第7話起業




新たな建物を建てた。

建物には、『火気厳禁、魔力厳禁』と書いてある。


「この真鍮の板を小型プレスで型抜きするんだ」


「はい」


「あひ」


「次は、こっちのプレスで「ギュギュギュ」と圧を掛ける」


「はい」


「あひ」


「こっちのプレスでまたも「ギュギュギュ」と圧を掛ける」


「はい」


「あひ」


大丈夫かな・・・この親子。

この母と少女は、特別な人間だった。


平民でも魔法は、一般的だった。

その魔法は、生活魔法。


飲み水をだす

光を灯す

火を起こす

クリーンで清潔にする

ヒーリングで小さな切り傷や肩こりを治す


そんな生活魔法にも得意なのは、人それぞれだった。


だか・・・この親子には、それすらない。


一種の病気だ。

この親子にも魔力があるが、少量。

それゆえに体の中を幼い時から循環出来なかった。


そんな病気も俺には、治すことが可能だ。

しかし今、治せば魔力暴走が起きて死んでしまうだろう。

生後1年未満の赤ちゃんなら完全に治せたのに・・・



「領主様、領主様」


「あ、御免。この計量器で重さを測る。そして薬莢やっきょうに入れて、こっちのプレスで薬莢と弾丸を合体させるんだ。分かったかな」


「はい」


「あひ」


母の名は、ミランダ。

少女の名は、ミサヤ。


この領地でボロボロの小屋に住んでた。

最底辺の人と言ってもよかった。


今は、新しい家を建てたから、そこで住んでる。



銃弾って消耗品で俺は困っていた。

もう毎日が銃弾作りの連続だった。


何故なら兵士も銃を使い出したからだよ。

銃は、領地を守るには有効な手段だ。

だから兵士を集めて銃を手渡して教えた。


操作は簡単だ。狙った獲物は外さない。

当たれと願って撃てば、当たる仕組みだ。


前までは、モンスターに狩られる人間が銃の出現で、モンスターを狩る側になった。

今では、毎日森に行って狩りをしてるよ。


肉を安く売って、給金の足しにしてる。

今では、給金より銃弾が欲しいと言ってくるんだよ。


だから作ってくれる人が欲しかった。

たまたま見つけたのが、この親子だ。



それに、貫通弾を新たに作った。

モンスターの中には、硬い皮膚の奴が居るからね。


ベガタートルの甲羅も簡単に貫通するから、兵士からも人気だよ。

甲羅が硬いから高く売れるんだよ。

売り先は。ここ以外の領地だ。


ソンは、あっちこっちの領地に行って売りさばいている。

もう商人だよ。

あのトカゲも成長して荷馬車を引張っている。

大人しいモンスターになってた。


テイマーのボブが優秀だからね。


今では、ハットバードを使って郵便業を起業。

提携した領地の手紙をラストニア辺境領に集めて、仕分けして領地に配達。

ハットバードは、速く飛ぶから郵便にもってこいのモンスターだよ。

あの凶暴なハットバードが手紙を運んでるなんて信じられないよ。

なんでもソンとボブの2人で起業したらしい。




「ミサヤ、このメモを見るのよ」


「あひ」


そんな親子が微笑ましく作業してるよ。


作ってるのが銃弾なのが、ちょっと悲しいかな。




銃弾が問題なく出来るようになった。

ならば次の段階に進むしかない。



銃を大きくした物を作るしかない。


大きくなるから大砲だ。

砲弾の直径は15センチ。

あ、これぐらい大きければ砲弾の中に魔火薬も詰め込めるぞ。

砲弾の先が着弾したら先端が潰れる。

ならば潰れる場所にマナマナ草の薬を詰め込もう。

マナマナ草は魔力回復薬だ。

潰れた途端に大爆発が起きるハズだ。

威力を増すように小さな鉄球も詰めよう。




試作の砲弾をなんとか作った。


無魔法で空へ飛んでモンスターの森へ飛んだ。


ああ、「バキューン、バキュー」と銃声だ。


ここでやったら兵士が死ぬ恐れが・・・ここはダメだぞ。


もっと奥へ進む。


爆発して火事なっても困る。

川の近くで・・・あの川がよさそうだ。


持ってた砲弾を真下に手放す。


「ドガーンン!!」


なんて威力だ。

クレーター跡が直径50メートルも・・・

こんな威力ある物を作って良いのか・・・



あれ!遠くで雄叫びだ。

なんと凶悪な雄叫びだ。



あ!ドラゴン!

童話の中しか聞いてないよ。


俺は、隠れるように高度を下げる。


チラッとこっちを見て気づいたハズだ。

ちっぽけな俺が、あんな大きな音を出したと思っていないようだ。

北に飛んでいた大鳥をすぐに見てた。

そして北に向かって飛んで行ったよ。


ああ、助かった。


鑑定結果も凄い。


シュベル・ガッシーテル


HP1100

MP1200


紅蓮のブレス

言語通訳



とんでもないステータスだ。


モンスターは、2桁が普通だ。

3桁なら、めちゃ強いモンスターで軍が戦っても五分五分だ。


なのに4桁だよ。

もう災害級だ。



ここからでも存在感が半端ない。

あれ!大鳥の気配が消えたぞ。

シュベル・ガッシーテルが殺したに違いない。


本当に見つからなくて助かったぜ。





俺は、帰って大砲を作ったぜ。

あんな災害級には、大砲しかない。


ちゃんとスコープも付けた。

やっぱ、これぐらい大きくなったら抱えて撃てない。


荷馬車と一緒に移動できるように車輪を付けよう。



魔火薬を調整して爆発の音が低い物に作り変えた。

砲身の先にも音を拡散する物を付けた。


モンスターの森方向には撃てない。


空を飛んで海までやってきた。

あの小島を的にしよう。


スコープで狙いを定める。


『ロックオン完了』


『撃て!!』と魔力を込めた。


「パシュ」


情けない音がして「ドガガーン」と大爆発して小島が半壊。

あ、弾頭の魔火薬は、そのままだった。


まあ、発射場所が特定されないから「いいや」


それにしても撃ったと同時に大砲が後ろに下がりやがった。

車輪が砂に埋まったぜ。


こっれって後ろに向かう衝撃を逃す工夫が必要だ。


あ!閃いた。


モンスターの中のスライムは、物理攻撃無効だ。

大砲の後ろに付けたら、まるっと問題解決になるかも・・・


あ!屋敷のトイレに、そんなスライムが居たハズだ。

スライムは、なんでも食らうから何処の家庭でも使ってるって話だ。

まあラストニア辺境領だけだ。



出来た大砲を撃ってみた。


反動も無く、凄い発射になったぞ。

爆発の威力が砲身に向かったから、砲弾も凄い勢いで飛んで行ったよ。


大、大成功だ。



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