第4話回復薬




俺は、屋敷に帰ってきた。


遅い食事内容は、パンとスープだ。

ああ、味気ないスープだ。

塩が少々入ってるかものレベルで美味しくない。


代行係りのソンが「いかがでしょうか・・・」と聞いてくる。


不味いは、言ったらダメだ。

美味しいも言いたくない。


「まあまあだな」


言葉を選んだ結果、これしかない。

そんな食事も終わったよ。


「俺専用の作業部屋は用意できたかな」


「こちらになります」


案内された部屋に入った。

地下室だ。

魔道ランプをつける。


良い部屋だ。ちょっとホコリぽいから綺麗にする。


ホコリは、キラキラと消滅。


「さあ、やるか・・・」


最初に使う鍋を綺麗する。


薬って不純物を嫌うからだ。

これでもかと徹底的に綺麗する。

ちょっとの油断で品質が低下する。そこが難しいのが錬金術の基本なんだ。


今の錬金術士は、誇りを捨てたダメな術士だよ。



ああ、文句を言っても仕方ない。


魔道コンロに鍋を置いて水を入れる。

普通の水じゃない。

空中にある水の小さな粒を集めてた真水だ。

3つの能力でなし得る水だ。


鑑定で水の粒を見つけて無魔法で集める。

そして錬金術で水にする。


ああ、面倒だが仕方ない。


上級回復薬なら、これしかない製造方法。


そして、薬草も空中で綺麗する。

不純物があったらダメだ。その時点に低級になってしまう。

土や小さな虫がキラキラして消滅だ。


綺麗になった部屋が汚れるのも嫌だ。


そして、薬草は切ってもダメだ。

切った途端に薬草からダメな成分が出てしまう。

薬草の抵抗かも知れない。



魔道コンロに火をつける。


温度50度になったら薬草を入れて、薬草の生命を絶つ。

これが重要なコツなんだよ。


そして、ここからが勝負だ。

ギリギリの成分が出たら火を止めるのがコツだ。

決して煮込んではダメで、タイミングが重要なんだよ。

だから鑑定を続ける。


お!今だ。

火を止めた。

鑑定は・・・・・・大成功だ。

高級回復薬になってた。

上級の更に上の高級品だ。


そして出がらしの薬草を取り出す。

あんまり長くつけるとダメになるからだ。


高級品回復薬なら足の切断でも再生してしまうレベルの薬だ。


あれ!用意された薬ビンもダメだよ。

鑑定でNGが出た。


仕方ない・・・ポワンッと綺麗にする。

そして無魔法で薬ビンに注ぐ。

ビンのフタをキュッと絞めた。


出来た高級回復薬は、52本。


「ローラー、入っていいぞ」


ドアが開いてローラーが入ってきた。


「これは、作りたての高級回復薬だ。病気でも1ヶ月は正常に戻るだろう。完璧に治すには、鑑定して見る必要がある。1本は飲ませて、もう1本は予備だ。薬の飲み過ぎも毒にもなるから気をつけるんだ。これが旅費だ」


「こんなに・・・ありがとう御座います」


え!ドアも閉めないまま出て行ったよ。

よっぽど妹を心配していたんだろう。



呼び鈴を激しく鳴らす。

駆け込んできたのは、ソンだ。


額には、汗を流して息も切らしてる。


「この高級回復薬を作ったんだが、20本を隣のアレデ領で売って来てほしい。向こうにも鑑定士は居るから絶対に売れずハズだ。強気で売ってくれるとありがたい。そうだな売り上げの3%を褒美にあげるよ」


「本当ですか・・・」


ソンは、マジマジと薬を見ている。

あれこれ思案してるのだろう。


「低い値段の場合は、売らなくて良いと・・・」


「売らなくて良いよ。この手の商売は強気でやるのが基本だ」


ドアをそっと閉めて出るソン。





翌日には、ソンが帰って来た。


え!なんで馬車が4台も連れて来たんだよ。


ふんふん、それで・・・そうなんだ。

なんとソンが乗って行った馬車が好評らしい。

それも試乗もさせて乗り心地を楽しんだ。


1台金貨5枚で改善するって約束して、持って帰ってきた。


何を仕事を増やすんだ。

まあ、金はあった方がいいに決まってる。

だけどなーー領主の俺が働くなんて・・・


「それで売った値段は」


「はい、高級回復薬1本、金貨10枚です」


金貨10枚。

教会で欠損した手を再生する癒しは、金貨15枚だ。

教会から文句が来るのを恐れての値段だろう。


ソンも中々分かってるようだな。


袋の中には、金貨200枚が入っていた。



「それで国からの支援が無くなったのは、本当なのかな」


「はい、間違いありません」


なんて奴だ。

息子をこんな辺境へ追いやって、金も出さない親なんているんだ。

せめて1年、世話してくれてもいいと思うぞ。

それが親子ってもんだ・・・・・・


ああ、むしゃくしゃする気持ちを切り替える。


薬草畑に寄ってみてビックリだ。

薬草が育っていた。


「ロバート、収穫していいか!」


「はい、収穫してください。わたしも手伝います」


収穫しや薬草を持って帰る。

薬の作業部屋で高級回復薬を63本も作ったよ。


その全てを持たせてソンに「アレデ領以外の領地に売って来てくれ」


驚愕した顔で見るなよ。

もう褒美はなしだ。

色々金が入用だからね。その中にソンの給金も含まれているんだぞ。


「領主様の御苦労も分かっております」


ちょっと諦め顔だ。


だから馬車もちゃちゃと魔改造した。

それに汚れの目立つ部分も綺麗したよ。

文句を言えない出来上がりなっているぞ。


頼まれた以上の仕事までやってやったぞ。


そんな魔改造した馬車を連れて、ソンはアレデ領へ行った。

馬車を手渡して他の領へ回復薬を売り込む手はずだ。



ああ、ソンが買ってきた種で田畑を作ろう。

食料を他領から買うなんてNGだ。

領民が食べる食料は、領土で作るのが当たり前だ。



「ロバート、ロバートは何処だ」


「閣下、お呼びでしょうか・・・」


「これが種だ。俺が土地を耕すから育ててくれ」


「わかりました」



木を「ズボッ、ズボッ」と無魔法で引っこ抜く。


そして土を「グシャ、ベシャ」と耕す。

我ながら良い仕事が出来た。


ロバートは、種を撒いている。

後はロバートに任せれば大丈夫だ。



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