第4話

あーだこーだいいながら、零士がノートを写し終えた頃、ちょうどホームルームの鐘が鳴った。


俺の席は校庭がよく見える窓側の前から二番目。

前から二番目だけど、普段から真面目そうにしてることもあって窓側をぼーっと見てても教師陣には特別怒られたことは無い。

俺って意外と真面目。

窓側の1番後ろは九尾の席。

俺からは全く見えない、からクラスメイトでもあんまり印象にない。

クラスだけが一緒なだけ。班での関わりも意外と一緒になったことも無いし。


ホームルームで担任が今日の話を簡単にし終えると、さっさと居なくなった。

俺は1限目から理科のため、教科書とノート、参考書を取りだし零士と移動しようと席を立つ。

「ねえ、狗神くん」

後ろから女子の声で呼ばれた。

返事をしながら振り返るとー

「…九尾」

「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、昼休み時間くれない?」

「今じゃダメなのか?」

「昼休みに理科教室で」

用件だけ伝えると、そそくさと教室を出ていった。

「蒼天〜行こうぜー」

ドアの前で待っている零士が声をかけてきた。

「九尾、なんかあったんか?」

「いや、分かんねーけどなんか声かけられた」

「ふーん、なんの用だって?」

俺は首を傾けた。


理科教室までの道すがら、九尾からの用件で頭いっぱいの俺に、数学が分からん話をしてくる零士をシカトしていた。

そう、気になることといえば


「なんなんだ」


理科教室に入ると、後方のひとつの棚のみすっからかんで、全ての棚が厳重に固定されていた。

例の1件で、固定したんだろう。

注目すらしていなかった俺は、いつからこうなってたのか知らん。

まあ、俺には関係ないしな。

席につき、ぼーっと今日の授業を終えていく。


そしてあっという間に昼休みになった。

「蒼天、飯行こうぜ!」

授業が終わり早々に、食堂に誘いに来た零士に用があるから先に行ってくれと告げ、理科教室へと俺は向かった。


✱ ✱ ✱


軽く深呼吸をし、ガラリと扉を開けると窓側に九尾が背を向けて立っている。

扉を閉めつつ、1限目で使ったアルコールランプの匂いがツンと鼻についた。


「九尾、ここまで呼んでなんの用だよ」

「…貴方、まだ何も聞いてないの?」

「いやだから、俺は用を聞きに来たんだけど」

普通なら女子からの人気のない場所の呼び出しなんて、ぬか喜びしそうだが

噂の対象である彼女に、噂の場所に呼ばれて喜ぶヤツはいないだろう。

窓が空いているせいか、九尾の長い髪がサラサラと動いた。

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