不幸でくたびれたおっさんが転生し人生を謳歌する
ナビィ
プロローグ
第1話
「あ〜今日も生きているのか〜」
両親は亡くなり、嫁も彼女も居ない孤独なこの男。
生きる目標も無く、早く死なないかな〜と思うが自殺する勇気もない。日々無気力に生きてきたが…
『いえ…お亡くなりになっていますよ』
「え…?そうなの!?」
『寝ている間に地震が発生し、ベッド近くの本棚が倒れて潰されて、そのままお亡くなりになりましたよ』
「そうなんだ…じゃあここは死後の世界なのか…」
『まぁ死後の世界と言えばそうなりますが、少し違いますね』
(…ん?てか、誰と話しているんだ俺は?)
ようやく誰かと会話していることに気づいた男は、周りを確認しようとして目の前の女性に気づく。
(ほぁ〜なんなのだ、この綺麗な女性は…世の中こんな美人さんがいるんだな、いや死んでいると言われたから世の中ではないのか?でも綺麗な桜色の髪だな〜)
と死んだことに驚きもせずに、のほほんとした感想を抱いていた。
『あら、そんなに褒めてくれてありがとう。自慢の髪だから嬉しいわ』
(おぉ?声に出したつもりは無かったけど、心の声が聴こえるってやつなのかな?てことは女神さまなのかねぇ…?)
『えぇそうよ。死んだって伝えているのに案外冷静なのね。私は運命の女神さまと呼ばれている、オウカよ』
(オウカ……桜花?桜色の髪に白い肌、そして透き通るような空色の瞳…服は鮮やかな緑色…茶色がないけど桜の木を連想するなぁ〜)
『よく分かったわね…日本の桜が気に入って桜花って名乗っているのよ』
(名乗っているって…そんな簡単に名前を変更できるものなのかな?)
『元々名前は知られていないから良いのよ。てか、そろそろ声を出しなさいよ』
「あぁ申し訳ありません、心を読まれるならそのままでいいかなぁ〜と思っていました」
女神を前にして物怖じしない男である。
「それで死んだってことですが、この草原は何処ですかね?テンプレだと白い部屋かと思っていたのですけど。あと、何故か把握できるのですが、身体もなく白い球体っぽいのが自分なのですよね?」
そうなのである、何処までも続いているような草原に桜花と白い球が浮いているだけで他に何もないのだ。
『そうね、ここは私の神域でアナタは魂だけの状態だから白い球体に見えるのよ。あと、プライベートの神域はこんな寂しい景色じゃないわよ?』
(神域にプライベートとかあるんだ…)
「えぇっと、それでどういったご用件で?」
『あぁそうそう、お願いがあって呼んだのよ』
「お願いですか?」
『そう、ある世界でモンスターを間引きして欲しいのよ』
「いや、無理ですよ!?もう40過ぎたおっさんだし、戦闘技術なんかない普通の人間ですよ!」
『それは分かっているから、ある程度のスキルとナビを付けて、試練のダンジョンに行ってもらうわ』
(あっこれ拒否権ないやつだ…)
「えぇ…どのようなスキルをいただけるのでしょう?」
『取り敢えず鑑定とアイテムボックスに生活魔法と、あ〜慣れていないから食料調達も難しそうね〜。なら、お買い物ができるスキルも付けるわ』
『それと、試練のダンジョンでの成果次第でアナタの転生後の素質が決まるから頑張ってね〜♪』
「えっちょっと…」
桜花からの説明は終わりとばかりに転送するのであった。
『桜花さま宜しかったので?』
『ん?何かあった?』
『いえ、先程の転送陣の行き先は試練のダンジョンではなかったように見えましたが?』
『えっ……あっ
『ん〜魂の浄化はしたつもりだったけど…まだ仕掛けが残されていたみたいね…』
『桜花さまでも浄化しきれていなかったって事ですか?』
『そうね…魂の奥深くに仕掛けがされていたみたい、もう元凶を消滅させたとはいえ…本来は神が人の人生に介入して弄ぶなんてあってはいけない事』
『そうですね…しかも1人の人間の人生を何度も介入して幸運を奪うなんて残酷です』
『そうなのよね…他は気づかれないように、1回だけ少し奪われただけなのに…あの子だけ何故か何度も奪われているのよね…まぁ、お陰で発覚して奴を消滅させることが出来たのだけど…』
『そうですね…そういえば、子供の頃から何度も幸運を奪われていたのに、良く40過ぎまで生きていましたね?』
『それも不思議だったから調べてみたのだけど、あの子は幸運を引き寄せている訳じゃなくて、魂から作り出していたみたいよ?』
『えぇ!?幸運って世界の中で一定値に設定されているはずじゃないのですか!?』
『そのはずなのだけどね〜、まぁあの子の場合は周りに迷惑をかける訳じゃないから、そこは何もしていないわ』
『大丈夫なのですかそれ?』
『問題は無いわよ。あの子の運がすごく良くなるけど、あの子のせいで誰かが不運になる訳じゃ無いから…嫉妬はされそうだけど…』
『それは問題があるのじゃ…』
『それもあの子の運の良さでなんとかなるんじゃない?』
『はぁ…桜花さまがそうおっしゃるのなら、でも
『まぁ、あの子の運の良さを信じて戻ってくるのを待ちましょうか。でも、次の人生は幸せになって欲しくて、転生させるつもりが不幸な目にあわせちゃったわね』
『でも、転送された時点で奴の仕掛けは何も無いのですよね?』
『そうね、そこは安心なのだけど…
などと不穏な会話がなされていることなどつゆ知らず、異世界の攻略不可と言われている最高難易度のダンジョンに転送されてしまった不幸なおっさんはこれからどうなるのやら…|
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