或る警備員の重大ミス【怖い話・短編】

柿倉あずま

第1話 序

その日、俺(警備員・24歳・本業は大学生)は、或る建設現場にヘルプで入った。緊急のことだったので朝礼には出ていないし、初めて入った現場なので、不慣れなことも多かった。


それでも、与えられた仕事をこなしていると、要領を掴んでいった。今は、休憩時間。休憩室に居合わせたで職工さんたちと談笑をしている。


たばこをふかしながら、天気がどうのとか、どこのラーメンが不味かっただの他愛ない話しを投げかけてくる職工二人に、俺は笑いながら相槌を打っていた。ただ、何となく仕事の及ぶと、他愛ない愚痴が本気の文句となって職工二人そうだそうだと言うようなことばの掛け合いとなって行った。


「言ってたねあのハゲ、今日も何日分遅れているよなんて」

「本気で作業工程の予定に追いつけると思ってのかな?」

「知ってる?さらに作業時間を削られるかもって」

「マジか?さすがに無理」

「○○さんなんて苦情を言ってたよ、ハゲに。予定に追いつくのは現実的じゃないって」

「ついに言ったんだ」

「言うなら副所長に言えばいいのに。一応聞いてはくれるでしょ?」

「まあ誰に言っても期待できないよね。」


二人の会話は現場の様子の一端らしいが、はじめて入った俺には内容を理解できるようなできないようなといった感じだ。そんな俺の様子を察して、職工さんは解説を加えてくれた。


「ハゲってのは所長ね」

「予定からの遅れを取り戻せってうるさいんだよね。17時になったらわかるけどね、近隣住民からの要望で作業は完全終了しないといけないんだ。騒音事情でね」

「工事がはじまってから近隣住民からクレームが来て、そうなったんだけど、作業工程予定は18時以降も作業ができることを前提に作っているんで、日に日に遅れが大きくなってんだよね」

「ハゲもあきらめろよ」


俺は頷いたり返事をいたり、所長って嫌われてんだなと思いながら聞いていたが、休憩終了時間となったので、挨拶をして部屋を出ていった。

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