第2話
分かれ道となり、話半ばに解散となったが九尾の噂は色んなものがあるのは事実なんだよな。
普段は優等生、というよりは地味めなクラスメイトってだけだし。あんまり顔は思い出せないが、髪が長めのメガネ…だったよな。
騒がしくもないし、集団で動く女子じゃないし。
「俺は嫌いなタイプじゃない、んだよな。」
✱ ✱ ✱
「ただいま」
帰宅し、扉をあけると部屋の奥からおかえり〜という母親の明るい声が聞こえてきた。
「母さん、今日はもう家にいたんだね」
「そうなの〜今日は仕事早く終わったのよん」
15歳なのに思春期特有の反抗期になってないのは、この母親のおかげだったりする。
歳の割には、まあまあ美人な顔と仕事で忙しく帰ってくるのは遅い。毎日こうして会話をしないからこそ、いい距離感でいてくれている母親の接し方には感謝していたりするんだよな。
「母さん、俺作るから手伝ってくれる?」
「ええ〜、たまには私がうでをふるって」
母親の声を遮るように俺は慌てて声を重ねる。
「たまには!たまには、出来たてを食べて欲しいんだよ!」
母さんはとにかく料理が下手。
不味くもないけど、上手くもない。
一生懸命やってくれるんだが、同じ材料で上手くなるなら自分で作ろう、とやり始めたら、楽しくなったのは事実。
今どき料理男子はモテるからお母さんのおかげじゃん!と言われた時は少しイラッとしたが、ぐっと堪えた。
話に出てこない父親は単身赴任中。らしい。
俺的には年末年始にしかあった覚えのない父親と母親は不仲なんだろうと思ってる。
まあ、今は母さんとの二人暮しに慣れきってしまったので、今更父親面されてもな…。
「じゃあ、ご飯のことは蒼天に任せて。もう少しだけ仕事しとこうかなあ」
「うん、是非そうして」
深く頷き、母親の背を俺は押した。
「じゃあ悪いんだけどお願いするわね!」
キャッキャする母さんを見て、相変わらずだなと思う。元気で明るく、父親が不在なことを気にさせない気遣い。
思春期の息子と近かったり遠かったり、距離感を上手くやってくれる。干渉のしすぎはご法度だもんな。
今日どうだっただの、部活はどんなだの、クラスメイトはどうだの、そんな話されても困る俺にとってはいい距離感だ。
「さて、何作るかなー」
料理をしてる時は今日の授業の復習を頭の中でしたり、考え事をしたり、今日のー
そう、今日話に出た九尾のこととか考えるには丁度いい。
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