だから五反田君とか渡辺さんもグループに入れれば、クラスの他の生徒も一目置く存在になれる。


 五反田君は、入学して様子を見ていたけど、外でも付き合っている彼女がいるらしい。それなりの事もしている様だ。


 それは良いのだが、頭の中がお花畑で、とにかく女子にちょっかいを出す。男バスを退部させられたのも同じ体育館で練習している女バスの子に声を掛けてばかりいた事が理由だそうだ。まあ練習にも行かなかったけどね。


 そして昨日発表された学期末考査成績順位。何と柏木悠斗が一位だ。そして渡辺さんは五位。


 五反田と頭が違い過ぎる。あいつは順位表にも載っていない。これではくっ付け様としても話が合わない。


 渡辺さんに五反田をクラスメイトとして話してくれと言ったけど、話が合わないんじゃないかな。


 こいつを渡辺さんと早々にくっ付ける事は出来ないと分かった。だから、夏休みを利用する事にした。


 作戦変更だ。それまでは五反田君を渡辺さんに近付かせない様に同中の子に相手させる事にした。




 今日から終業式まで午前授業に変わる。昇降口で悠斗と一緒に上履きに履き替えて教室の前で悠斗と別れる。中休みは私が悠斗の所に行く事になっている。


 教室に入ると早速来生さんに挨拶した。

「おはよう、来生さん」

「おはよう、渡辺さん」

「もうすぐ夏休みだね」

「うん、予定立てている?」

「うーん、悠斗と一緒かな」

「羨ましいな」


 そんな話をしていると五反田では無く矢田さんがやって来た。あいつは別の女子と話している。諦めてくれたかな?


「おはよう、来生さん、渡辺さん。ねえ、夏休み予定立てた?」

「「まだ」」

「それなら、女子だけで遊びに行かない。一日だけでも。どうかな。場所は皆で決めれば良いし」

「うーん、まだ決められない」

「私も」

「じゃあ、明後日までに返事して。せっかく同じクラスになったんだし、夏休み楽しもうよ」


 それだけ言うと自分の席に戻って行った。矢田さんの言っている事も分からないではないし、おかしな事も言っていない。悠斗と相談するか。



 一限目が終わった中休み、私は直ぐに悠斗の所に行った。

「悠斗、夏休みの事なんだけど。矢田さんが一日位女の子同士で遊びに行こうって誘って来た。明後日に返事欲しいって」

「何処に行くの?」

「それも皆で決めればいいからって。彼女曰くせっかく同じクラスになったんだから楽しもうよって事らしい」

「うーん、一見まともに聞こえるけど、五反田の件が有るからな。そういえば五反田は?」

「あいつは話しかけて来なかった。他の女子と話をしている。諦めてくれたなら良いんだけど」


 予鈴が鳴った。私は急いでクラスに戻った。午前中の中休みは三回有る。全部悠斗の所に行ったけど途中、五反田も矢田さんも話しかけて来なかった。諦めてくれたのかな?



 学校が終わった、帰り道

「悠斗、どう思う。矢田さんの事。今日一日だけだけど、五反田が何か話しかけてこようとする素振りが全然なかった。あれだけしつこかったのに」


「矢田さんの言っている事はおかしくないんだけど、先週まであんな態度取った人が急にそんな事言って来るのが怪しい。

 何か考えている感じがする。五反田の事は分からない。あいつ気弱そうだし、諦めたんじゃないか」


「そうだと良いんだけど。矢田さんの事、どうする?」

「誰が参加するにもよるよな。優子が誰も知らない人達なら止めれば良いし」

「でも知っている人でも嫌だよ。断る良い理由無いかな」

「夏休みの宿題は今迄と同じで七月中に一緒にやりたいから、日付がそこに被れば駄目だし、俺達が遊ぶ日付とも被れば駄目だから、そこにぶつかるなら断れるかな」

「上手く行くと良いけど」



 翌日、登校して教室に入ると直ぐに矢田さんがやって来た。

「おはよ、渡辺さん、来生さん。夏休み中に遊ぶ件だけど、二人共都合あるでしょ。だから、明日参加教えてくれる前に都合の悪い日教えて。そこを避けて予定組むから」

「あの、誰が行くんですか?」

「まだ決まっていない。誘った人達の都合もあるから。じゃあね」


 なんか、言っている事はその通りなんだけど。

「どうする渡辺さん?」

「どうしようか?本音行きたくないけど、断れない雰囲気はあるよね」

「そうなんだよね。どうしようかな」



 この日も矢田さんはそれきり寄ってこないし五反田は他の女子と話をしている。私は中休みは全部悠斗の所に行った。


 最初の中休みに矢田さんに言われた事を話すと

「上手く言って来るな。避けさせない様にしているみたいだ」


 上野が、

「うちのクラスの子も個別では行くみたいだけどな。それだけに断り辛いか」


 俺の斜め前に座る内山が

「話割って入って御免。それだったら、後で用事が入ったら断られるオプション付けてもらったら」

「いい考えのようだけど、それじゃあ、行く人決まっていないのと同じになっちゃう。挙句に人数調整とか言って、いきなりあいつが来るのも嫌だよ」


「ごめん、参考にならなかった」

「ううん、内山君ありがとう」

「えへへ、渡辺さんにそう言って貰えると嬉しいな」


 ピシッ! 

 何故か内山がその前に座る女子から頭を叩かれた。


「痛っ!何するんだよ?」

「内山君、渡辺さんと話したかっただけなんでしょ」

「いいじゃないか」

「目的が邪(よこしま)」


 何故か斜め前で内山が女子に責められている。あの二人どういう関係なんだろう?


「でも内山の言っている事にも一理ある。もし都合が悪くなったらごめんのオプションは言っておいたた方が良いな。理由はよく考えるけど」

「そうだろう、そうだろう」


 ピシッ! 


 また殴られた。周りが笑っているから仲良いんだな。



 俺達は、放課後も一緒に帰ったけど、優子の話からは五反田の事は何も出なかった。このまま諦めてくれればいいんだけど。


―――――

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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