第9話薬局




「君たちには、薬を作ってもらうからね」


「はい」


「はい、領主さま」


領内で見つけた錬金術士だ。

俺より2歳上のランドールと15歳のミチェル。

ランドールは、雑貨屋の次男。そろそろ独り立ちをする年頃だった。

今回の俺の仕事の依頼は願ったりな申し入れだったらしく喜んでいたよ。


対してミチェルは、家具屋の長女で1人娘。

なので婿を取らされる運命で、それが嫌で家出をしたらしい。

こっそり領の外へ出る直前に兵士に見つかって、俺の目にとまったって訳だ。

即、錬金術士として雇った。

親は文句など言えない。


何故ならラーバル王国では、平民の領土移動には領主の認可が必要。

『移動の心得』を無断で破ったら死刑もあり得る。



「サミーさんが生活魔法で全ての物を、クリーンで綺麗にしてくれるから」


「汚れた服もですか」


「そうだね・・・」


「わたしがサミーです。なんでも綺麗にするのでよろしくね」


サミーさんは、今年で52歳。

まだまだ元気一杯なおばあさんだ。

生活魔法の中でクリーンが得意で40年のキャリアだ。



「いいですか蒸留水とは水を沸騰させ、水蒸気を冷却して再び液体に戻した純度の高いお水のことです。不純物が無く錬金術での薬作りの基本中の基本です」


あらあら。ピンときてないようだ。

水蒸気が何なのか分かってない。


「サミーさん、鍋を綺麗にしてください。入れる水も同じく綺麗にお願いします」


サミーさんは、ちゃちゃと綺麗に・・・


いくらサミーさんでも水に混じった不純物は、きれいに取れない。

水に入り込んだ小さなゴミが、クリーンでも水の粒に当たって邪魔されている。


そんな風に俺の鑑定では見えるからだ。



魔道コンロに火を点火して水が沸くの待つ。

沸いたので鍋にフタを当てて水滴をつくる。


「水が沸いて水蒸気になり、この状況を気化と言います。水蒸気をフタに当たって冷えて蒸留水になり、これが液化です」


2人から、ため息がもれる。

え!分かってるのか分からないのか・・・



あ、最近作った顕微鏡で見せよう。


ガラス坂に水を垂らして、もう1枚のガラス坂で挟む。

顕微鏡の台に載せてピントを合わせる。


「この道具は、ものを大きく見せる道具なんだ。今の見たから分かると思うが、何もしてない水を見てくれ」


「あ!小さな粒が・・・これは、何ですか」


「それは水に入った不純物だよ。簡単に言えば小さなゴミだ」


「あんたばっかり見て、わたしにも見せなさい」


ああ、ミチェルの勝気な性格が・・・


鍋のフタから蒸留水を取ってガラス坂に挟み込む。

まだ見てるミチェルに「これを見てごらん。綺麗な蒸留水だ」


セットして見るミチェル。


「あ、全然ゴミがない」


「その水が必要だから水蒸気にする必要があるんだ。分かったかな」


「はい」


ランドールは、顕微鏡をのぞいたままだ。


水蒸気を集めて螺旋のガラス管を通って、冷やされて水になって滴り落ちる。


その蒸留水を軽量カップで2リットルを測って鍋に注ぐ。


薬草をサミーさんに綺麗にしてもらって計量器で測る。

測る重さは、500グラムから600グラムの間だ。


「いいか、絶対に切ってはダメだ。薬草にダメージを与えると品質低下になるからね」


「はい」


「はい、わかりました」


魔道コンロを点火して鍋に温度計を入れる。


「いいか温度は、50度だ。上下しなようにツマミで調整するんだ」


何回かやらせてコツを掴ませる。

50度をキープするのもコツがいるからね。


そして薬草を入れて砂時計をスタート。

時間は10分。


大きな砂時計の砂がサラサラと落ちる。


砂が落ちきった。


鍋を魔道コンロからおろす。

そして薬草を取り出す。


そして綺麗な薬ビンに注げば完成だ。

俺が作ったら高級だが、あいにく上級回復薬と鑑定結果だ。




街の一等地に薬局がオープン。


上級回復薬がメインで販売。


便秘に効く便秘薬

筋肉疲労に効く軟膏なんこう薬や湿布薬

目の疲労に効く目薬

風邪に効く風邪薬

不眠症を解決する睡眠薬

肌が若返る塗り薬

髪が艶やかになるトリートメント


ボックスティッシュ

トイレットペーパー



トイレットペーパーは、仕方なく作った。

だって用を足した後で、手て拭いて樽の水をひしゃくですくって洗うんだよ。

拭く手は左手だ。


王都の生活では考えられないよ。




なので木を伐採。

木の皮を専用機械「ガガガガガ」と削る。

残った裸の木は、大きな粉砕機で粉砕。

更に粉砕して細かくして水で洗う。

そして秘薬につけて、「ビヨーン」と引き伸ばす。


大型乾燥炉で乾かして巻き取る。

巻き取ったロールをカットして1ダースで販売。


めちゃ安い値段だ。

さもないと誰も買わない。


ボックスティッシュは、トイレットペーパーで口を拭いたり。

テーブルが汚れたらトイレットペーパーをクルクルして拭くだよ。

なんでもかんでも使いうから・・・

衛生面で問題ないが使う用途が全然違うよ。


気分的な問題で俺が新たに作った。

ティッシュを挟み込んで折るのが閃きだった。

特許申請したら丸儲けだ。

しかし、王都に発明者本人が行かないと申請は受け付けない。


だから保留だよ。


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