第5話

第11章 雪町村での怪事件

さて、前述のように博士が体験した話が広まり、夕刊に載ったというわけで、村人たちの客への恐怖心はますます上がった。中には客を強制的に追い出し、客が抵抗したら殺してしまえという声も上がった。恐怖心とは恐ろしいものである。しかし、村人たちの恐怖が絶頂に達したとき、彼らはものすごく理性的な方法をとった。警察へ通報したのである。駆けつけたのは松井という巡査ら5名だったが、村人から話を聞くと、まだ事件が起こっていないため捜査できないと冷たく言い、帰って行ってしまった。しかし、村人たちがどのようにして警察に客について捜査させようかと議論している間に、怪事件が起きたのである。最初の被害者は村に住む学習塾の塾長である。塾長は名を双葉と言い、子供たちにとっても人気の先生だったのだが、その塾長が自宅の寝室で息絶えているのを塾の別の先生が発見し、警察に通報した。双葉氏は、全身の血液のうち80%を失った状態で発見された。そのニュースを伝えた記事が2点あるためここに記載する。

雪町毎日新聞 4月21日

村で人気の塾長、殺害される 不可解な事件

4月20日午前8時、双葉塾塾長である双葉総一郎氏が、雪町村の自宅の寝室で死体となって発見された。双葉氏が出社時刻を過ぎても出社しないことを不審に思った双葉氏の息子、双葉相馬氏が、合いかぎを使って双葉氏の寝室に入ったところ、息絶えた双葉氏を発見したという。相馬氏はすぐさま警察に通報し、警察が現場検証に踏み切った。捜査関係者によると、双葉氏はベッドの上にあおむけの状態で発見され、体内の血液80%を失っていた。また、首元に不可解な2つの傷跡があった。双葉相馬氏は「何でこんなことになったのか理解できない。父はとても温厚で、凶悪な犯罪者を怒らせることなどなかった。早く犯人が捕まってほしい。」とコメントしている。葬儀は4月22日、家族や親せきのみで行われる予定である。


雪町毎日新聞 号外 4月20日

人気の塾長死亡

4月20日午前8時、双葉塾の塾長双葉総一郎氏が雪町村の自宅の寝室で死亡しているのが見つかった。第一発見者は氏の息子である。


このような怪事件が起きると、警察が黙っているはずがなく、雪町村一帯は警察の巡査が昼でも巡行しているという平和な村にはあるまじき光景が広がっていた。そんな中、再び警察に謎の客の操作要求が届いたころ、ついに謎の客の正体があらわになる事件が発生した。第一発見者はあの松本博士である。

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