第7話 少しの平穏と要らぬきっかけ


 親睦会の翌日は土曜日。俺はいつもの様に午前中は道場に行って、午後から優子と会った。


 最近土曜の午後は大体俺の部屋で過ごしている。日曜日もいつもと同じ、午後十時には優子の部屋に居た。


 日曜日、優子の家族は全員在宅なので部屋の中で俺は本を読んいるし、優子はファッション雑誌を開いているか、本を読んでいる。


「悠斗、来週さぁ。体育祭があるじゃない」

「ああ、そうだな」

 本から目を離さずに答えると


「悠斗は何出るか決めている?」

「分からん。そもそも参加したくない」

「そうだよねぇ」



 そんな話を午前中してお昼一緒に食べた後、午後は街に出かけた。何をするでもなく悠斗と手を繋ぎながらウィンドウショッピングしながら歩いる。その合間にオープンカフェでジュースを飲んだりしながら悠斗と過ごしているとあれっ?


「悠斗見て」

 俺は優子の視線を追いかけると五反田が、綺麗な女の子を連れて回廊坂を上がって行く。


「へぇ、彼女いるんだ」

「そりゃそうだろう。一応イケメンだからな。でも今日、大吾バスケの練習有るって言ってたよな。あいつサボりか」

「いいんじゃない。あいつの勝手だし。あっちの方向ってどこ行くんだろ。暇だし追っかけて見る」

「優子趣味悪。でも行って見るか」



 俺達は、五反田達を遠くに見ながら歩いて行く途中で右に曲がった。高校一年生の俺達には、行った事の無い場所だ。


 少しだけ距離を縮めて行くと何となく感覚で分かる所に入って行った。

「ねえ、この辺りって」

「ああ、もう帰ろうぜ。こんなとこ良くない」

「そうだね」



 私達は、次の日、学校に行くと最後のLHRで担任の先生がプリント配った後、

「来週末に体育祭が有ります。体育祭実行員を男女二人決めて下さい。その後は誰がどの種目に出るかそのプリントの中の競技の内、最低二つは各自参加するように。誰か実行委員やる人いませんか。自薦他薦誰もいいですよ」


 私は、何々委員とか言うのは面倒だから好きじゃない。関係無いという顔をしているとやりたい奴はいるもので、簡単に体育祭実行委員が決まった。その人達が前に出て

「では、各自、出場したい競技を言って下さい」


 どうしようかな。中学の時も適当だったし、楽な競技はどれだろうなんて思っていると来生さんが、

「ねえ、渡辺さん、二人で二人三脚でない?」

「来生さんとだったらいいな。出ようか」


 来生さんが、

「私と渡辺さんで二人三脚出ます」

「分かりました。後一つは?」


「私は、玉入れかな。渡辺さんは?」

「私も玉入れがいい」

「うーん、玉入れは来生さんで一杯。渡辺さん、クラス対抗リレーでない?」

「リレー。苦手」

「でもこれなら直ぐにやれるよ」

「じゃあ、やります」


「じゃあ、俺も」

「おう、五反田も出るか」


 えっ、なんであいつが。



 放課後になり帰ろうとすると

「二人三脚の練習、明日からする?」

「そうだね。来生さんの都合に合わせるよ」

「ありがとう」


「あの、渡辺さん。リレーの練習は?」

「何かする事有るの?」

「バトンの受け渡し」

「いいじゃないそんなの」


「渡辺さんしておいた方が良いよ。私も出るからさ」

「矢田さんもやるなら…」

「じゃあ、こっちは来週からね」

「分かった」


 はぁ、リレーなんか出るんじゃなかった。昇降口でボヤキながら悠斗待っていると矢田さんが


「彼待っているの?」

「えっ?」

「ふふっ、1Aの柏木君でしょ」

「何でそれを?」

「もう有名よ。いいなあ、私も彼氏欲しいわ。じゃあまた明日」


 矢田さんって何かさっぱりして良い感じ。少しすると

「優子待たせた」

「うん、帰ろ」


 駅に向いながら

「悠斗は体育祭の種目決まった?」

「ああ、リレーと二百メートル」

「えっ、悠斗もリレー出るの?」

「優子もか?」

「うん、それで練習が有って、明日から今週一杯は来生さんと二人三脚。来週の三日間はリレーのバトンパスの練習」

「俺は、今週バトンパスの練習だ。帰り一緒出来るかな」

「今週はいいけど、来週は一時間位遅いと思う」

「じゃあ、図書室で待っているよ。練習も見れるし」

「そうしようね」


 

 次の日の放課後から来生さんと二人三脚の練習をした。今週一杯、トラック内は陸上部や他の運動部が使っている為、校庭の端で練習する。他のクラスの子達も同じようだ。


 最初は上手く行かなかったけど、何とか金曜日頃には来生さんとタイミングが合って結構な速さで走る事が出来る様になった。


 別の場所では悠斗がバトンパスの練習をしている。男子だけなら良いんだけど女子も一緒に練習している。ちょっとだけもやもやする。


 だから土日は思い切り悠斗に甘えた。そして体育祭の週から放課後はバトンパスの練習だ。図書室に悠斗が居るから見上げるとガラスの向こうで手を振っている。嬉しい。


「渡辺さん、柏木君とラブラブね」

「あっ、矢田さん。見てた?」

「見てた!」

「もう」

「いいじゃない。仲良いのは。でももっと他の友達も作らないとね」

 どういう意味で言っているんだろう。


 今週からトラックは解放されている為、色々な競技の人が練習している。

「渡辺さん、バトンパスだけど」


 五反田が話しかけて来た。嫌だな。

「そんなに嫌な顔しない。五反田君がしょげてるじゃない」

「矢田さん」

 仕方ないか。

 初めバトンの握り方とか落とさない手渡しの仕方とかを止まったまま練習して、それから五メートル位走ってパスの練習をする。ゆっくりな内はいいけど早くなると上手く行かない。


 躓く事もある。そんな時は五反田が手を伸ばそうとしてくるんだけど、直ぐに自分で立った。悠斗が見てる前で他の男子の手なんか触れない。


 そして練習が終わると着替えて昇降口に行くと悠斗が待っていてくれる。木曜までには何とか素早く出来る様になった。


「明日は、体育祭だね」

「ああ、頑張らないとな」

「悠斗とクラス違うから複雑」

「俺もだ」


 そして体育祭当日になった。


―――――

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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