第8話 体育祭は予定外の事が起きる


 体育祭の日になった。天気は花曇り。丁度良い天気だ。俺と優子は一緒に登校しながら

「悠斗と別のクラスだから面白くない」

「仕方ないよ。それよりお互いクラス対抗リレー楽しもうな」

「うん、負けないよ」

「あははっ、俺達だけでやる訳じゃないから」

「そうだけどさ」


「おはよ、悠斗、渡辺さん」

 後ろから大吾が声を掛けて来た。


「おはよ、大吾」

「おはようございます。中山君」

「悠斗の出場は午後の部だな」

「ああ、クラス対抗リレーが午後一番、それから二百がその後、大変だよ」

「頑張ってくれ。俺は玉入れと綱引きだ」

「大吾だけずるいよ」

「でも中山君の身長だと玉入れが楽だね」

「ほんのちょっとね。ジャンプできればもっと楽なんだけどさ」

「玉入れでダンクしても仕方ないだろう」

「まあな」


 そんな話をするうちに学校に着いた。予鈴が鳴って担任の先生が入って来ると注意事項だけ言って、みんなでクラス毎の集合場所に行った。


 1Aと1Bは隣同士なので、優子の位置は直ぐに分かった。視線が合うと軽く手を振って来る。俺もちょっとだけ手を振って返すと

「仲良いな」

「まあな」



 校長先生の挨拶の後、体育指導の先生が進行全体の注意事項を言ってから準備体操が始まった。


 前の台に立つのはこの高校の生徒会長、月見冴子(つきみさえこ)さんだ。長い髪をポニーテールにしている。美人の上に大きな胸。体操で体が動く度に揺れる揺れる。

 男子は体操の振りして皆何処を見ているのか良く分かる。俺もその一人だけど。高校男子ってそんなものだよね。


 体操が終わるとクラス毎の集合場所に戻った。いよいよ競技が始まる。


 三つ目の競技が終わった所で優子の言っていた二人三脚の競技が始まる。隣に立っているのが来生さんか。優子と身長が同じ位なので組み易そうだ。


 あっ、スタートした。頑張れ優子、来生さん。


 結果は二位だった。でも凄い。


 俺は、午前中は見るだけなので、のんびりだ。あっ、大吾の玉入れだ。上手いものだな。次は借り物競争か。中学の時には無かったな。


 六人ずつスタートして三十メートルあたりにあるカードを拾ってそれを実現する様だ。カードを見た生徒が、先生を連れて行ったり、体育倉庫からコーンを持ってきたり、何と女子が男子に声を掛けて冷やかされたりと面白い。


 五反田とかいう、優子が嫌いな奴の並んでいる。あっ、スタートした。


 五反田はカードを拾うと、えっ?優子の所に行っている。


「渡辺さん、一緒に来て下さい」

「えっ、でも私」

「いいじゃない。行って来なさいよ」

「矢田さん…」

「ほら時間無くなっちゃうわよ」


 優子が仕方なく出ると、五反田が優子の手を握ってゴールに走って行った。気に食わない。


 ゴールすると係の生徒がお題を読む。

「ただいまゴールした1B五反田君のお題は、…友達になりたい人でした」

「「「「「おーっ!」」」」


 優子が直ぐに五反田の手を放して手洗い場所に行っている。理由は分かる。でも五反田が優子の後を追いかけている。


 なんて野郎だ。俺は隣に座る大吾に、ちょっと行って来ると言うと意味が分かったんだろう。

「気を付けろよ」

「ああ」


 急いで水洗い場に行くと五反田が優子に話しかけているが優子は無視だ。俺は直ぐに

「優子」

「あっ、悠斗」


 手を洗い終わると直ぐに俺の所に来た。

「悠斗、手を繋ごう」

「ああ」


 周りの生徒が見ているが無視だ。五反田も唖然としている。大切な優子の手を握りやがって。俺が五反田を睨みつけてから

「優子行こうか」

「うん」


 はぁ、競技だろうに。しかし、柏木の目結構怖かったな。あいつ何かやっているのか?



「悠斗もっと強く握って。あいつの手大きくて気持ち悪かった」

「分かった」

 少し強く握ると


「痛いけど、この位でないとあの気持ち悪いの忘れられない」

「そうか」


 優子も俺も午前中の競技はない。大回りでクラスの集合場所に行くと

「悠斗、後でね」

「うん」


 俺が大吾の傍に座ると

「おうおう、見せつけてくれるな」

「当たり前だ。優子は俺の大切な彼女だ」


―ほえ。聞いた?

―うん、やっぱり噂は本当だったんだ。

―でも柏木君も格好良いし。お似合いじゃない。

―そうだね。


 優子の方を見ると矢田さんとか言う女子から耳打ちされている。何故か顔が赤い。変な事言われていなければいいんだけど。



 お昼休憩になり俺と大吾と優子で集まってお弁当を開いた。

「優子、二人三脚上手かったな」

「うん、お陰で二位になれた。来生さんと一生懸命練習したからね」

「中山君、ほとんどかごに届く様に見えたけど」

「あははっ、そんな事ない」

「でも玉入れ上手かったね」

「まあ、あの位はね。バスケもう四年やってんだから」

「そっか、玉入れは得意か」

「優子、大吾は玉入れじゃなくてバスケが得意なんだよ」

「分かっているわよ。そんな事、言い方だけ」

「おい、俺を使ってイチャイチャするな」

「「してない、してない」」


 楽しく昼食を摂った後、午後の競技が始まる五分前に


―クラス対抗リレーに出場する選手はスタート位置に集まって下さい。


「大吾、行って来る」

「ああ、頑張れよ」

「おう」


 優子もスタート位置に向かった様だ。

 俺は、来賓席側、優子はクラスの集合場所側だ。五反田とか言う奴は優子と同じ側だ。さっきので懲りたのか優子に話しかけない。


 一番目がスタートした。半周百メートルを走る。アンカーだけが二百だ。優子がスタートした。今度は俺の番だ。


 Bクラスが先頭だ、優子が走って来る。そのすぐ後にAクラスがいる。俺も準備して待っていると優子がバトンを渡した後、転んだ。助けてあげたいけど、もう俺もバトンを渡された所だ。


 仕方なく、急いで走って、Bクラスの生徒を抜いてクラス集合場所側で渡すと、コースに優子が居ない。何処だ。


 クラス対抗リレーが終わった後、直ぐに二百メートルがある。一度大吾の所に行って優子の事を聞いてみると救護班が優子を保健室に連れて行ったらしい。そんなに悪いのか。

 

 二百をパスして優子の所に行きたいけど、仕方ない。一年生は一番最初だ。終わったら行こう。


 スタート地点で腰を落として待っていると電子銃が鳴った。こんなレースのんびり走ってられない。

 思い切り飛び出して、一週二百を回ってゴールすると、一位の旗の所座らせられたが、係の人間に股間を押さえて持たないという格好して直ぐにそこを離れた。


 急いで保健室に行って、ドアを開けて

「優子、大丈夫か?」

「あっ、悠斗」


 そこには、保健の先生と矢田さん、それに気に入らない五反田が居た。何でこいつが。


「悠斗、ちょっと膝すりむいて血が出ちゃったから、先生に消毒して貰ったんだ。ほら、こんなんで済んでいる」

「そうか。歩けるのか」

「うん」


「さて、彼氏さんも来た事だし、私達は帰るわよ」

「分かった」

 矢田さんと五反田が保健室を出て行った。保健の先生が

「柏木君、渡辺さんを連れて行って。もう大丈夫だから」

「はい」


 優子が立ち上がると、少し顔を歪めた。

「おんぶするか」

「何言っているのよ。歩けるわよ」

 保険の先生が笑っている。


 二人で保健室を出ると

「やっぱりおんぶして貰おうかな」

「校舎内だけだぞ」

「勿論」


 俺は腰を落として、背中に優子を乗せると立ち上がった。優子が俺の肩に頭を置いて来る。

「久々だね」

「ああ、そうだな」



 俺は保健室から出ると矢田さんを先に返して、トイレに寄った。終わってから廊下に出ると目の前に渡辺さんをおんぶした柏木が居た。


 柏木の両腕が、渡辺さんの太腿辺りに手を回して抱いていた。その光景に何故か無性に腹が立った。何とか渡辺さんをあいつから奪い取りたい気持ちに襲われた。


―――――

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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