第2話 俺と優子
テーマパークの前に柏木悠斗と渡辺優子のなれそめを
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俺、柏木悠斗。俺が区立太子中学校二年の頃、同じクラスに渡辺優子というとても可愛い女の子がいた。
とても話が合って、仲良く話をしたり、家が同じ最寄り駅に在るという事で自然と登下校も一緒になった。
優子は、ブラスバンドの小さいバージョン、金管楽器のクラブ金管バンドに入っていて、バスクラリネットを担当していた。
クラブで朝早い時もあり、毎日一緒に登校という訳には行かなかった。下校も遅い時があり、そういう時は、待って一緒に帰る時も有るけど俺が用事で先に帰る事も有った。
夏休みになって、優子が今日は午前中だけの練習だから午後から遊ぼうと約束したのだけど、それなら学校で待っていれば早く会えると思って午前十二時前に金管バンドの練習場である音楽室に行くとほとんどの人が帰っていて、残っている人に
「渡辺さんは?」
「あっ、柏木君。渡辺さんは、一番で出て行ったよ」
「ほんと?!」
俺は直ぐに音楽室を出て、もしかしてと思って教室に行って見た。いない。家に帰る通路は一つしかないから、家に帰るなら俺と会っているはず。
一抹の不安を感じながら、人気のない校舎裏に行ったりしたけどいない。今度は体育館の裏に行って見ると優子が三人の茶髪男に囲まれている。
「渡辺さん、ちょっとだけでいいんだ。俺達と付き合ってくれよ」
「いい思いさせたげるからさ」
もう一人の男は優子の腕を掴んで引き寄せている。
「止めて下さい」
「いいじゃないか。可愛い顔して良い体しているんだから。悪い様にはしないからさ」
どう見てもいい状況出ない。俺は直ぐに
「止めろ。優子を放せ」
直ぐ側に行ったけど、優子を掴んでいない男二人が俺の前に立ちふさがった。
「何だお前は?」
「今からいい事しようとしているんだ。邪魔するな」
「優子が嫌だって言っているだろう」
「うるせぇ」
いきなり俺の顔めがけて殴り掛かって来た。俺はそれを簡単に避けると、殴りかかって来た腕を掴まえて足払いをして、相手が崩れ落ちるままに、顔面に拳をヒットさせた。
これで動けない。
次の奴も足で俺を蹴ろうとしてきたけど、ハエが停まるんじゃないかというスピードだ。その足蹴りを身を引いて避けると相手の軸足に思い切り蹴りを入れて体が地面に落ちる前に顔面に蹴りを入れた。これで動けない。
「お前もやるか?」
「い、いえ」
一人で逃げようとしたので、鳩尾に正拳を入れてやった。これで動けない。
「優子、大丈夫だったか」
「悠斗ー。怖かったよぅ」
優子が震えながら俺にしがみついて来た。俺動けない。
「お前たち大丈夫か?」
騒ぎを聞きつけたのだろう。夏休みの練習に来ていたのか空手と柔道の顧問、それに何人かの生徒が走り寄って来た。
「大丈夫です。でもこいつら?」
「それより、柏木、これ一人で倒したのか?」
「相手が弱すぎただけです」
「そ、そうか。やられたのは渡辺か?」
「はい、腕を掴まれて脅されて」
「先生、こいつら?」
「ああ、問題起こして退学になった連中だ。どうしてここにいたのか。どちらにしろ、警察に引き渡す。渡辺、柏木。警察が来るまで待てるか」
俺は優子の顔を見て大丈夫そうだったので
「はい、待ちます」
それから十五分位して警察が来て、優子と俺から事情を聞いた。
優子の話だと、音楽室を出て校舎から校門に向おうとしたところで、こいつらに呼び止められて、体育館裏に引っ張られて来たそうだ。怖くて声が出ないままに連れて来られと言っている。
俺が来なかったらと思うと、背筋が凍る思いだ。警察から一時間位事情を聞かれて、後でまた連絡するかもしれないと言われたのでスマホの連絡先を教えたけど、連絡は来なかった。
警察が三人を連れて行った後、職員室に居た俺達は、
「先生、もう、帰っていいですか。腹減ってしまって」
「柏木、あんな目に遭って、腹減ったか。お前凄い奴だな。空手部に来ないか?」
「柔道部の兼部もいいぞ」
「あははっ、遠慮しておきます。俺みたいに弱い奴が入っても迷惑するだけですから」
「面白いな柏木。気に入ったぞ」
「ああ、そうだな」
空手部と柔道部の顧問に気に入られてもなぁ。
まだ怖い思いが残っているのか、
「悠斗、家まで送って」
「勿論だ」
それから、優子の家まで送って行ったけど、歩いている時も電車に乗っている時も優子は俺にしがみついて離れない。
優子の家に着いたけど、
「悠斗帰らないで」
娘の異常を感じた彼女のお母さんが
「優子、どうしたの?」
彼女が、ゆっくりと思い出すのも嫌だと言う感じで話すと
「悠斗君、娘を守ってくれてありがとう。本当にありがとう。あなたがいなかったら娘がどんな目に遭っていたかと思うと…。とにかく上がって」
ぐ~っ。
「あっ!まだお昼食べて無いんだ」
「えっ、もう午後二時半よ。直ぐに作るわ。ちょっと待っていて」
「いえ、俺もうかえ…」
優子のお母さんがキッチンに行ってしまった。
「悠斗、傍に居て」
困ったな。そう言えばお母さん、連絡入れて無いから心配している。
「優子、ちょっと放して。お母さんに連絡する」
「いや」
仕方なしに、掴まれている右腕をそのままに左手でポケットからスマホを取出してお母さんに連絡。簡単に事情を話して夕方には帰ると言っておいた。
少しして、優子のお母さんがチャーハンを作ってリビングに持って来てくれた。
「急いで作ったから、味がちょっと心配だけど」
どう見ても三人前はある。大皿に山盛りだ。
「優子も食べなさい」
「うん」
優子のお母さんが作ってくれたチャーハンはとても美味しかった。優子は食べ終わると俺にまたしがみついて来た。
「優子、明日また来るから今日は…」
「駄目」
優子のお母さんが仕方ないわねぇって感じの顔をしている。でも帰らないと。
なんとか、午後六時に解放されたけど、家に戻ると
「ただいま」
「お帰り、悠斗。優子ちゃんのお母さんから電話が有って、明日、優子ちゃんのご両親が本人と一緒にお礼に来るそうよ」
「えーっ、そんなことしなくてもいいのに」
「そうはいかないでしょう。大切な娘を守ってくれたヒーローなんだから」
次の日は優子と遊ぶ予定が、半日俺の家で優子の両親からお礼の言われっぱなしで恥ずかしくて仕方無かった。
俺のお父さんは、小さい頃から俺に武道をやらせておいて良かったとしきりに言っていたけど、俺まだそんなに強いとは思っていない。
それからというもの、優子は金管バンドの練習には行くけど、俺が行き帰りずっと一緒。
金管バンドの顧問の先生も事情を聞いたのか。笑いながら頑張りなさいなんて言われてしまった。
金管バンドはほとんどが女子。だから俺は、音楽室の外で本を読んで待っているのだけど、クラブが終わって俺達が一緒に帰るとキャアキャア言われた。全く。
その話は二学期になって尾ひれに胸鰭にしっぽ迄ついてしまい、結局、もう俺と優子は無条件にカップル認定されてしまった。
それから二年のクリスマスイブの時、俺の部屋で一緒に過ごしてた時に目が合って自然と唇を合わせて……。
「悠斗、私を大切にして」
「うん」
そう言われて、俺は…。まあそういう事になってしまったのです。
あっ、大吾の事言い忘れた。あいつは、同じクラスでバスケやっていて、なんか気が合うからいつも一緒に遊んでいたら、お互いに名前呼びして、三年の夏は一緒にプールに行ったり、遊園地に行ったりして遊ぶ仲になった。
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次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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