第5話鉄
いよいよ鉱山らしき場所へ領民の案内で行った。
ああ、遠くからでも金、銀、鉄、銅が鑑定で見える。
鉄鉱埋蔵量も半端ない量だぞ。
ここって探せば資源の宝庫だよ。
そして鉱山に到着。
足元の石も赤錆におおわれている。
「これって!鉄鉱石だ」
あっちこっちにあるぞ。
「さあ!掘るぞ」
「閣下、申し訳ありません。今回は、調査だけと思っており発掘工具は持って来てません」
「そんなの必要ないよ」
俺は、手をかざして無魔法の魔力を使って無理やり掘り起こす。
それも含有量が多い場所を掘る。
ここで錬金術の最大の見せ場だ。
錬金術の目的は、金属を金に変えること。
夢のような話で、金に変えるなんて生易しい術ではない。
その中で生まれたのが金属の精錬なんだよね。
そして、掘った石を錬金術を施す。
余分な物は、粉々になって土になってゆく。
空中に残ったのは、鉄が多く、銅、銀、金と続く。
鉄は、荷馬車に「ドシャー」とやんわりと下ろす。
「あ、入れすぎた」
やっちまたよ。
荷馬車の板バネが「ギシギシ」と鳴ってる。
「このままだと運べそうにない」
1台なら無魔法で浮かせながら運べるが、まだまだ鉄は大量にある。
なので無魔法で浮かせて、もう1台の荷馬車へ運んだ。
2台の荷馬車では少なかった。
2台目の荷馬車には、銅、銀、金を仕分けした麻袋を放り込む。
銅は3袋。
銀は1袋。
金は半袋。
もろもろな物とその他の金属を3袋。
すず(錫)鉱、アンチモニー(アンチモン)鉱、水銀鉱、亜鉛鉱、硫化鉄鉱、クローム(クロム)鉱、マンガン鉱、タングステン鉱、モリブデン鉱、ひ(ヒ素)鉱、ニッケル鉱、コバルト鉱、ウラン鉱、トリウム鉱、りん(リン)鉱。
めちゃあるが少ない量だ。
これは、後回しだ。
その中に、硝石と硫黄もあった。
あと1つが揃えると火薬が出来そうだ。
この火薬、案外使える物だが魔法があるから発展しなかった。
しかし、俺なら色々な意味でアイデアが浮かぶんだよ。
「閣下、後はどうしましょう」
あ、終わったんだ。
残った鉄は、置いておくしかない。
「さあ!帰るぞ」
帰る時も色々あった。
1番は道だ。
行きは良かった。
重い荷物がないから楽で速かった。
帰りは、重い荷物でクネクネした道だと曲がるのも大変だ。
なので無魔法の出番だ。
出来るだけ真っ直ぐで、ギュウギュウと上から押しつけた道を作った。
それでも昼を過ぎた頃に帰れた。
「ここにいる3人は、良く働いてくれたな」
「とんでもありません閣下」
1人1人に銀貨を手渡す。
「こんなにも、いただけるとは」
道案内した領民は、銀貨をマジに裏返したりして見てるぞ。
え!銀貨見るの初めて?
兵士は何度も御辞儀して、めいめいの持ち場へ帰った。
銀貨1枚は、兵士の1ヶ月給金だ。
ちょっと儲けたから、奮発しちゃったよ。
それでも安いから値上げを考えよう。
その金を領土で使って、金を回せば領土も発展するに違いない。
え!迎えに来た兵士が期待を込めた目で見てる。
あ!そうか・・・盾だ。
「分かったよ。盾を作ればいいんだな」
「閣下、期待してます」
倉庫で鉄を見ながら考えた。
軽く頑丈な盾の構造を・・・
あ、急に幼い頃に見た記憶がよみがえって来た。
なんとも不思議な光景だ。
そして記憶が止まった。
蜂の巣を見た光景だった。
あの幾何学的な巣に見入っていた。
すると鑑定が板状の正六角形にして、強度もあって材料を減らせる。
そんなイメージが脳内にながれた。
蜂の巣タイプの盾を作れって・・・
それは1つの閃きだ。
イメージするまま鉄を癒合させながら作る。
中々難しい。
それでも徐々に盾を形成して完成だ。
盾の中は、正六角形の空洞が連なっていた。
それを挟み込む形で鉄板がくっ付いていた。
見本の盾より軽すぎだ。
見本に持ってきた剣で叩いて試す。
盾は、壁に立てかけて、本気で剣で叩く。
「ガァン」と音が・・・
手が痛くなって剣を落とした。
剣の練習をサボった事を後悔したよ。
あ、盾だ。
ちょっとスジがあるだけで頑丈な盾だ。
そんな盾を10枚も作った。
ダメにした盾は、8枚。おまけでつくった。
そうだ、剣も作ろう。
両刃で肉厚の幅広の剣で、両刃の部分は45センチ。
片手で持つからグリップは15センチ。
ガードの部分には、俺の紋章で飾ろう。
あれ!紋章なんて貰ってない。
勝手に作ちゃえ。
盾を斜めにして、剣も斜めにしてクロスさせる。
良い感じだ。
ちゃちゃと作った剣。
鑑定結果は、ダメだ。
剣の形をした鉄だ。ただ重い剣。
鑑定で何をどうすれば良いのかも分かった。
熱して叩く必要があるらしい。
あ、空気を強く圧縮すると熱が発生するらしい。
そんな閃きがしたよ。
ならば無魔法で圧縮だ。
お!熱くなった。
後は連続で圧縮すればいい。
一生懸命に速く!、もっと速く!。
めちゃ熱くなったぞ。
熱くなった場所に、剣を浮かせて移動だ。
それで両刃を両方から無魔法で叩く。
これでもかと叩く。
ああ、2つを同時進行するなんて・・・めちゃ神経をすり減らす。
ああ、気合が入り過ぎて汗が・・・
魔道懐中時計は、30分も要した。
早いのか遅いのか分からん。
剣は、冷めるまで放置だ。
従来の剣を隣に置いて比較してみた。
鑑定は、切れ味の良い、折れにくい、魔力的な名剣だと言ってる。
え!無魔法が原因か熱が原因かは、よう分からん。
あれ!見本の剣より肉厚が少なく、幅も広くない。
これは、やちゃたな。
叩き過ぎた結果、小さくなたに違いない。
ならば、もっと肉厚にして幅も広くすれば解決だ。
しかし、これって兵士が欲しがるに決まってる。
見せたら最後だ。
俺が連れて来た兵と、ここで雇われた兵の剣をすべて作ちゃえ。
もう必死に剣を作り続ける。
汗はダラダラに流れ出る。
なんか、この充実感が心地よい。
え!誰かが俺の肩を揺すったぞ。
振返ったらソンだ。
「え!いつ戻って来たんだ」
「先程、戻ってきました。メイドたちが探してます」
魔道懐中時計は、18時を過ぎていた。
ああ、悪いことをしてしまったよ。
あ、昼も食べてなかった。
「この盾と剣は・・・・・・」
怪訝な顔で盾と剣を見ている。
最初に作った剣をソンに手渡す。
「これな良い剣です」
え!「ブンブン」と振り回すソン。
「これを頂けないでしょうか・・・」
「欲しいの・・・うん、あげるよ」
「ありがとう御座います」
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