第19話始めての交渉




海で飼育してるボブから連絡が来た。

モンスターの魔石を餌として与え続けたら、ドンドンと成長して100メートル級の大タコになっていた。


3ヶ月間、魔石を送る続けて労力を費やした甲斐があった。

兵士たちも喜んで協力してくれたぜ。

銃の弾丸を無料で提供したからね。

矢も得ない選択だよ。



そして港街へ変わった造船所では、帆船の数も20隻まで増えた。


毎日が訓練の連続だ。

海を知らないスラムの住民もやって来たから・・・



そして、ついに大海原へ新たな貿易をするために出航だ。


訓練を積んだ船員が大勢を乗せて出航。

3隻の帆船と育てた大タコを連れて大海原へ出た。




2日後の午後1時過ぎ頃。


「船長、タコ助が興奮してます」


「なんだと!きっとモンスターが迫ってるハズだ。総員警戒体勢だ」


大砲に砲弾が込められる。


「第1、第2、何時でも撃てます」



「すべでが撃てます」


緊張する船員。


左舷前方の水面から高く立ちのぼった水柱。

その中に大ザメが引き千切られた姿があった。


大タコの水球攻撃が原因だ。

体内の水を圧縮して撃ちだす攻撃だった。


ボブと俺が相談して、ボブが教え込んだ必殺技だ。

海面に浮かぶ大ザメを食らいだす大タコ。


「タコ助がやったぞ」


「凄いぞ。なんて奴だ」


「タコ助、俺らを助けてくれて、ありがとうなーー」


大タコの足が1本が天高く持ち上がる。


「タコ助が任せろと言ってるぞ」


船員も不安だった。

タコ助の御蔭で不安も吹っ飛んだようだ。



「今より面舵おもかじ(右)いっぱいだ。海図に載ってない航海だから気合を入れろ!」


リウス帝国が航海してない領域だ。

何があるかわからない。





4日後に陸が見えてきた。


帆船に備え付けられた小型船が海に降ろされる。

それは左右同時だ。


「フックを外したぞ」


それを合図にワイヤーロープが巻き上げられた。



その間にも2隻の小型船が島に向かって疾走。

1隻には、10人の船員が乗り込んでいた。



準備が出来た小型船が降ろされる。

物資を運ぶ船だ。



「船長が言った場所です」


「ここも前線基地を作るぞ」


「任せてください」


簡単な折りたたみ式の柵を伸ばす。

フックで固定すれば完成だ。


上陸した船員は、銃で警戒しなら前線基地の土地を確保。


物資を運ぶ小型船が上陸した時に、それは起きた。



前線基地が1000人以上の人間達に囲まれていた。

手には、槍や弓矢を持った男女だ。


着てる物も下半身を申し訳なく隠す程しかない。

それも動物の皮で出来ている。



「あれを見ろよ。上半身のオッパイを出したままだぞ」


「そんなにジロジロ見るなって」


「見るなって言ってもよ。勝手に見えるのに・・・」


「リーダー、例の薬を飲まなくて良いんですか」


「あ、突然のことで忘れてた」


「まったく、リーダーは・・・」


持っていた薬を「ゴクゴク」と一気飲みする。



「リーダー、何を感じました」


「俺達を警戒してるようだ」


「だったら友好の挨拶をしろと閣下に言われましたよね。彼らの友好的な挨拶って何ですか」


「分かった。やるよ」


リーダーは、ズボンを脱いで尻を相手に向けて「パンパン」と叩いた。


なんと向こうも全員が尻を出して「パンパン」と叩く。


「お前らも尻を叩くんだ。それも両手で、敵意がありませんって意味らしい」


「え!そんな・・・・・・」


シブシブ尻を出して叩く。



あの薬は、人食い草の魔石と草のエキスの混合薬だった。

人間が飲むと相手の気持ちが何故か分かってしまう。

そして探りたい情報も引き出せる。


人食い草は、情報で幻影を見せて引き寄せて食っていた。

凶悪な草だった。



なんやかんや交渉して草や実などを手に入てた。

その代わりに砂糖を手渡した。


ここには、砂糖のような甘いものはなかった。

だから踊りを見せられる羽目になったらしい。


それに何なのかも分からない物まで飲まされた。

一緒に来た鑑定士は、黙ったままだ。



その正体を知っていたからだ。


口で噛んで作られる酒だ。

ここで噛むのは、芋だった。


「ちょっと臭うが、美味しい酒だな」


「もっと御代わりをください」


ああ、もっと言い難い状況だ。




帰りの帆船では、酒を飲んだ船員が「ゲェゲェ」と海に吐いていた。


「なぜ言わなかった」


「友好な交渉には、出された食べ物や飲み物を楽しく食ったり飲んだりするのが基本だからね。わたしは、まったく悪くないよ」


「お前とは、2度と飲まないからな覚えてろ」


「まあまあゴンザレスの言い分も分かる。しかし、この手の交渉は難しいのが当たり前なんだ」


「船長なら飲みますか!人が噛んだ酒を!」


「え!私なら飲むよ」


「言いましたね。絶対に船長にも飲ませますから・・・」


あああ、困ったもんだ。




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