第3話 やっちまった!努力裏目

その後の休憩時間。俺は、休憩室へ向かって歩いていた。


クレーン車の停車する広場を横切って、隣接する狭い通路の入口へ。丁度、通路からは先程の七分刈り中年男がゆっくりと出て来た。俺は入口で立ち止まって中年男を通した。挨拶すると「おっす」と返してきた。男の後に何人もの人が続いていたので、しばらく立って待っていた。何となく中年男を目で追う。中年男はクレーン車の横に立つ。クレーン車運転席から、職工が降りて中年男に話す、「所長、先程報告をしたように…(以下よく聞こえない)」。


さっと血の気が引いた。七分刈りの中年男は所長なのか?地に足が付かないまま休憩室へと歩いた。休憩室では、警備リーダーがテーブル席に着いて、たばこをふかしていた。俺は、平静を装いつつ向かい席に腰を下ろして尋ねた、「お疲れ様です。作業服を来た七分刈りの中年の人がいるじゃないですか?あの人って所長ですか?」と。


警備リーダーは、煙を吐き出しつつ「そうだよ」と言う。俺は、湧き上がる焦りを抑えつつ、何かの間違いであることを望みつつ尋ねた、「でも、ハゲてないですよね?あの人」と。警備リーダーは、心乱れる俺に気づきもせず平然と言った、「あれは、カツラだよ。CMでもやっているだろ?何とかナチュラルだかなんだか頭にペタって貼るやつ。ヘルメットでも安心らしいね」と。

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