第2話 馴染みたい!或る作戦に

持ち場である工事現場入口に立って、工事車両の誘導や歩行者への注意喚起をしていた。


一時間程して昼時になる。コンビニにでも行くのだろう、職工さんたちは次々と俺の立っている出入り口を出ていく。


その中で、ヘルメットを脇にかかえた七分刈りの中年男が「お疲れさん」と言いつつ、俺の前で立ち止まる。統一的な作業服を着ているので、おそらく職工ではなくて職員だ。俺が返事をすると、中年男は続ける「でかい声でしゃべったり、道いっぱいに広がって歩いたりするような、態度のよくない職工がいたら、所長に伝えてくれ」と。


俺は、この中年男と『所長のハゲネタ』で仲良くなれるかもしれないと思って、「ハゲの所長さんっすね」と愛想良く言った。笑ってくれるかと思ったが、中年男の表情は曇って一瞬黙る。そのまま、「ああ。ハゲの所長よ」と低い声で言って、出入口を出て行った。

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