新しいアプリは魅惑

 新しいアプリが入荷されたらしい。今俺が持っているのは、銅の座布団九枚に銀の座布団が二枚。早速スマホをチェック。

(まあ、座布団も沢山あるし、大丈夫だろ……これはマジか?)

 

ジュエルエンブレムパワーアップ 銀の座布団一枚

召喚能力            金の座布団一枚

ネットショッピング       銀の座布団五枚


NEW

魔法強化 各銅の座布団一枚

治癒魔法 銅の座布団一枚

初級 擦り傷を治せます。これで猫にひっかかれても安心。動物って人の本心を見抜きますし、取っておいて損はないですよ。

 ……確かに前世でも犬に良く吠えられていたもんな。


消毒魔法 銅の座布団一枚

 傷を治す前には消毒が必須。毒の強さに比例して使う魔力も上がります。注 君の心の毒は消せません。

 確かに、心の中で良く毒づいているけどさ。


虫刺され防止魔法 銅の座布団一枚

 世界には色んな毒虫がいます。でも、これがあれば安心。注 君に寄って来る悪い虫はいないですもんね。

 消毒魔法と被っている気がするけど、蚊やダニって刺されても気がつかないもんな……姉ちゃんの一にらみで女子の誘惑はなくなりました。まじで俺を好きだった子はいないのか。


靴擦れ防止魔法 銅の座布団一枚

 これから旅をすると思うの、必須ですよ。とっておく事をお勧めします。

 今回の説明文はシンプルだけど、これは必用だと思う。なんだかんだで、徒歩の移動が多いんだし。


シャワートイレ魔法 銅の座布団一枚

 これは私からのサービスです。日本人の徹君なら、喉から手が出る程欲しいでしょ?今なら温水洗浄と温風機能もつけちゃいます。

 がちで欲しい。 こっちの世界では用を足した後、葉っぱや藁でお尻を拭く。王侯貴族は布を使うけど、ごわついて痛い……もう我慢の限界なんです。



バイク魔法 銀の座布団二枚

 これは凄いですよ。バイクで移動出来るんです。しかも、亜空間に専用の道路が出来るので、事故の心配もありません。チートでしょ?

 確かにチートだけど、俺オートマの免許しかないんですが。


結界魔法 銀の座布団二枚

 野営には必須ですよ。これがあれば、狼や盗賊に襲われる心配もなし。お外で用を足す時も安心ですよ。 注 臭いはこもりますので、気を付けて下さい。

確かに外で大きい方をする時って、危険だよな。


宿屋への扉 条件を満たしていません。


得場意通うばいつ注文魔法

 ウバイツ、その由来は、古代中国明の時代に由来すると言います。弐部の武将、得場・意通は飢えに苦しむ仲間の為に、温かな料理を戦地に届け戦意をあげて、勝利に導いた言います。

六明書房刊『徹君、転生する三年前のイブに二人分の食事を頼んで、一人で食べていますけど、何でですか?』 より

おにぎり一個 銀の座布団二枚

味噌汁一杯 銀の座布団二枚

 元カノにドタキャンされたからですっ!なんで、俺の過去を知っているんだ?


「こんなの……こんなの俺一人じゃ決められる訳ないだろっ!なんて残酷な」

 便利な魔法も、沢山ある。各属性強化に虫刺され防止。今後、必須になる物ばかりだ。

 問題は得場意通魔法だ。なんか昔の格闘漫画〇塾に出て来そうな無理矢理な当て字。そしてかなりのぼったくり価格。どう考えても座布団を減らす為の罠だ。

(でも、海外でも和食は高めだったりするし……今まで頑張ったご褒美って考えれば)

転生したとはいえ、俺の根っこは日本人。体がお米を欲しているのだ……とりあえずシャワートイレ魔法は絶対に取ります。


「だったら私が決めてあげる。まさか貴方、異国のスープを選ぼうとしていないわよね」

 圧倒的なプレッシャーを感じたので、振り返ってみると……そこにいたのは敬愛するお姉様。目が笑っていません。


「姉ちゃん!?な、なにかあったの?」

 落ち着け、俺。姉ちゃんは座布団システムの事を知らない。上手く言いくるめて、おにぎりを食うんだ。


「師匠から連絡があったのよ『トール君にパワーアップシステムを授けました。悩んでいると思うので、助言してあげて下さい。もちろん、貴女にも分かる様にしていますよ』って……異国の聞いた事もない食べ物じゃなく、きちんとパワーアップしなさい!」

 久しぶりに特大級の雷が落ちました。聞いた事もない食べ物じゃなく、俺のソウルフードなんですが。

 ちなみに姉ちゃんには、クッションシステムと伝わっているらしい。


「ちゃ、ちゃんとパワーアップするから……でも、全部有用なんだよね」

 魔法を二段階上げるか、それとも他の魔法選ぶべきか……迷う。


「先に言っておくわね。これ、私にも適用されるんだって。虫刺されや消毒って、そんなに大事?」

 この辺は知識の差だと思う。日本人としての知識がある俺は、虫刺されの怖さや消毒の重要性を知っている。


「その二つは絶対に覚えるよ。下手すれば命に関わるからね」

 各属性強化と治癒魔法・虫刺され防止・消毒魔法・シャワートイレ魔法は確定だ。


「シャワートイレ魔法なんて訳の分からない物覚えてどうするのよ?無駄遣いしないのっ!」

 姉ちゃんは、今こそ伯爵令嬢だけど、元は農家の娘。贅沢を嫌い、無駄遣いに厳しい。

 ゲームでの浪費癖が嘘の様です。


「これは凄い魔法なんだって!絶対に姉ちゃんも癖になるから」

 上目遣いで姉ちゃんに懇願する。


「全く……属性強化は絶対に取りなさい」

 流石は姉ちゃん、話が分かる……良く考えたら、三十路のおっさんが女子中学生に甘えているんだよな。


今回手に入れた物

属性強化 銅の座布団四枚

治癒魔法・消毒魔法・虫刺され防止魔法・シャワートイレ魔法・靴擦れ防止魔法 計銅の座布団五枚

結界魔法 銀の座布団二枚

 残り銀の座布団一枚

 ……ネットショッピングいつ使えるんだろ?


「凄い……土属性と水属性の魔法が使える様になっている」

 ジュエルエンブレムを持っていても、使える属性は一つか二つだ。姉ちゃんが使えたのは火と風……四属性使えたのが、俺のイニシアチブだったのに。

 そして姉ちゃんもシャワートイレにはまりました。


 オークを倒した報酬は薬師の紹介だった……筈。


「本日付で教会から派遣されてきましたチャラ・イケメンす。製薬のスキルは三級を持っています」

「同じくナル・シーストです。製薬スキル四級を持っています」

 やって来たのは、オークから助けた騎士でした。体の良い厄介払いだと思う。


「三級と四級か……うちの店やと見習い扱いやで……トール、ええのか?」

 どこで嗅ぎ付けたのかリベルもやって来た。ちなみに騎士二人は年下のリベルに好き放題言われているけど苦笑いするだけ……どうやら、あの時は俺を偽物だと思っていたらしい。


「構わない。うちで働く条件はただ一つ。見た目や出自で相手を差別しない事……それが守れるなら、ついてきて下さい」

 二人が頷いたのを見て、歩き出す。

 向かったのは、農地の隣にある草原。


「こんな草むらに来て、なにするんや?」

 甘いな、リベル。見方によっては、金が落ちている様なもんだぞ。これある意味テストなんだし。


「凄い……ビタークリセンマムが群生している」

「他にも薬草が沢山生えている……もしかして、ここは薬草やハーブの畑ですか?」

 二人共、合格だ。そう、俺は植物図鑑をフル活用して、薬草畑を作っておいたのだ。


「わざわざ採集依頼するの、もったいないですからね。ここの薬草を使って薬を作って下さい。うちの領民で手先が器用な人間を配下に付けます……リベル、薬を店で売ってもらえるか?」

 家で独占しても良いけど、信頼性が薄いからあまり売れないと思う。でも、キャナリー商会のお墨付きなら話は別だ。


「二人に聞きたい事がある。ここの薬草の質は、どないや?」

 リベルの目つきが変わる。流石に直ぐには、オッケーは出してくれないのね。


「上質な物ばかりです。これなら多くの人を救えますよ」

 そりゃ、そうだ。きちんと管理してるから、上質で均一な薬草が取れるのだ。


「トール、なんでわざわざ野菜畑の隣に植えたんや?」

 それに気づいたか。内緒にしておきたかったけど、リベルは主要攻略キャラ。仲を深めておく必要がある。


「ビタークリセンマムみたいに匂いが強い物を植えておくと、害虫が寄って来にくいんだよ」

 お陰で野菜の収穫量も増えました。

(なんかリベルの反応が変だな)

 薬草を見てから、口数が少なくなった気がする。


「あの時、これがあったら……よっしゃ、商談決まりや。稼がせてもらうで」

 リベルって、辛い過去があった筈。ちゃんと覚えておくんだった。

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