1日目 後編-呼び名争奪戦!!!-

 前回のあらすじ

 -ファミレスの席に着いた三人であった-


「よし!なに頼む?」

「とりあえずドリンクバー2つだな」

「海、お前もドリンクバー側の人間なのか!?」

「ゴメンな、山人。炭酸と甘味料の誘惑には誰も勝てないんだ」

「見失ったぜ」

「せめて見損なってくれ。そしてそのボケはすでに使い倒されてる」

「すまん」

「素直ー!ドリンクバー頼まない分いっぱい食べなね」


 メニュー表にかじりついていた花男は、頼むメニュが決まった様子で注文用のパッドを手に取った。


「お前らなに頼む?」

「俺ドリアとカルボナーラ」

「ぼくはマルゲリータとチキン」

「おけー!よし、頼んだ!」

「「あざす」」

「みんなでドリンクバー行こうぜ」


 三人そろってドリンクバーに向かう。ぼくが白ブドウのジュースを注いでいる間に、山人は縁ギリギリまで水を注いでいる。そして、花男はカルピスと野菜ジュースを1:1で混ぜている。うまいのかそれ。


「山人、うらやましいか?」

「何が?全然うらやましくないけど」

「一口あげようか?」

「いらない、こういうときにもらったら負けなんだよ」


 席に戻ると、話題は三人の呼び名になった。


「やっぱりさ、俺らだけの呼び方があった方がよくね?」

「たしかに、なんか憧れるよねそういうの」

「呼び名が短くなるのは悪くないかもな」

「今までどんなあだ名ついたことある?」

「ぼくは、小学校の時からずっと『かい』って呼ばれてたなぁ」

「まぁ、呼びやすいもんな。二文字の名前」

「一人だけ、『オーシャンズみずの』って呼んでくるやつもいたな」

「「おーしゃんずみずの!?」」

「うん、なんか、テレビにそんな芸名の人がでてたらしい」

「さすがに長すぎて採用できんな」

「希望の呼び名はあるの?」

「まあ『カイ』がいいかな。呼ばれなれてるし」

「ひらがな?カタカナ?どっち?」

「それ呼び分けられんのか?」

「できるよ、ひらがなは『かい』。カタカナは『カイ』」

「おなじじゃねーか!」

「どっちがいいんだ?」

「じゃあ、カタカナで」

「よし、決まりな!これ、マネーの虎みたいで楽しいな」

「どういうこと?あー、なるほどね」

「自問自答すんなよ怖いから」


 途中で注文した食事の到着をはさみ、自分の希望するあだ名を獲得するための『なめぇー(なまえ)の虎』が始まった。


「はい!では次は山人さん。あなたが思い描く自分の呼び名は!?」

「はい、私が思い描く呼び名は『ヤマ』です」

「なるほど、カタカナ二文字ですね」

「なんでわかったんだ」

「その通りです」

「では、ジャッジに参りましょう!カイ社長!」

「え?ああ、『ヤマ』ね。いいと思う」

「さーカイ社長からはYESがでた!そして、この花男からはどうだ!?」

 …

 …

 …

「溜めが長いな」

 …

 …

 …

「YESだーー!!!おめでとう!完全ALL達成です!」

「めちゃくちゃヌルゲーだねぇこれ」

「ヤマさん!完全ALL達成ですがいかがですか?」

「はい、グスッ、本当にこの景色を夢見てきたので、グスッ、すごく嬉しいです」

「よくその熱量出せるね」

「次のチャレンジャーはおれか」

「さぁーここからは司会をヤマが務めさせていただきます!」

「切り替え早ー」

「今回のチャレンジャーは木村花男さんです。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします!」

「それでは。あなたが思い描く理想の呼び名は?」

「はい!『ハナ』です!」

「なるほど、カタカナ2文字ですね」

「でしょうね」

「それでは、ジャッジタイムです!カイさん、お願いします」

「さっきよりも展開早くなってるな。まぁ本人がそうしたいならいいんじゃないの?」

「厳しいかと思われましたが、カイさんからYESをもぎ取りました!」

「全然厳しくないけどね」

「続いて私の判定はー!?YESだ!!完全ALL達成おめでとうございます!」

「やったー!ありがとうございます!」

「元気でいいね」

「これで三人の呼び名決まったな!台詞に名前がついて読者も読みやすいんじゃない?」

カイ:「どういうこと?え!?なんかぼくの声の前に名前がついてる気がする!」

ヤマ:「どういう原理なんだこれ」

ハナ:「よくわかんないけど、これで作者さんも助かるんじゃない?」


――助かった。三人ともありがとう――


カイ:「うわっ!頭に声が響く!気持ち悪いな」

ハナ:「すげー!脳に直接話しかけられた」

ヤマ:「これで一件落着だな。飯食おうぜ」

カイ:「順応早くない?たしかに俺も腹減ってたけど」

ハナ:「よし!食べようぜ!俺給食係やるわ!」

ヤマ:「給食係?じゃあいただきますの号令を頼む」

ハナ:「てっとってをー♪あわっせーまっしょー♪」

カイ:「なにこれ」

ヤマ:「ここまで来たらのるしかないぞ」

ハナ:「いっただっきマース!」

カイ・ヤマ:「「いただきまーす!」」

ハナ:「おいしー!ファミレスのご飯ってたまに食べたくなるよね!」

カイ:「まあね、ヤマ、そのカルボナーラ一口もらってもいい?ぼくのチキンあげるからさ」

ヤマ:「いいぞ、間接キッスになるけど」

カイ:「キッスっていわないで、生々しくなるから」

ハナ:「でも間接キスって、された側のデメリットあんまり無いよね」

カイ:「そう?友達ならそうかもしれないけど、する方もされる方もあんまり変わらないでしょ」

ヤマ:「残り物をあげる形ならデメリットはほとんど無いな」

カイ:「たしかに、サラダの残り物を幼虫に食べられたところで嫌な気持ちはないね」

ハナ:「逆にさ、虫食ってる野菜を食べるのってちょっと抵抗あるよね」

ヤマ:「そうか?新鮮な証拠だと思うが」

カイ:「間接キスってそういうものじゃない気もするけど」

ハナ:「オレも女の子と間接キスとかしてみたいなー!」

カイ:「したことないの?なんか意外」

ハナ:「ないよー、うちの高校結構厳しかったし」

ヤマ:「じゃあ、今のうちに練習しとこうぜ。虫とか使って」

ハナ:「なんで虫なんだよ」

ヤマ:「間接キッスを成立させるのが一番簡単だからな」

カイ:「たしかに!食べかけの飴を地面に置いとけば、アリと間接キスできるじゃん!」

ハナ:「なるほど!それ地面じゃなくてお皿の上でやったらまた食べられるしいいね!」

ヤマ:「逆の練習もできるなんて素晴らしいな」

カイ:「アリの次はネズミとかかな」

ハナ:「その次は?」

カイ:「犬とか猫とか」

ヤマ:「俺たちを練習台にするのはそれからだな」

ハナ:「そこまで行けば恥ずかしがらずに間接キスできるようになるのか!今日家帰ったら早速やるぞ!」

カイ:「ネズミはやめといた方がいいかも、衛生的に」

ヤマ:「家でアリと間接キッスするの、家族にみられたら気まずくないか?」

ハナ:「大丈夫!オレ一人暮らしだし」

カイ:「ハナ一人暮らしか、ぼくもだよ」

ヤマ:「マジか。俺もこの春から一人暮らしだ」

ハナ:「三人とも一人暮らしか!引っ越し作業終わった?」

カイ:「まだ終わってない」

ヤマ:「俺もだ」

ハナ:「じゃあさ、授業始まる前に引っ越し作業てつだいっこしようぜ!三人でやった方がはやいし」

カイ:「いいね、明日にでもやろう」

ヤマ:「決まりだな」

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