第13話

翌日旧青森支部内の会議に参加することになった…一応本部から来たってことで情報を伝えてほしいとのこと


会議内容とかは後々送るそうだが確実に伝える為だそう


会議内容は調査班が出会った獣についてだった


「俺達が出会ったのは一体の熊でした…ただ普通の熊と違い腕が膨れ上がって口の周りには炎が出ていました」


その報告でざわつく会議室で会ったが支部長が静かにしろというと周りは取り敢えず静かになった


「最初に出会った頃は腕だけで攻撃を仕掛けてきてました…そこから傷をつけると急に態度を変えてきて口から炎を吐き出してこちらに突撃をしてきました」


炎を使う熊ねぇ…だとすると面倒くさいどころじゃないな


「そして最大の脅威は爪を何もないところに振りかざしたと思ったら足が切れたました…多分風による攻撃だと思いますが初めて見ました」


再びざわつく会議室…炎と風を使ってくる獣は初めて確認された為非常に危険度は高いだろう…少なくともちゃんと調査をするにあたってその熊は討伐をしなくてはならないとおもった


「熊討伐が出来る人材は今ここにはいない…本部から来たアンタはどうだ、出来るか?もしくは本部に出来る人材はいるか?」


問いかけられたからには答えないといけないが正直実物を見た訳ではないので確実に討伐が出来るかと言われたら難しいだろう…また本部に居る一番強い人は知らないから一度戻って確認しなければならないと思うと回答する


「なるほど…では一度戻ってくれ、こちらはその熊に警戒をしておくことにする」


そうして会議は終わったが各々出ていく時不安な顔をしていた…


それでいいのか、旧青森支部内の人達は逃げることなく抗って欲しいと俺は思ったが腑抜けよりも使える人間がここで育成されてたら良いなと思った


輸送機に乗り込み本部に帰る…



本部に着いたので報告をしにいくと中で争っている声が聞こえるが気にせずに入る


「だから、アイツに注入された因子はなんだと言っているんだ」


「それは機密事項だ、言えないと言っているだろう」


うわぁ…面倒くさーと思ってるとオペレーターの人達も参っている所だったので止めるしかないか



旧青森支部より帰還しましたと声を張り上げると2人はこちらを向いて止まっている


「よく戻った…それでは報告をきこう」


簡単な報告を済ませてとっとと出て行こうと思ったが事が事なのでちゃんと報告することにした


「炎と風を操る熊か…お前なら討伐できるか?」


そう言って口喧嘩をしていた人に聞くと


「多分無理だな、俺達の班は問題を抱えてしまったからなその問題がなかったらもしかしたら出来た可能性はあったがな」


そう言って返事を返す男性…


少し考えた本部長はこちらに向けて言葉を発した


「お前に任せる…未知の獣と戦って勝ったのは今の所お前だけだからな戦力は個としてはトップだろう…いけるか?」


マジ?今度こそ死んだわ


「それではお前に任せるが後で誕生の場所にこい」


誕生の場所?何処それ初めて聞いたんだけど…


そう思ってオペレーターの人に顔を向けるとチョーカーを指差してたので獣狩りになった場所に来いってことかな?


そう思ってボケーと待っていると本部長が上から話しかけてくる…


「これからお前には実験をしてもらうが一応無事なことは確認できたがもしかすると死ぬ可能性があるがやる覚悟はあるか?」


いやいや、ないですけど?なんでそんなことを言うんですかね


「どのみち熊にやられるかここで死ぬかだぞ?ここで力を手に入れるか無謀で熊にやられるか…どちらに賭けて生き残るんだ?」


そんなことを言われたら生き残る方に賭けるけどもしかして都合よく使われている?


「では拘束しろ」


そう言って扉から出てくる男性陣…え?強制じゃんふざけんな馬鹿


そうして拘束された訳ですがマジでふざけんなよ何されるんだよそれくらい説明しろや


「お前が狩ったオルトロスがいるだろう?それから取った血をお前に注入する…」


は?流石に安全にしてるんだよね?じゃなきゃこんなことしないよね?


「安心しろお前は2番目だ、1番目は自分から志願してきたからな…」


えーと更に血をぶち込んで獣と人間の比率を極限にして強くするってこと?危険じゃね?


「それでは注入しろ」


そう言って血を持ってくる医療班…


拘束されているので抜け出せないからもう受けるしかないのだ



注入された辺りで視界が暗くなった…ここは何処だ?


目覚めると荒廃した世界ではなく元々の世界に戻っていると認識してしまう…もう既にないのにだ


体は拘束されていた筈なのに動かせる


歩き進めると普通に人が居り自然に暮らしている様だ…


かつてここに住んでいた気がするが分からない…もう昔のことで今を生きることで精一杯だから忘れていた記憶だと思う


正直昔の記憶は思い出すと苦しくなるから忘れていた記憶…思い出したくない記憶だからこそ忘れていたかった記憶がここで思い出すってことは多分俺は死んだのだろう…


走馬灯というやつかもしれないが自然と気持ちが楽になっていく…もう戦わなくて良いんだと争いの中に身を灯す必要はないんだと理解できる


しかし、この身は獣の血が入っていることで純粋な人間ではなくなっているのだ。故にまともな生活は出来ないのにここだと出来ると思ってしまうのは死んでしまったからだろうか?


よく分からないが何も気にしなくて良い世界に来たのだろう?


ようやく心も休めるのだ…そう思い瞼を閉じ再び意識が暗転すると目の前は赤く膨れ上がった世界だった


周りからは叫び声が聞こえ鼻を突き刺す様な臭いが感じられる…意識が暗転すると世界が変わってしまうのか?


こちらに駆け寄ってくる人々には武器が握られておりこちらに武器を向けて言葉を発している…


なんの言葉を発しているのかは分からないが俺が何をしたっていうんだ?


視界の端に動く毛がある…恐る恐る見ると自分の手であり俺は獣へと堕ちてしまったのだと感じるとすぐさまその場から去る様に走り出す…


まだ、人は殺してない筈…殺すわけがないと思い自分の手を見ると先程見た手と違い鈍く光る赤色がそこにはあって自分は人を殺したという認識が詰め寄ってくる…


やめろ、来るなこれは俺じゃない…誰だ誰がこんなことをしたんだ、俺じゃない、俺じゃ、俺じゃないんだ…虚空に言いかけ俺じゃないと言い続ける


次第に視界は目まぐるしく変わっていきその都度平和な日々と人を殺してしまう景色が入れ替わりもう見たくない景色を何回も何回も見続ける…


ある時視界は白くなっていく…俺の腕や脚は獣の一部があり、体に違和感があると思い腰を触ると尻尾が生えており完全に獣になってしまったのだと自覚してしまう…


しかし、完全に獣になった訳ではない様で間違いなく人としての認識も身体の一部もある為俺はどうなってしまったのかを分からない


ここは現実なのか?それともあの景色と同じ様に幻覚なのだろうか?全くもって分からない


俺はどうなったんだ?



遠くから叫び声が聞こえる…それは人の叫び声じゃなくてまるで獣の叫び声だ


ふとした時浮遊感を感じるそうして体が自由に動かせる事から解放されたのか?


視界には白い世界しかなく自由には見えない…耳を劈く音が聞こえ始める…


ある時地面が見える…しかし、それは白色の地面で何にもないが着地はしなければならないと感じる…


着地をした後目の前には何かがある。それは知っている気配であり、いつも持っていた相棒とも呼べる物が突き刺さっている


それを抜き取る為手に取る…視界が段々と色めいてくる


意識がはっきりとし始める目の前には熊がいて周りには血の痕跡や切り離されたであろう部位が置いてあるが肝心の部分はなく熊に食べられている感じもなく切断された感じだった…


記憶を呼び覚ます、記憶の中にある熊は炎と風を操る熊だと…目の前にそれがいる


ただ思ったよりも行動が遅いと感じる…剣を大地から抜き取り一歩踏み出す


熊との間合いが一気に近づいて昔と違い明らかに踏み込んだ力が強くなっていると認識した為修正をしすれ違う様にしながら首を切りつけると熊の首は飛び熊は膝をついた後力無く倒れ伏した


あっけなく倒れ伏した熊に目を向けるが何にもそこには湧かなく弱いと感じてしまった…自分は果たして何者になってしまったのだろうと思い元に戻りたいと願ってしまった…


ふと、帰らなくてはと思い歩き始める…熊がいた場所は旧北海道で旧青森支部に行くための橋が歩いて行ける距離だった筈だ…そう思い歩き始める


歩いていく中で街の瓦礫は前に見たより酷くなっており中には血が大量にある場所がある…熊を抑えるためにここで頑張ったのだろう


しかし、あの熊の周りにはちゃんとした死体はなかったため本人は生きているのだろう…


そう言えば姿を見てないから戻った時獣だと認識されてしまってはどうしようもないと思いガラスがありそうな場所を探してみる


昔は公園だったのだろう場所のトイレ内にヒビが入って欠けてはいるものの完全には壊れていないガラスがあった為しっかりと確認はできる様だ…


覚悟を決めてガラスの前に立つとそこにはしっかりとした人間の顔があったが人間についているはずの耳がなく頭の上に犬耳が生えている事がわかった…


オルトロスの血が混ざったせいでこうなったのだろう…いよいよ人間かも怪しくなってきたな


チョーカーを確認すると78%を超えておりいよいよ人間を辞め始めたのだと思ったがまだ人間としての理性がある為俺はまだ人間として生き続けるんだ



しばらく歩いていくと橋が見え始める…帰ってきたのだと安心する


歩いていくと目の前から弾丸が飛んでくるが簡単に避けられる


その後複数弾丸が飛んでくる為剣で弾きその場で止まる…多分もう人間に思われて居ないのだと思った


もしかしたら意識が獣に塗り潰されてしまったと思い攻撃をしてくるのだろうか?


それならば武器を前方に放り投げてその場に座り込んで声を張り上げ、俺は人間として帰ってきたと言い放つ


向こう側から歩いてくる人達はこちらを警戒しており放り投げた武器を拾い上げる


「お前は本当に人間か?、それならば所属をいえ!」


俺の所属はアルテミス支部日本本部所属だ、確認しろオルトロスの血を混ぜやがってクソがってな


しばらくした後確認が出来たらしく剣を返してもらえた…


旧青森支部に入ると支部長さんがこちらに歩いてきて熊はどうなったのかと聞いてくるので熊は殺したと伝える


そうすると支部長は感謝を伝えてくる…


一つ聞きたいのだが大量に腕や足がない人が居ないかと聞くと頷きあそこまで追いやったのは頑張ったのだと思った…


明日本部に帰れるらしくこちらに輸送機を送ってくれているらしい…帰ったらなんて言ってやろうか


そう思い一晩過ごした


起きると輸送機が既に来ていたらしく乗り込み本部に帰る…


乗り込む前に再び支部長さんに感謝をされたが俺としてはあそこまで追い込んでたのはここにいる支部の人だと思うためその感謝は支部の人にしてやってくれといった


帰ると本部長がこちらに出向いてきて居た


「よくやったな、それとよく人間としての理性を勝ち取ったな…少なくともあの後死んだ様に動かなくなったから死んだと思ったがよく生きて帰ってきた」


いや、謝れよそんな事言う前に生きて帰ってくるのは当たり前だろまだ死にたくないんだからな


「オルトロスの血は他の獣と混ざると力が上がるがしばらく意識の混同が起こったり、幻覚を見始める事がわかって居た為死ぬことはないと分かって居たんだ…死ぬ覚悟は常にしてもらってなきゃ困るからあんなことを言ったんだ…すまない」


死ぬ覚悟なんてものは当に捨ててるんだよこっちは生き残る為の覚悟がなければ今は生き延びれないんだよ…だから適当言うよりちゃんといえよ



武器を再びチューニングしてもらうために仁ノ前さんに武器を預けて休むことにした…暫くは任務に出たくないのだ、心を休める必要があるからな

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