第12話流行病




ああ、また問題が発生。


ベンジャミンが隣のアレデ領から帰って来てから、一緒にいた連中がバタバタ倒れた。

対してベンジャミンは、ピンピンしている。


薬を調合するにも見た事のない症状で、ランドールは困ったと連絡してきた。

20人中、15人が寝込んでいるらしい。


錬金術士のランドールは、ヤバイと思ったらしく兵舎の倉庫へ隔離。

接触した人は、1軒の宿屋をまるっと借りて第2隔離処置。


俺は、取りあえず宿屋へ行って鑑定しまくった。

ああ、全員が陰性で助かった。


陰は、かげや日陰って意味で病気じゃない。

細菌学的診断で、病毒の存在を示す反応がみられないって意味だ。


だから陽性ならアウトだ。


細菌やウイルスってパワーアップした鑑定で知った知識だよ。


細菌は、顕微鏡で見れるがウイルスは、見えない。

そんなにちっちゃいのがウイルスだ。


「ここに居る全員は無事だ。しかし、手洗いをしっかりするように・・・」


そう言い残して倉庫へ行ったよ。

もう心臓がドキドキだ。



あ、倉庫の中はウイルスだらけだぞ。


見える訳でないが鑑定が、その存在を感じるだけだ。


「ベンジャミン、症状は」


「最初は、食欲もなく食べ残しが・・・元気もなく咳ばかりしてました。食欲不振から8日目に倒れだして」


遠くから鑑定を試す。

ああ、たしかに重度の肺炎を起こしている。


肺で血液の成分が血管の外へ滲み出して・・・

肺に成分がたまって肺から酸素を取り込むことができづらくなるだろう。

そして呼吸が苦しくなり死んでしまう。


あ、閃いた。


モンスターの棲む森へ飛んで行って、草をブチブチと手で引き千切る。

持ってきた麻袋へドンドン放り込む。


「やっとパンパンになったぞ」


そして飛んで帰った。



倉庫前で真水を作って熱で50度まで上げる。

草も綺麗な状態で粉々して温水に混ぜ込む。

10分も経過したら紫色に変色。

熱で温めるの止めて、兵士が持ってきた薬ビンに注いでゆく。


「ベンジャミン、この風邪薬を飲ませて来い」


「え!わたしが・・・風邪が移るのでは」


「大丈夫だ。ベンジャミンの場合は、すで風邪が治った状態で免疫があるから・・・君も最初は食欲がなかったハズだ」


「そういわれば・・・」


病気に掛からなかった5人は、軽い症状で全快。

本人も気づかなかった。



20人にちょっとでも触れた人々を鑑定しまくった。

流行病は、噂になっていて関係なさそうな者までやって来たよ。


それら全てを鑑定。

終わったのは、夜の7時だ。


「ベンジャミン、きっとアレデ領も流行ってるハズだ。この薬を売って来てくれ。それと領主に薬の作り方も売ってくれると有難い」


「え!それでは、領主のミラーズ・アレデに手柄を売ってしまうのですか」


「そうだなミラーズ・アレデに恩を売るのもいいだろう。それに目立つのは嫌なんだ。その意味するものは分かるね・・・」


「なんとなく」



大量に作った薬を載せて出発するベンジャミン。



アレデ領で1000人以上が死んでた。

その隣は、1735人。

王都に近づくにつれ死者の数も増えた。

なので病気の起源は、明らかに王都だ。


そんな王都のスラム街では、もっと酷かったらしい。

腐敗した死体だらけで誰も近づかない。


本当なら焼いて燃やした方が良かった。

病気の原因が焼けてしまうからだ。


最後には、スラムの人間たちに兵士が迫って、大きな穴を掘らせて焼いたらしい。

中には生きたまま焼いた。


すべて教会の教えだった。




後で聞いた話だとミラーズ・アレデは、男爵から子爵の爵位を授かったようだ。

王都では、英雄になっている。

そんな噂で持ち切りだよ。


王都の死者1万人以上を出した流行病。

免疫力の少ない子供や老人が多く死んだ。


薬がなかっら10万人から100万人を超す恐れもあった。

国王からすれば国を救った人物だ。

名誉と金を授けることで自身の名誉の挽回をはかったらしい。

めちゃくちゃ国王の評判が悪くなったからね。


ああ、教会の評判も下がったようだ。

誰1人助けられなかったからだ。

王都に勉学させた貴族の子も死んだらしい。

もう貴族連中もカンカンだよ。



国王から貰った金貨1000枚。

ミラーズ・アレデは、すぐに俺へ金貨900枚を送ってきた。

本来もらえるハズのない人物だ。

口止め料として送ってきた訳だよ。

ばれたら大変だかね。


ミラーズ・アレデは、名誉を手に入れた。

アルト・ラストニアは、金を手に入れた。


俺は、これでいいと思っている。



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