第2話

 さて転送された不幸なおっさんはどうしているのかというと。


「ちょっ…説明プリーーーーーーーーーズ。」


 薄暗い洞窟の中にある小部屋のような場所に転送されたおっさんは叫んでいた。おっさんは知らないが攻略不可と言われている冥府アビスダンジョン1Fにある、安全地帯に運良く転送されていた。


「まったく、ここが試練のダンジョンってやつなのかねぇ…えらい薄気味悪い場所だなぁ…まったく何をすれば良いのか分からないんだけど…。あれ…身体がある?」


 何をすれば良いのか分からず、独り言を溢していたおっさんの目の前に、小さな光が発生…その光の中から、羽の生えた小さな人間が現れおっさんに話しかける。


『アナタがマスターですか?』

「えっ!?分からないです…」

(いきなりマスターですかと聞かれても意味がわからないんだけど?…見た目的に妖精か?)

『運命の女神桜花さまから手助けしてあげて欲しいと言われ参りました木の精霊です』

「あぁ〜なんかナビも付けると言っていたけど君がそうなのかな?」

『そうだと思われます。それではマスター、契約を結ぶ為名前を下さい』

「えぇっと…契約って何?」

『これからマスターと行動する為に魔力の繋がりが必要となります。というより契約がないと力が使えないのでサポート出来ません。』

「そうなんだ…でも桜花さまから言われたとしていきなり契約とか大丈夫?君に不都合とかはない?」

『クスッ…お優しいのですね。でも大丈夫ですよ、マスターの前世を確認させていただき了承していますので』

「おっふ…何をみられたのやら…まぁ良いや…木の精霊かぁ〜」

(ん〜髪は濃い緑で瞳がピンクより桜色っぽいな…もうこれはあれだな)

「君の名前はサクラだ。これからよろしく頼むね」

『サクラ…分かったマスターこれからぜひぜひよろしくね〜』

「おう、よろしく?」

『じゃあマスター、まずは色々と説明するね〜?』

「えっ!?あぁ…うん…よろしく」

(いきなりフランクになった…まぁ良いか)


 おっさんはいきなりフランクな喋りとなったサクラにちょっとビックリしながらも説明を聞くのであった。


 サクラの説明により、転送時にイレギュラーが発生してしまっており、本来試練のダンジョンに転送されるはずが冥府アビスダンジョンに送られていること。

 既に冥府アビスダンジョン内であり、入口が封じられている為、桜花の力で救出できない状態であること。

 脱出するには冥府アビスダンジョンを攻略することが必要であること。

 冥府アビスダンジョンで死んだら魂が消滅してしまうこと。

 サクラは精霊に成ったばかりで、戦闘能力が高くないことを説明した。

 サクラはおっさんの前世は神の介入により不幸だったことを桜花より聞いていたが、おっさんには話さなかった。


「おぉ〜そりゃまた特大の不幸が重なったもんだねぇ〜」

(ん〜死ぬ前から不幸体質だとは思っていたけど…死んでもそうなのかぁ〜まいったな…)

『なんかすっごく他人事みたいだね〜、マスターのことだよ?』

「いやまぁそうなんだけどねぇ…嘆いても既に起こっちゃったもんはどうしようもないしなぁ…。ってことでこれからどうすれば良いかな?」

『おぉ〜ポジティブなのか達観しているのか分からないけど〜、悲観するよりはいっか〜。じゃあ先ずはマスターのステータス確認しようよ。マスターはか「おぉ〜良いね!!ステータスオープン!」


 おっさんはウキウキしながら叫ぶも何も起こらず…羞恥に塗れることとなった。


『マスター…話は最後までちゃんと聞こうね〜?』

「はっず!!………はい…ごめんなさい」


 おっさんは真っ赤になり悶え…サクラに謝罪し、しょんぼりするのであった…ドンマイ。


『マスター今度はちゃんと最後まで聞いてね〜、まずステータスを確認するには鑑定スキルが必要です。マスターは鑑定スキルを貰っているよね?』

「あぁ〜桜花さまが鑑定とアイテムボイスと生活魔法とお買い物できるスキルをくれたはず」

『じゃあ自分の手を見ながら鑑定してみて〜、あっ声に出さなくてもスキルは使えるからね?魔法は魔法名を唱えた方が最初は楽だけどね〜』

「そうなんだ…まぁ最初だし手のひらを見ながら…鑑定!」


 名前 未設定

 種族 人間

 性別 男

 年齢 0歳(享年41歳)

 HP    100

 MP    100  

 STR    D

 VIT    D

 AGI    D

 INT    D

 MND    D

 LUK    SSS


 ユニークスキル

 創造・随時適応化・売店


 スキル

 鑑定

 アイテムボックス

 料理

 製菓


 魔法

 生活魔法


 契約精霊

 サクラ (樹木精霊)


 加護

 運命神(桜花)の加護


「ほぁ!?名前が未設定?0歳?どういうこと???」

『あぁ〜それはねマスター』


 サクラの説明によると死んでからまだ転生していないので、肉体があるように見えるが、肉体は作られておらず、未だ魂の状態(ダンジョンに挑む為に見た目は若返って20歳前後の状態)で名前がなく年齢も0歳になっているとのこと。


(おぉ〜20歳前後なら確かにまだ動けた気がする…30歳前くらいから完全に肥満体型だったからなぁ〜)

「まぁそれは良いとしてスキルと魔法は分かりやすいね〜鑑定・アイテムボックスは定番だし。生活魔法は…なるほど便利だね〜」

「あとは料理に製菓は…なんだろ…趣味だったからかなぁ?」


 そう、サブカルの定番鑑定先生とアイテムボックスさまである、鑑定先生はまだ初期状態の為調べられる情報は少ないが、末長くお世話になるであろうスキルである。アイテムボックスさまは言わずもがな、容量無限で時間停止機能付きの神スキルである!今は空っぽだけどな!あと、料理と製菓スキルは予想通り前世に自炊と趣味でお菓子作りをしていた為反映されたスキルである。

 そして、生活魔法は火をつけられるスパーク種火、飲むこともできる水を作るウォーター、色々と綺麗にできるピュリフィケーション浄化、周りを明るくすることができるライトなどあると便利な魔法が含まれた魔法である。地球ならばなくても困らないが、今はダンジョン内である為貰えて嬉しい魔法である。


(あぁこれは助かりますねぇ…でも攻撃か回復できる魔法も欲しかったところだけど…まぁ良いか…)


 特に何も考えてなさそうなおっさんであるが、所持しているスキルと魔法からすると生き抜くのには便利な取り合わせといえるだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る