森の実験お菓子屋さん
くーくー
第1話
大きな森の小さな池の隣にある木のお家、玄関には【はてな実験菓子工房】という看板が掛かっています。
ここは森のお菓子屋さん、そしてリリちゃんのお家でもあります。
「パパーおやつちょうだい」
あっ、リリちゃんが学校から帰ってきました。
元気にドアをパーンと開けてランドセルをどーんっとテーブルに放ります。
あれっ、風で紙がひらひらと落ちたよ。
リリちゃんは気付いてないみたい。
テーブルの上にはラップのかかったお皿の上にキラキラした青い玉が三個あります。
「あれー、今日のおやつはハチミツパンケーキにしてねって言ったのに、パパ忘れちゃったのかな。」
リリちゃんはお口を尖らせて、お皿のラップをぴりりと剥がしました。
「これ、飴かなガムかな、まいいや。」
お口にポーンと放り入れて森へ駆け出して行きました。
リリちゃんが出て行った工房の床にはさっき落ちた紙があります。
何か書いてあるみたい。
『じっけんちゅう、たべちゃダメ!!』
リリちゃんは森を駆け回りながら、お口の中の青い玉を舐めたり噛んだりしています。
「うーん、やっぱこれガムだね、パパの風船ガムってよくふくらむからだーいすき。」
くちゃくちゃくちゃぷくぅっー
いつものように膨らませようとしてガムに空気をぷくぅっーと吹き込もうとします。
だけど…あれれ…ぷくぷくぷくーって膨らんだのは…
ガムじゃなくてリリちゃんです。
ぷかぷかふわん、ふわふわん
リリちゃんの体が浮いていきます。
「うわーたのしい!これって新しい実験お菓子だったんだ!」
リリちゃんのパパのはてなさんは実験お菓子をたくさん発明しているのです。
なかでも色とりどりのカメレオンキャンディはリリちゃんの大好物です。
この青い風船ガムも新しい好物になるかもしれません。
ふわんふわんぽよんよん
リリちゃんはお空の上を優雅に歩いて楽しみます。
「こんにちは、渡り鳥さん」
「Здравствуйте」
外国から来た白い鳥さんとも元気に挨拶をかわします。
けれど…あれれ、お空からポツポツ雫が垂れてきて、どんどん暗くなってきました。
「どうしよう、もうお家に帰りたい…」
リリちゃんはふーぷぷーと息を吐いて地面に下りようとしましたが体から空気が全然出ていきません…
「えーん、えーん」
リリちゃんがお顔をぐしゃぐしゃにして泣いていると…
「どうしたのリリちゃん?」
いつも森で一緒に遊んでいるオオルリさんが声を掛けてきました。
「リリ、ふくれちゃって地面に降りれないの、お家に帰りたいよぉ…」
「泣かないでリリちゃん!」
オオルリさんはリリちゃんの膨れたおなかにとまって嘴でおへそをツンツン突きました。
「うふふぅ、ヤダヤダ、くすぐったい」
笑っているうちにおへそからプシューっと空気が抜け、リリちゃんとオオルリさんはノッポの木の上に着地しました。
するするする~木から滑り降りてお空を見上げるとすっかり雨は上がって、きれいな虹がかかっていました。
「ただいま~」
お家に帰ってきたリリちゃんとオオルリさんにパパは野イチゴを山盛りに乗せたほかほかのパンケーキを出してくれました。
「たーんとお食べ」
「おいしいね、リリちゃん」
「ほんとだね、オオルリさん」
森のお菓子屋さんには三つのおいしいにこにこ笑顔が並んでいます。
森の実験お菓子屋さん くーくー @mimimi0120
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