第10話事件は現場で
「なんだと!殺人事件が起きた・・・」
「はい、早朝6時23分に通報を受けて兵士が見に行ったら死んでいました。たぶん殺しだと思います・・・死んだ者は、オッテン・ホーン45歳。発見者は妻のサンシヤ30歳と妻の兄のハント33歳です」
「犯人は捕まったのか・・・」
「いえ捕まってません。我々には経験不足で、ここでは殺人事件など起きてないので」
嫌々、それは嘘だ。
屋敷の開かずの間にあった日記には、歴代の代官の悪行が書かれていた。
殺人など日常的に行なっていたらしい。
代官の悪行を告白する者は、遅延の毒で毒殺。
病気として処理。
行方不明の人間も多いらしい。
戸籍を調べれば簡単に分かったよ。
「それで何をした」
「何とは・・・」
ああ、これはダメダメのダメチンだ。
話しぶりから捜査らしい捜査もしてないかも・・・
「死体は、現場にまだあるか・・・」
「あります」
急いで兵士を引き連れていった。
そして現場に来た。
「証拠保存や死体検視も済んだのか」
「・・・・・・」
こりゃー俺が死体を見るしかない。
「背中を何度も刺してるな。数は8ヶ所・・・めちゃくちゃな刺し方だ。プロの仕業ではない・・・ひっくり返してみろ」
「なんだ!この硬さは・・・」
「それは死後硬直だ。この硬直からピークだな・・・死後10~12時間経ってるぞ」
兵士を見る。
感心したような顔だ。
「こら!今の時間は何時だ」
「はい、9時30分です」
「計算して死亡時間を割り出してみろ」
真新しいノートを取り出して、計算を・・・
あのノートもトイレットペーパーのついでに作ったよ。
書く鉛筆も同じようにちゃちゃと作った。
画家がキャンパスに木炭で下書きするからね。
それがヒントになって、硬い黒い木炭なんか簡単につくった。
板に溝を彫って木炭の棒を入れて板を挟んでくっつける。
そして、切断したら1ダースの鉛筆の完成だ。
羽ペンで外で書くなんて大変だからね。
皆からも喜ばれてるよ。
「昨日23時30分~1時30分です」
「正解だ。それでサンシヤって女性から死亡時間に何処で何をしてたか聞いて来い。最後に被害者に会ったようすや被害者を恨んでる者も聞くんだぞ」
「はい」
「おい!血痕を踏むな・・・」
ああ、あっちこっちの血痕が踏まれてるよ。
あ!この血痕は被害者の血痕じゃないぞ。
鑑定でピンときて分かった。
持ってきた道具箱を開いて、ビンに血痕を真新しい棒で取って入れた。
きっと凶器のナイフで刺して自分の手も切ったに違いない。
手を傷ついていれば犯人だ。
有力な証拠だ。
ここに犯人が居て、血を流した証拠だ。
ようやく死体がひっくり返った。
正面には、ナイフで刺した痕はない。
手に
服のポケットをまさぐって財布が出てきた。
財布の金貨や銀貨はそのままだ。
強盗の線は、なさそうだな。
まだまだ断定はできないが・・・その線が濃厚だな。
被害者の鑑定結果は、酒を飲んでいた。
顔を近づけてもプンッと臭う。
泥酔する程ではない。
それ以外の毒は、みあたないなーー。
「君と君は、近所で聞き込みだ。23時30分~1時30分に怪しい者や悲鳴を聞いてないか聞くんだ。それに被害者や妻に関してもだ」
2人は、外に飛び出した。
簡単だが背中の刺し傷の場所をちゃちゃとノートに書く。
あ、思い出した。
指紋だ。
俺は綺麗に拭いたテーブルを鑑定。
なんか小さな渦模様が気になった。
あなたの指紋ですと鑑定結果が出てビックリした。
特殊なインクで屋敷の連中から指紋を取りまくった。
俺が作ったルーペで何度も見て確信した。
同じ指紋の者は、世の中に居ないって結論だ。
それで簡単に指紋を取る道具も作ったよ。
片栗粉をふわふわ棒でちょっとつける。
この片栗粉も黒く染めたものだ。
それを指紋がありそうな場所で優しく振る感じで、指紋を浮き上がらせる。
テープを貼って採集だ。
白い紙に貼れば指紋がばっちり見える。
指紋を取るために、わざわざ作ったテープだ。
それが何でか知れ渡って、売ってくださいと頼まれたよ。
『なんでも貼れます』のキャッチコピーで売り出したら売れに売れた。
「あ、君と君は、凶器のナイフを捨ててないか近所で探してくれ。できれば血痕も落ちてないか見るんだ」
「はい」
「わかりました」
元気に出て行ったよ。
俺は家の中を見て回った。
寝室でベッドを見た瞬間にパッと理解した。
あの男が、ここで誰かをレイプした痕跡があった。
ベッドのシーツは、ぐちゃぐちゃだ。
そのシーツに赤い血が・・・これって処女の血だよ。
妻からの情報では、夫からの暴力で実家に逃げ帰って居たらしい。
アリバイ証人は、実家の兄夫婦と子供。
妻も女の影を感じて、兄を連れて朝早くに自宅に帰って様子を見に来たらしい。
浮気現場を押さえる積りが悲惨な現場を・・・
妻が離婚するには、浮気現場を押さえるしかない。
それも妻以外の目撃証人がいるのだ。
それが国が定めたルール。
そして、凶器のナイフも見つかった。
勿論、指紋も取ったよ。
取れた指紋は、右人差し指と親指の2点だ。
それ以外こすれてダメだ。
近所の聞き込みで悲鳴を聞いて、外を見た目撃者の証言でミラーズ18歳を特定。
兵士を行かせて逮捕。
兵舎で取調べだ。
俺は、立って見ていた。
ミラーズの指紋が取られ、その場でナイフから採取した指紋と見比べる。
1人が確認して、もう1人も確認。
同じ指紋だと結論も一緒だ。
針で指をチックと刺して、血を採集。
その場で俺が鑑定したよ。
「君の指は、怪我をしてるね。現場に落ちていた血と一緒だ。」
ミラーズは、一気に白状したよ。
あんなに優しかったのに、急にレイプされたと証言。
終わった後に「お前は、俺の女だ。一生楽しませてくれ」
その言葉にカッとなってテーブルのナイフで刺した。
無我夢中で刺したので何回刺したか覚えてなかった。
これで死体を解剖する必要もなくなったよ。
体を切り刻むなんて嫌だからね。
それに夫のレイプ被害者が3人も現れた。
今、領内で話題になってるからね。
それに夫と関係のあった女性の行方不明者2人も聞き込みで判明。
きっと殺して何処かに埋めたに違いない。
ああ、判決はどうしよう。
偶発的で計画性がなかった
単独であった
被害者に落ち度があった
私利私欲のために行てない
加害者もレイプ被害を受けていた
これらを考えて屋敷で3年の最低賃金で働く。
それが俺がくだした判決だ。
ちょっと甘いかもしれない。
あ、そうだ。
今後も兵士による似たような捜査があるかも・・・
捜査方法のマニュアルとササッと書き上げた。
それを兵舎の棚へ。
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