第13話献身
柚葉が蓮花と初めて会ったのは、小学校に入学する少し前六歳の時だった。
その時までいとこがいることすら知らず、幼稚園や保育園にも通っておらず、日中もずっと母と二人で家にこもりきりの生活をしていた柚葉にとって、初めて出会う同世代の子供でもあった。
「杏子、ずっと連絡もつかなくて心配していたんだよ。こんなに痩せて、ご飯はちゃんと食べているの?」
母親の杏子の姉、柚葉にとっては伯母にあたる早田百合子は玄関前で茫然と立ちすくす妹をしっかと抱きしめた。
「お父さんとお母さんは私がちゃんと説得するから、しばらく家にいなよ。ね」
その言葉に杏子がゆっくりと頷きそうになった時,ドアの向こう側から大きく地響きのような怒鳴り声が聞こえて来た。
「百合子、何をやっているんだ! 他人と外でがちゃがちゃやっていないで、さっさと家の中に戻りなさい!」
それはこの家の主、早田家の当時の当主である早田長治の声であった。
杏子は大学生の時に親の反対を押して高校時代の家庭教師であった前原徹と駆け落ち同然に結婚し、家を勘当されていたのだ。
「大丈夫よ杏子、お父さん少し気が立っているだけだから、一緒に家に入りましょう」
そんな姉の言葉に杏子はゆっくりと首を横に一度振り、くるりと踵を返して生まれ育った実家に背を向けた。
母親に手を引かれ柚葉もその場所を立ち去ろうとしていると、背後からつんつんとシャツの裾を引っ張られた。
くるりと後ろを向くと、百合子の後ろに隠れちらちらと柚葉を見ていた女の子の姿がそこにあった。
「あのね、あなたの手が痛そうだから、これ……ヒーローシャインガールがきっと治してくれるから」
それは当時流行していた女児向けのアニメ、ヒーローシャインガールのイラスト入りの絆創膏だった。
無言のまま手を引き先へと足を進める母親に半ば引き摺られていく柚葉の手の甲に、女の子はぺたっと絆創膏を貼ってくれた。
「私は蓮花、また会おう、絶対だよ」
蓮花が指切りをしようと絡めた小指は引き摺られていく体のせいで直ぐに離れてしまったけれど、振り返りながら歩く柚葉の姿が見えなくなるまで蓮花はずっと立てた小指を向けていた。
「あぁ、腹が立つ! どれもこれもアンタのせいよ」
電車とバスに一時間以上揺られ自宅アパートにたどり着いた後、杏子は柚葉の髪を引っ張って小さな体を床になぎ倒し何度も何度も踏みつけた。
「姉さんのあの顔! 同情しているようであたしのことをあざ笑っているのよ」
どんどんと床を踏み鳴らしながら、杏子はいらいらと親指の爪を噛む。
繰り返し噛み続けたせいで、その爪の先はギザギザと先割れしている。
「ねぇ、アンタ姉さんの子になんちゃら言われてたでしょ、何話したのよ。言いなさいよ、ほら、おらぁ……」
げんこつの嵐が降ってくるのを予感して、両手で頭を庇おうとした柚葉はハッとして手の甲の絆創膏を剥がしてこっそりポケットにしまい込んだ。
そのせいで防御が遅れ、げんこつは頭にボコボコと直撃してくる。
「何黙ってんのよー、あのガキもどうせあたしのことバカにしてんでしょ。おらぁ、何か言いなさいよー口がないの? あぁもう」
痩せこけた女性のとはいえ、大人の拳は幼児にとっては強力な暴力となる。
痛みと振動に耐えるため、柚葉はぎゅっと口を閉じ歯を食いしばった。
「あぁもう、誰もかれもあたしのことを馬鹿にしてさ。もういいわよ、ほら教育してあげるからこっちに来なさい」
テーブルの上の夕べの飲み残しの水割りを手に取って口にしながら、杏子はもう片方の手で柚葉を手招きする。
にっこりと優し気に微笑み、さっきまで娘を呼んでいたその手には百円ライターが握られている。
「さぁ、ここに座って」
言われるがままに正座した柚葉の小さな手をサッと取り、杏子は生々しい火傷の上をさらにライターの火であぶった。
「うぐぅ」
あの熱さに、皮膚が焼ける痛みに耐えかねてうめき声を出した柚葉を杏子は凍り付くような冷え冷えとした目で見下ろす。
「本当にアンタは父親にそっくりね。その反抗的な目つき、イライラするのよ」
それは、杏子が自分の夫、前原徹に言われていたのと同じ言葉だった。
早田杏子は、おとなしく目立たない少女だった。
姉の百合子は快活で成績もよく、満場一致で生徒会長に選ばれ大学にも特待生として招かれるほど成績優秀であったが、杏子は成績もあまり振るわなかった。
そのため、百合子と同じ大学に通い同じく特待生の徹が家庭教師として呼ばれることになったのだが、徹は百合子に恋をしていて百合子もまんざらではない様な態度だった。
「ねぇ、姉さんには婚約者がいるのよ。あなたはとても素敵な人なのにね、どうしてあなたを選ばないのかしら」
杏子は折に触れ徹の恋心をくじきつつ彼のことを誉めそやし、一方では地味だった見た目をどんどん変貌させ別人のように色化を漂わせるようになった。
そして、杏子が大学二年の時、二人はついに交際を始め半年後杏子のお腹の中に子供が宿っていることが分かった。
父親の長治は激怒し直ぐに別れるように言ったが、杏子は聞き入れずそのまま家を飛び出したのだった。
しかし、その時の子供は結局生まれてくることが出来ず、長治の口利きで勤めていた会社では若くして窓際に押しやられた徹は荒れ狂うようになった。
「そもそも俺はお前と結婚する気なんてなかったんだ。あぁお前のその目、あの高慢で居丈高なお前の父親にそっくりだよ。人をコケにしやがって、バカにするんじゃねぇ」
殴られ、ののしられる毎日、そんな日々は杏子を壊していき、二人の暮らしは家庭生活と呼べるような体をなしていなかった。
そんな険悪な状態なのに長治への意地なのか別れるとはどちらからも口にせず、一年半後に柚葉が生まれた。
冷え切った愛のない意地だけの関係の二人の間に生まれた柚葉は、両親のどちらからも愛を受けた記憶はない。
夜更けには母親が暴行されののしられる音で目を覚まし、日中は自分が同じことをされる。
ただその繰り返しだった。
小学校にはなんとか通うことは出来たが、読み書きの出来なかった柚葉はやんちゃな男子児童からは指をさして「あのバカ」と笑われ、女子児童からは「髪がいつもぐしゃぐしゃで変だよね。前原さんちって家にブラシが無いのかな」などとこそこそ陰口を言われていた。
そして、家でも学校でも人と口を利かないまま六年が過ぎ去り、中一の夏、祖父が死んだという知らせを受けた。
探偵に頼んで杏子と柚葉の住むアパートを探し当てたという百合子は、あの日のようにまた杏子を抱きしめて「苦労を掛けたね、今度こそ戻っておいで」と泣きじゃくった。
それを知った柚葉の父親、徹は判を押した離婚届を置いてどこかへと消えてしまった。
「どうせ他に女がいたのよ。最近安っぽい香水の匂いプンプンさせてたし」
ケラケラと笑う杏子の顔は、何かが吹っ切れたようにさっぱりとしたものだった。
お互いを縛り付けていた意地という名の鎖が、それを張る相手がいなくなったことで断ち切れて、解放された気分だったのだろう。
その時柚葉は、初めて母親の笑った顔を見た。
丘の上にある高級住宅地の中でもひときわ立派なお屋敷、以前は中に入ることが出来なかった早田の家、今まで住んでいたアパートのキッチンよりも広い玄関を抜けると、一度も顔を合わせることの無かった祖父の祭壇があった。
赤に白、黄色にピンクと色とりどりの菊の花で彩られたその中心には、個人の遺影が飾られている。
初めて見る祖父の顔は、柚葉が一度だけ聞いた声、あの怒鳴り声からは想像もつかない様な柔和な顔をしていた。
「おじい様ね、あの時怒鳴って追い返したことずっと後悔なさっていたのよ。会社の方に頼んで、柚葉さんの運動会の写真を撮って来てもらっていつも眺めていたわ。本当はね、呼び戻したかったけれど、どうにも偏屈なところのある人だったから。自分の言葉に引っ込みがつかなくなってしまっていたのね」
いつの間にか横にいたのは、ウェーブのかかった銀髪を撫でつけた品のいい老婦人だった。
(この人は……一体誰なんだろう。この家の人なんだろうか……)
不思議そうな顔をする柚葉に老婦人は「私はあなたのおばあちゃんの早田なつをよ。ずっと会いたかったのよ」と自分が祖母であることを告げはらりと一筋の涙を零した。
両手を包み込む小さくてしわしわの手は温かくて、じんわりと自分の中に浸透してくるような初めてのその感覚に戸惑った柚葉は思わずパッとその手を払ってしまった。
「あぁ、あぁ、ごめんなさいね。ずっと放っておいたのに、今更こんなこと言って、虫が良すぎるわよね」
寂しそうなその横顔を見ているとどうにもむずむずしてきて、何か声を掛けたいと思うのだが胸が詰まって何も言葉が出てこない。
「あ、あ……」
何とか絞りだした声はか細く掠れていて、その声に気付かなかった祖母は小さく会釈して廊下の奥へと消えてしまった。
丸まったその背中はとても小さく見えて、柚葉の胸の奥はシクシクと痛んだ。
祖母との距離を縮めたいと思いつつも、今まで家族と団らんの時間など一度も過ごしたことが無く方法が分からなかった柚葉を救ってくれたのは、同じ年のいとこである蓮花だった。
あの日、手の甲の火傷にヒーローシャインガールの絆創膏を貼ってくれ、柚葉の心に小さな明かりを灯してくれた蓮花。
柚葉たち母子が同居することになっても嫌な顔一つせず受け入れてくれ、柚葉と同じお部屋を使うことも自ら提案してくれた。
「一人っ子でずっと寂しかったから、双子の妹が出来たみたいですごくうれしい」
話すことが苦手でもじもじして返事の出来ない柚葉に、蓮花は毎日毎日笑顔で話しかけてくれた。
「柚葉はおばあちゃんと話したくないわけじゃないんだよね。この前玄関でおばあちゃんが転びそうになった時も直ぐに腕を掴んで助けてたし、いつも気にかけてる。優しい子だっておばあちゃんも知ってるんだよ」
蓮花の計らいで二人で協力して作ったケーキで祖母と孫娘のお茶会をしたり、少しずつ距離を縮めて互いに微笑み合える関係を作れた矢先、祖父が亡くなってから一月後の晩夏に祖母は突然この世を去った。
いつもは早起きの祖母がなかなか起きてこないことを訝しがった伯母が寝室を見に行ったところ、既に息を引き取っていたのだ。
「苦しまなかったようで良かった。なんだかんだ言って仲の良い夫婦だったから、おじいちゃんが寂しがって呼んだのかもしれないわ」
伯母ははらはらと涙を零し母親も俯き目じりを拭っていたが、その口元にうっすらと笑みが浮かんでいるのに柚葉は気づいてしまった。
小学校に上がってからは母親の杏子は柚葉に肉体的な虐待や言葉の暴力をふるうことはめったになくなっていたが、存在を無視するようになった。
それは両親の離婚が成立して柚葉が早田柚葉になり早田家に移って来てからも変わらなかった。
杏子の中で、柚葉はいないも同然だったのだ。
学校についてもそうだった。
「何を言っているのか分からないけど、全部姉さんに任せるわ」
柚葉の転校先はどうするのか? 出来れば蓮花と同じ学校に行って体の弱い蓮花をサポートしてほしい。
そんな姉の頼みに、杏子はどうでもよさそうに返事をした。
「お母さんは辛い目にあったから、心が少し疲れているの。我慢してあげてね」
伯母は柚葉を気遣ったが、柚葉にとってはそれが一番良い状態だと思えた。
関心が無ければ、憎しみもまた生まれないからだ。
(どうかこのままで、二度と私に目を向けないで。)
母親に対してそう願う一方で、蓮花との仲はどんどん深まってゆく。
新しく通うことになった中学は、穏やかで笑顔にあふれた場所だった。
「早田さんはじめまして、うーどっちも早田さんだからややこしいな。柚葉ちゃんって呼ぶね。蓮花ちゃんと柚葉ちゃんっていとこだから、やっぱり顔が似てるねー髪型を揃えたらもっと似てそう」
蓮花の友達でクラスで一番人懐っこい吉田唯にそう言われた翌日、柚葉は祖母に貰っていたお小遣いを初めて使い美容室に行って伸ばしっぱなしだった腰の下まで届くような長い髪をバッサリと切って、蓮花と同じ肩までのセミロングにした。
「わー、やっぱりそっくりになった。双子みたいだよ」
唯にそう言われたとき、柚葉は幸せそうににっこりと微笑んだ。
真田疾風との交流が始まったのも、ちょうどそのころのことだった。
蓮花と柚葉の部屋の窓からは、丘の様子が良く見える。
蓮花は朝起きると真っ先にカーテンを開けて、窓越しに丘をずっと眺めていた。
「何を見ているの?」
柚葉がひょいと横から覗き込むと、蓮花の視線の先にはジョギング終わりで首にかけたタオルで汗をぬぐう真田疾風の姿があった。
蓮花の頬に赤みが差しているのは、朝焼けに照らされたからではない。
彼の姿を見たからなのだ。
その胸の内の秘めた想いに気付いた柚葉は、蓮花のためにある行動を起こすことにした。
放課後は陸上部の活動で忙しく、図書委員の活動ができない疾風の代わりに委員の仕事を引き受けると宣言したのだ。
蓮花以外の同世代の人間とは必要な日常会話程度しか交わしたことのない柚葉にとって、それは心臓が口から飛び出してしまいそうなほど緊張することであったが、蓮花のためなら耐えられた。
「ごめん、俺部活で忙しくなるの自分でも分かってたのに、委員までやるって気安く引き受けちゃって。頼まれると断れない性質なんだけど、これじゃ反って迷惑だったよな」
「い、いいよ。私本が好きだから」
これをきっかけに、疾風と柚葉、そして蓮花は親しく話す間柄となった。
図書委員の当番のある火曜と木曜、蓮花は教室で一人柚葉を待つ。
図書室で待たないのは、教室の方が疾風が走っているグラウンドが良く見えるからだ。
そして、当番が終わり柚葉と蓮花が昇降口まで行くとちょうど部活終わりの疾風がやってくる。
誰かがそう声を掛けたわけでなく、いつの間にか三人は一緒に下校するようになっていた。
三人兄弟の長男で面倒見の良い疾風は、蓮花の体調をいつも気にかけ柚葉では出来ない力仕事を引き受けてくれる。
そして、疾風に手助けをしてもらっているときの蓮花はとても幸せそうで、柚葉はそれを見ていると胸がほんわりと温かくなり幸せな気持ちで満たされていくような気がした。
こんな日が、いつまでも続くといい、きっと続く、柚葉の願いは数年後に打ち砕かれることとなる。
蓮花の持病である拡張型心筋症、薬でなんとか抑えてだましだまし耐えて来た蓮花の心臓が、ついに悲鳴を上げて高校に通うことが不可能になってしまったのだ。
病室のベッドで手をぎゅっと握りしめ自分も休学して蓮花の面倒をみたいと懇願する柚葉に、「私は学校の話が聞きたいの。柚葉が行ってくれないと、誰からもそれが聞けないでしょう」蓮花はそう告げて諭した。
仕方なく毎日学校に通う蓮花だったが、気持ちは沈み誰とも話す気になれなかった。
勿論疾風とも。
図書委員の活動も続けてはいたが、気落ちして作業が捗らない。
ため息を吐きながら図書の整理をしていた柚葉の視線は、とある本の背表紙ではたと止まった。
【未成年者の脳死判定と臓器移植】そんなタイトルの本を手に取った柚葉は、当番の仕事そっちのけで読みふけり、自分で貸し出しの処理もして持ち帰ってからも熟読した。
翌日、昨日までとは打って変わった柚葉の明るい表情に気付いた疾風は、放課後の昇降口で柚葉に久しぶりに声を掛けた。
「なぁ柚葉、何かいいことでもあったのか?」
「うん、すごくいいこと、いやいいことが起きそうなことに昨日気が付いたの」
「へぇ、良かったな。いいこと本当に起きるといいな」
「うん、実現したら疾風もきっと喜ぶと思う」
「えー、何だよそれ、教えろよ」
「いいけどここじゃだめ、家に来てよ」
「お、おう」
中一のあの時から三人は親しくなり、二人を送って行った時には蓮花の母親に誘われて家にお邪魔することもあった。
けれどいつもリビングでお茶や菓子を食べるだけで、二人の部屋には入ったことが無かった。
しかも今は蓮花は不在、遊びに行けば二人きりだ。
内心ドキドキしながら頬を赤らめて部屋に入った疾風の顔からは、たちまち血の気が引き青ざめることとなる。
柚葉が打ち明けてくれたいいことを実現するための計画は、想像することなどとてもできない様な疾風にとって恐ろしく、衝撃的なものだったのだ。
「蓮花は私にとって双子のような、ううんそれ以上。蓮花は私の命そのものなの。考えたくもないけど、いなくなったら私はとてもじゃないけど耐えられない。蓮花のいない世界では一秒たりとも生きてはいけない。疾風だって蓮花に元気になって欲しいでしょう? だから、協力して」
「あ、あぁ……」
蓮花に自分の心臓をあげたい。そんな恐ろしい話をしているというのに、その目は見たこともないぐらい澄み切っていて、声は遊園地ではしゃぐ子供のように弾んで楽し気だった。
その真摯な眼差しに真っすぐに見つめられた疾風は目をそらすことができず、その願いにノーを突きつけることなんて出来ようがなかったのだ。
疾風が帰宅した後、柚葉は日記に数行気持ちを書き留めるとぎゅっとそれを抱きしめた。
これは早田の家に初めて足を踏み入れたあの日、蓮花がプレゼントしてくれたものだ。
「十年日記っていうの、書き終わるころ私たちもう大人になってる。ひょっとしたら子供が生まれていて、私たちの子供同士で遊んでいるかも」
十年後の自分たちはまだ二十二歳と二十三歳、ちょっと気が早いのではないかと柚葉は内心思っていたが、自分の人生はそう長くは無い。急いで大人にならなくとはと思っていたのではと、今ではそう思えてしまう。
あれから十年後、今からだと六年後に蓮花がいないかもしれないなんてとても信じられない。
蓮花は来年もそのまた次も、十年でも二十年でもずっとずっと笑っていて、横には疾風が優しく寄り添っている。
そんな未来を思い描くと、柚葉の胸は浮き立ち顔から笑みが零れ出す。
例えその横に自分がいなくても。
この世界から自分の存在が、跡形もなく消えてしまっていたのだとしても。
蓮花が笑ってくれていればそれでいいのだ。
日記帳に貼ったヒーローシャインガールの絆創膏を指でなぞる。
すっかり色あせてしまったけれど、これは柚葉にとって唯一のヒーローからのプレゼント。そう、蓮花からの。
「ちょっとだけ、あとちょっとだけ待っててね。蓮花、きっと笑って過ごせる日が来るから」
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