第3話薬草栽培




「ドンドン」とドアを叩く音で目覚めた。


「入っていいぞ」


入って来たのは、ボブだ。


「閣下、卵がかえりました。もう可愛いのなんの・・・」


ああ、親バカだ。


ボブの魔力を食ってるのも知らないようだ。

このボブは、めちゃ大量に魔力を持っていた。

60のトカゲを育てても死なせる事はないだろう。


俺も、そんな無茶な命令なんかしない。



おいおい、ポケットのトカゲを見せてきたよ。

嫌々、子トカゲだがブサイクな顔だな。


「クエー、クエー」と鳴いてる。


ボブは、トカゲの口に指先を・・・ああ、吸ってるよ。


「可愛い奴だ」


嫌々、魔力を吸ってんだよ。

幻滅させたら悪いから黙っておこう。


「あ、忘れていました。馬車や荷馬車の改造を頼まれていました」


今、それを言うんだ。


服を着替えて出かける。

汚れてもOKの服だ。


代行係りのソンが「そんな姿で表に出てはなりません」と言われたが無視だ。


俺には、汚れ仕事が待っている。





兵士の訓練所。

その広い場所に、馬車や荷馬車が待っていた。


馬車3台。

荷馬車13台。


これがラストニア辺境伯の財産であって人をの輸送と物流だ。

情けない程の規模でしかない。

ここで弱音を吐いてる場合ではない。



ボロボロの盾とまだまだ使える盾も仕方なく使う。


樽の中には、ラード油が入ってる。


「ブクブク草は、何処だ」


「は、只今御持ちします」


ああ、持って来た荷馬車の上にあった。

これが無いと潤滑油が作れない。


粘度が高く流動性が低いため常温では半固体。

そんな性能がベアリングにちょうど良いんだ。



そして、この手の点検と保守をする人物も選んだ。


ただ立っているマルコとローラー。


ローラーは、ただ1人の女剣士だ。

気性が激しいの悪い点だ。


対してマルコは、ここ出身の平民兵。

本格的な訓練もまだまだで身分も訓練兵のままだ。



「2人で点検や修理も出来るように頑張ってくれ」


「閣下、申し訳ありませんが私は剣士です。このような雑用なんか出来ません」


ああ、悪い癖が出たよ。

怖いって気持ちは無いのか・・・


「ローラーは、剣士としても立派な能力を持ってる。しかし、この手の能力は抜群なんだ。俺の鑑定を信じろ。マルコも同じだ」


「私たちを鑑定したのですか・・・国法に背きますよ」


「こんな辺境で国法なんか意味はない。それだけ期待してるぞ。それに収益が上がったら給金も上げると約束しよう」


ローラーには、病気の妹が居るんだ。

教会の御布施が高いから、効き目の薄い痛み止めの薬で我慢してるらしい。


なんだか死に向かってる話だ。


「ローラー、妹をここに連れて来い。病気を治してやる」


「え!・・・貴様、話たな!」


怖い顔をして仲間を睨んだ。


「ローラーも見たハズだ。臭いにおいもしない薬でモンスターを撃退した俺の実力を、ならば妹の病気も俺が治せないハズがない。もう治す薬も考えてるぞ」


キッパリ言ってやった。

ローラーを鑑定した時に、妹の事ばっかり考えていた。

だから症状もなんとなく分かった。

鑑定の不思議な能力だ。

だから病気も治せるレベルだ。


あ、回復薬を作って手渡そう。

旅の途中で病気で死んだら困るからな。

俺の責任になるのは、御免だ。


下手したら殺されるかも・・・



「分かりました。閣下にすがるしかありません。どうか妹を治してください」


「マルコは・・・」


コクリとうなずいた。



やっと魔改造に取り掛かる。


馬車を無魔法で浮かべて、次々に軸に車輪に軸受けを取る。


そして、ササッとパーツを作って合体だ。


「マルコ、ベヤリングに潤滑油を塗りたくれ。手の汚れなら気にするな」


浮いた馬車の下に恐る恐る行って、ビンの潤滑油を手で取って塗りたくる。


「それぐらいで良いぞ」


戻って来たらカバーを付けて終わりだ。


そんなこんなしてたら昼になった頃に全てが終わった。


錬金術を使って俺とマルコをパパッと綺麗にする。

ああ、汚れを取るなんか簡単だよ。


マルコは、手や服が綺麗になったことに驚いている。





「ローラーの妹のためにモンスターが居る森へ薬草を取りに行くぞ!」


「わたしもついて行きます」


そして、城門からモンスターの棲む森に荷馬車で出発だ。


無魔法で乗ったまま荷馬車を走らせる。


邪魔な木は、根っこから引き抜く。


あ、あった。

飛び降りて薬草を根から引き抜く。

こっちにもあるぞ。



そんな俺の後ろでローラーは、剣を抜いて警戒している。

もう緊張した顔が怖いぞ。



そして麻袋は、パンパンになったので帰る。


「ブヒー」と叫びながらオークが飛び出してきた。

こっそりと忍び寄って襲うとは、大した奴だ。


しかし俺は、手の平をかざしてオークを空中へ浮かせる。

ジタバタしても手遅れだ。

首を「ボキッ」と折ってしまう。

ああ、口からよだれを垂らして醜い面だな。

そのまま浮かせて荷馬車へ放り込む。


あ、血抜きだ。

解体が得意な兵士が、オークを前にして文句をタラタラ言ってた。


「首を切って血抜きをしろよーー、肉が台無しだ」


「内臓も取れよ」


だからオークを浮かせて荷馬車の外にだす。

首の頚動脈を浮かせたナイフで切る。

滴り落ちる血を見ながら、腹も切って内臓をドバッと取って完了だね。

このまま浮かせて「帰るぞ」



城門に入って終わりではない。


オークを留守番してた兵に手渡した。


「今日も御馳走だな」と喜ぶ兵士。



「ロバートは何処だ」


「ここに居ます」


「ロバートは、鑑定で植物魔法を持ってる。だから薬草を育てる係りだ。今後は、食べ物も育ててもらうからな」


「え!・・・」




前回伐採した所まで行って、無魔法を発動だ。。

土をグニャグニャにかき混ぜる。


そして取ってきた薬草を植えて「ロバート、水をやってくれ」


「命令を受け堪りました」


健気にジョウロで水をやってる。


水の中には、窒素、リン、カリウムが自然に入ってくる仕組みだ。


土を鑑定した結果、3つが不足だと分かった。

なので、ロバートに頼んだ。


これも植物魔法の不思議な現象らしい。

勝手に不足した栄養を補給出来る。

本人もまったく気づいてない。


薬草は、ドンドン育って増えるハズだ。

そして回復薬を作って売りまくる。

今の回復薬は、クソなんだ。

製造方法がダメダメでなってない。


薬草を煮込み過ぎて回復成分が蒸気と一緒に空中へ。

だから教会の癒し魔法に負けるんだよ。

知らんけど。



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