第6話

第12章 2つ目の怪事件

松本博士はあの客が立って眠る一件から客の正体を探りたいと雪町村にとどまり活動を続けてきたのだが、そんなある日(4月28日)、彼が散歩のため深夜に近くにある散歩コースの森林を歩いているとき、博士は怪事件に遭遇したのである。博士はその時都会にはない珍しい木々に見とれていたのだが、そろそろ眠気が襲ってきたのに築いてきた道を引き返そうとすると、なんと、先ほどまでついていた街灯が消えているではないか。懐中電灯を使って調べてみると、どうやら街灯はだれかに叩き割られたようだった。だが、誰に…そんなことを考えていると、博士は寒気を感じた。後ろで恐ろしいことが起きていると博士の第六感が告げていた。そして、振り向いて何が起きているかを知らなければならないという直感を感じた。博士の直感はこれまで博士を裏切ったことはなく、博士は意を決して振り向いた。そして、博士は世にも奇妙な光景を目にした。そこには一人の若い女性が倒れていた。そして、何者かの息遣いもする。博士ははっとして女性に近づこうとすると、怪現象は起きた。なんと、女性の寝間着についていた襟が、ひとりでにくるくるとめくれて地面に落ちたのだ。ちょうど誰かが襟を外したかのようだった。博士がぞっとしながらなおも見ていると、ひとりでに女性の体が立ち上がり、(本人は気絶しているのだ!)そして、そしてゆっくりと、女性の体が動き、ちょうど誰かに抱かれているような様子になった。博士がなおも見ていると、女性の首にひとりでに2個の傷がつき、なんとその傷から血が何もないところへ流れ出てくるではないか!博士はギャッと叫びそうになるのを必死でこらえながら、汗を流してみていると、その血はだんだん流れ出るスペースが早くなり、そして、女性の体の隣の空中に、だんだんあの流れ出た血がたまっていき、そのたまるペースは血が宙を流れ出るペースと一致していた。その空気中に浮かぶ血の塊は、しばらく血をためていたが、やがてスーッと空中に消えていった。そして、女性はガタッと地面に倒れると、ここからが最も博士が戦慄した場面なのだが、その女性の体が、だんだんと白いものに変わっていき、次第に女性の体全体が泡のようなもので包まれると、なんと!なんと!その泡が崩れるようにして地面に消えていったかと思うと、そこには何もなかったのだ!つい先ほどまでそこに倒れていた女性の体が、なくなっていたのだ!博士が叫び声をあげながら逃げようとすると、突然、逃げ道が何か見えないものでふさがれた。そして、その見えないものは、博士を突き飛ばして、どこかに逃げたのだった。


第13章 博士の経験した怪事件を伝える翌日の夕刊

4月29日付 雪町毎日新聞 夕刊

松本稔氏怪奇現象に襲われる 地元住民戦々恐々

先日4月28日、雪待村に滞在している世界的な医学者の権威、松本稔博士が深夜に雪町村中央公園を散歩中に、怪事件に遭遇した。本紙記者の取材によると、博士は森を散歩中に、女性が倒れているのを発見し、救助しようと近づいたところ、突如女性の体が宙に浮き、女性の首に傷跡が付き、そこから血が流れ出て、空気中に堆積したという。その後、女性の体が泡に包まれ、地面に消えたということ。(中略)警察は、双葉総一郎氏殺人事件と犯人が同一人物であるとみて、地元の住民に警戒を呼び掛けている。

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