第14話新たな住民




屋敷の執務室でその知らせを聞いて激怒した。

あまりにも怒った気持ちを「ダンッ」と机を思い切り叩いていた。


それでも怒りは残った。


ベンジャミンも、恐縮しながら手紙を差出してきた。

仕方なく手紙を受取る。


「これが知らせの手紙になります」


内容をパッと読む。




今回の流行病は、スラムの人間が原因であった。

病気も根絶やしにしたが、同じことが起きては国の存亡に係わる。

なのでスラムの人間を貴族につかわすことにする。

流行病の迷惑料と思ってくれ。

好きなように使ってくれてもいい。


しかし、不要なら次の貴族まで旅費を与える事。

飢え死にさせては、国王の名誉に係わる。


            ラーバル王国

        通達者 宰相:ゲルマン



「なんだと!そんなことを・・・・・・」



原因をスラムの人間に押し付けて、厄介者を追い出した。

スラム街の人間は、犯罪者が多いにで有名だ。


だから貴族もスラムの人間など欲しくないに決まってる。

ならば旅費で隣の貴族に追いやるのは、決まりきったことだ。


ならば辺境領の俺が全員を面倒みる羽目になるに決まってるぞ。

とんでもないことを宰相め・・・

あ、違うな。

国王の命令だ。




俺なりに調べたら海を漂流した船を曳航えいこうしたらしい。

中の人間は死に絶えていて、海に捨てた。


そうまでして曳航したのには、訳があった。

大きな鍵の掛かった金庫だ。

その中に金銀財宝があったらしい。


その日から流行病が発生した時期が重なる。


直接関係した人物が問題だった。

王位継承第5位のミラン・ラーバルが率いる商船アルバ号だ。

本人の命令で曳航した。

そのミラン・ラーバルも死んだらしい。


「スラムの人間の数は、1万人以上って本当か」


「間違いないと思います」


この街に住んでる領民で8000人程だ。

あっちこっちの村を合わせても12000人程だよ。


この街に住まわすには多すぎる。


壁の外に田畑を作って住む家も建てよう。

ああ、集合住宅も王都にもあった。


2階建ての集合住宅は、1階、2階に10家族が暮らしてたハズだ。


ならば10階建てなら50家族。

1家族で夫婦2人と子2人と計算して200人。

1万を200人で割って50も建てたら計算合う。


「新規に建てるのは中止だ。スラムの住民が住む10階建てを50まで建てるぞ」


「あの・・・私の計算ですと魔道エレベーターの費用が係ります。4階建てにすれば魔道エレベーターも必要ありません。それに4階建ての方が建築費用も少なく建築期間も短くなります。私に任せてください」


頭の回るベンジャミンの意見は、もっともだ。


「分かったベンジャミンに任せた」




建築する土地確保に、無魔法を使って木の根っこまで引き抜く。


「ズボッ、ズボッ、ズボッ、ズボッ」と木が抜かれる。


この木も錬金術で急速乾燥だ。


もう白い湯気が木から湧き出す。

こんなに水分があったのか・・・


あれ!なんか小さな物が・・・

木に棲みついた虫だ。なんて気味の悪い虫なんだ。


鑑定結果は、木を食らう虫だと判明。


森用に持ってきた殺虫剤を吹きかける。

1回で死んだぞ。


どうやら休眠状態で助かった。


家の材料や家具に使う積もりだった。

だから虫食いの木なんて必要ないからね。


ちょっとぐらいの穴ならヨシだ。





隣のアレデ領からスラム住民を送ると手紙が届く。


手紙が来てから2日後に、列をなして人がやって来た。

それもアレデ領の兵士に見守られて・・・


あれってアレデ領へ戻らないための見張りに違いない。


過酷な旅だったろう。

着てる服や靴はボロボロだ。




ベンジャミンが魔道拡声器で言い放つ。


「スラムの皆さん、御苦労様です。私は、ベンジャミン。あなた方を世話する者です。住まいは用意してるので指示に従ってください」


言われるまま移動するスラムの住民。


案内された場所は、小麦畑が広がっていて夕日がまばゆく小麦を光らせていた。


そして4階建ての建物があっちこっちに建っていた。


「もしかして・・・・・・あそこに住めるのか」


案内してる兵士が「あそこで暮らして田畑の世話をすると聞いているぞ」


「そんな嘘を・・・」


「嘘ではない。それぞれの部屋の鍵もあるぞ」


手で「ジャラジャタ」と鳴らす鍵の束だ。



兵士は、聞き取りをしながら部屋の鍵を手渡す。

そして、人数分の食料と服が支給された。


「部屋に入ったら。この説明書を読むんだ」


「そんなの読めないぞ」


話し合いの結果、後で兵士が訪問して説明することになった。


その間は、無闇にキッチンやシャワールームに触ることは禁止だ。


兵士の訪問は、終わるのに22時までかかったよ。

ああ、ようやくスラムの住民が問題なく終わった。



それにしても孤児が多かった。

なので子供によるシアハウスをすることになった。

ああ、それと世話する者は、1階に住ませた。

毎日訪問して問題ないか見てまわるように指示。

それにしても問題が多いぞ。



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