第21話ネクロマンサー




孤児院がようやく建ったよ。

運営するのは、流行病で子供と夫婦の片割れを亡くした親だ。

女性5人と男性2人が孤児院で孤児を育ててゆく手筈になってる。


料理も作ったり、悪い事をすれば叱る。


そんな孤児院の子供は、14歳以下だ。


子供には、あまり鑑定しなかったが必要に迫られて鑑定することに決めた。


あまりパッとしない恩恵だった。


手先が器用・・・将来は家具作りか指輪作りの宝飾職人が良さそうだ。

料理の才あり・・料理店のコックが良いかも。

足が速い・・・・何が良いのか分からん。


え!1人の女の子がネクロマンサーだった。

歳は15歳で、名はミーヤ。


「ミーヤは、寂しくないかい」


「寂しくないよ。だって夜には、母も父も呼べるもん」


ああ、やっぱり死んだ親を召喚してたようだぞ。

これってヤバイぞ。


しかし、1つ考え方を変えれば、ミーヤの理屈もアリかも・・・

孤児になって寂しいのは、当たり前だ。

それを呼び出せる能力があれば、誰でも呼んでしまうかも・・・


「今、出せるかい」


「昼間は、嫌がるからダメ」


ああ、心が通じるらしいぞ。





ならばモンスターを狩った中で何体かで試してみた。


森の狩場まで連れて行って、兵士がキラーラビットを打ち抜いた。


キラーラビットの死骸を見ても驚かないミーヤ。


「この死んだ死体を呼び寄せられるかな・・・」


「うん」


ミーヤの体から黒い霧のようなものが這い出して死骸に取り付く。

死骸を「ベリ、バリバリ」と剥がして骨のキラーラビットが這い出したぞ。


これが死霊使いとして恐れられる由縁だ。

教会に見つかったら殺される運命だぞ。




その夜に孤児院でミーヤの親と会った。


スケルトンでなくって助かった。


まさに、うっすらとした幽霊だよ。


これって寂しい思いがネクロマンサーを覚醒させたかも・・・

死体が無いから幽霊として呼び寄せたに違いない。


『領主様、ミーヤを助けてください。決して教会には話さないで・・・』


え!俺にも声が聞こえるぞ。

親の切実な願いが聞こえるようにしたらしい。


「分かってます。ミーヤがネクロマンサーだと言いませんよ」


『ミーヤ、夜しか会えなくてごめんなさいね』


ああ、母親の優しい言葉だ。


「おかあさん、寂しくないよ。あったかい食事も食べれるんだよ。それに学校も行って勉強もしてるから大丈夫だよ」



そんな時だ。

孤児院からフラフラと男性が出てきた。


「あ!おじさん」


「ミーヤ、そこに居るのはヤンでは・・・何故居るんだ」


『セポール・・・久し振りだな』


「そんなころを聞いてない。お前は死んだハズだ」


「おじさん、わたしが出したの・・・」


俺も呆気にとられた。

2人は、知り合いだったのか・・・これでは、隠し切れないぞ。


「もしや幽霊を呼び出したのか・・・ならば私の妻と娘を呼び出してくれ。最後は、余りにも悲惨であやまる事も出来なかった」


あああ、王都では流行病に掛かった患者で、ダメだと判断された平民は穴へ落とされて燃やしたらしい。

生きたまま燃やすなんて、残酷すぎる処置だった。


あ、ミーヤは勝手に幽霊を出してしまったぞ。


男は、そんな妻と娘に大きな声で泣きながら謝っている。


あああ、孤児院から続々と騒ぎを聞き出てきたぞ。

事情をさっするのも早く、次々に幽霊を呼び出すミーヤ。


喜ぶ者も居れば、泣きくずれに者でめちゃくちゃだよ。


分からない訳ではないが・・・



「別れはすんだようだな・・・今からミーヤを屋敷に連れて行くから、今のことは決して話してはダメだ。教会にばれたらミーヤの身が危ない。分かったな」


毎晩、こんなことになったら困るしミーヤのために連れ帰った。




それからは、モンスターの死骸を使って骸骨のモンスターを作り続けた。


「今度は、オークの死骸だ」


荷馬車から兵士によって降ろされたオーク。

眉間に弾丸のあとが残っていた。

口から舌がダランと垂れ下がってるのを見て、ミーヤは「ウフフ」と笑ってた。


「出てきなさいオーク」


その言葉に従うように、背中から骨が突き出して骨のオークが這い出したよ。

いつ見ても気味が悪い。


それなのにミーヤは、平気だ。


「ミーヤ、消していいぞ」


「帰るのよ、オーク」


骨のオークは、黒い霧となって消えていった。



ネクロマンサーの凄いのは、これだ。


好きな場所で、アンデッドとなったモンスターを召喚出来ることだ。

生前の強さより少し弱いが、数で圧倒できるのが強みだ。


あのキラーラビットの骸骨が飛び回って、モンスターを突き刺す光景を見たら驚きだぜ。

3方向から刺されたら逃げ場なんかない。



ミーヤが召喚できる数は、122体に及んでいた。

まさに死の軍団になりつつあった。


我が領土の兵士の数も増やしているが110人だよ。

すでに数で負けてた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る