第18話偽の街




屋敷の執務室でソンとベンジャミンで1つの問題に対して話し合う羽目に・・・


それは、他の領土から商人が訪問して来るって話だ。


街には、見せてはいけない物があっちこっちにある。


10階建ての建物なんて絶対に見せられない。

それに建築に使ってる魔道重機なら尚更だよ。


ソン「今は、領主不在と言って追い返していますが、これ以上は王都に報告される恐れも・・・」


「それは、ダメだ。何かいい案はないかな・・・」


ベンジャミン「1つあります。成功するか分かりませんが」


「どんな案でもいいよ」


ベンジャミン「新しい壁を建てて昔からある壁と偽る方法です。勿論、新しい街を建てて誤魔化すのです」


「おもしろい案だ。それにしよう」


ソン「それでしたら、新しい街が出来るまで道を封鎖する必要があります。追い返す言い訳に、後日に会う事を約束すれば宜しいかと・・・」




魔道重機も増やして大通りを整備。


その大通りに2階建ての店を建てながら増やしてゆく。

店には、それらしく商品を並べる。


「薬局には、それらしく薬を並べろ!それは、こっちだ」


「磁器を持って来たぞ」


「磁器は、3番目の店だ。そっちじゃない、北側から数えて3番目だ。そこは、南側だぞ」


「ヘイヘイ、分かりましたよ・・・」



魔道具店、野菜店、磁器店、陶器店、家具店、防具店、武器店、パン店と店が並んだ。


その店には、スラム住民から人がやって来た。

年老いたじいさん、ばあさんだ。


「じいさん、この薬はいくらだ」


「薬ですか・・・いくらだったかな」


「じいさん、値段を覚えるように言ったよね」


「もう歳だからね、覚えるのが苦手なんだよ」


「分かった。仕方ないから前のビン底に値段を書いておくから、話す振りをしながら見て値段を言ってくれ」


「はいはい、わかったよ。それにしても、この歳で芝居をするとは・・・」


ああ、男は思い出した。

このじいさんがベンジャミンの詐欺の師匠だった事を。




そんなこんなで店以外の平屋の木造を建てる。


本格的な建築は、初めてのスラムの住人だ。

そんな集団も見よう見真似に張りぼての家を建てる。


外からは、立派な家らしく見せて、中は空っぽだ。


「バカ野郎!新品の木材で建てたら、ちょっと年月が経ったように汚せ!こんな綺麗なままではダメだ」


「え!俺の初仕事なのに、外見も立派に建てたのに・・・」


「文句を言わずにやれー!」



そして離れた場所に2階建ての屋敷も建てた。

ここにも偽の領主も既に住んでいる。

ちょうど俺の顔に似た15歳が居たからだ。


家族は、全員がメイドや執事役だ。

広い屋敷に住めると喜んでるよ。





なんでこうなった。

空っぽの空き家が改造されて酒場になっていた。

すでに3軒が酒場に改造されてたよ。


夕方からのオープンだ。

それに合わせるようにネオンが光って客を引き寄せる。

等身大の女性が足を上げたり、下げたりしている。

ネオンをつけたり、消したりして錯覚させる工夫だよ。


その店から音楽が聞こえて来る。

若い女性がステージで踊ったり歌ったりしてるぞ。

それを見るために男が酒を飲みながら見てる。


スラムの住人や街の住人の男が夜な夜な通う街へと変わっていった。


そして、空っぽの家々にも人が住みだしたよ。

家の中は、自分達で住めるように改造。

家族も居れば、1人で暮らす奴まで・・・


近くに店もあって便利だからだ。


偽の街が・・・それなりの街になっていた。

特に若い世代が住み着いていた。





薬局に入った太った商人は、棚の薬を見てうなった。

紛れもない上級回復薬だ。

それに見た事も聞いた事もない薬もあるぞ。


ああ、今日の目的は上級回復薬だった。



「店主、この上級回復薬は苦くないと聞いて来たのだが本当かな」


「勿論、本当で御座います。材料が手に入らないので高級回復薬は御座いませんが・・・」


「なんと高級回復薬も・・・いつ入るか分からんか」


「材料が特殊なために御答え出来かねます」


「そうか、残念だ。この上級回復薬を50本を買うぞ」


「ありがとう御座います」





屋敷の執務室。


「閣下、商人たちが田舎だと騙されて店で買っております」


もうソンは、にやけた顔だよ。

その顔から、しこたま儲けているだろうと想像できてしまう。


「それは良かった。店番たちも忙しく働いてるみたいだな、ならばそれなりの給金をだす必要があるな」


「分かっております。それから領主様の偽者に賄賂を贈る商人も・・・ちらほらおりまして・・・」


「そんな商人は、信用出来ないぞ。ちゃんと書き留めているのかな」


「抜かりなく商人の名を書いております。それにカメラで撮っておりますので、間違うことはないでしょう。後でリストにして提出します」


その者たちとは、良からぬ商売を企んでるかも・・・

王都時代の良からぬ噂を思い出したよ。


回復薬を水で薄めて販売する方法だ。

鑑定士が居なければ、販売して後で文句を言っても受け付けないからね。

だから錬金術と薬販売店は、信用ならないって評判だ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る