やる気アップ?
今回持って行く物
鉄の剣 銅の槍 油を入れた竹筒 電気符 昼飯
どうせ経費で落とせるんだから、もっと高い物を買おうかと思ったんだけど、討伐に失敗したら請求が出来ない。だから、今回は節約志向です。
オーク戦の反応は様々であった。
爺ちゃんや父さんを筆頭に、城内の男性陣は肯定派が多い。
「オーク?あいつ等は、力が強いだけで動きは単調だ。ト―ルなら大丈夫だよ」
父さんに相談したら、心配し過ぎだと一笑にふされました。
ジェルエンブレムを持っていれば、オークに苦戦する事は少ないらしい。でも、パパン、俺のジュエルエンブレムは紛い物なんですが。
「ト―ルも実戦デビューか。少し早い気もするが、お前なら大丈夫だ。神官長には、儂から釘をさしておく」
以上、お爺様からの有難いお言葉でした。ちなみに。貴族の子弟が本格的に魔物狩りを始めるのは、殆んど高校生になってからだ。
これはジュエルエンブレムの顕現時期も関係していると思う。でも、俺は師匠に移植されて小学生で顕現している。
肯定派は、遅かれ早かれ実戦デビューするんだから、今の内に慣れておいた方が良いって意見が大半だ。
「ト―ル、ハンカチは持った?ポーションは?誰かエーテルを持ってきて……まだ中学生なのに、実戦なんて早過ぎよ」
母さんやメイドさんは否定的って言うか心配しまくり。そりゃ、そうだ。ジュエルエンブレムがあるとは言え、俺はまだ中学一年生。しかも見た目的にアムール様の加護には期待は出来ない。
「お前、大丈夫か?ジュエルエンブレムを持っていても加護ないんだろ……いざとなったら、俺達が庇ってやる」
そして反対派は、同じ村から来た開拓民の人達や元貧民街の皆。基本、彼等は貴族を嫌っている。農民も貧民街の人達も、貴族の横暴の被害に遭ってきた。
何よりフツメン仲間であり出資者である俺への同情心もあると思う。
そして……
「ト―ル、貴方チューノさんにも負け越しているのよ。オークに勝てる訳ないでしょ!お姉ちゃんが付いて行ってあげようか」
なんだかんだで一番親身になってくれるのは、姉ちゃんな訳で……今になって思う。ゲームの
「大丈夫。対策は、きちんと建てたし。絶対勝つよ」
負けたら死ぬ可能性が高いし。
「無傷で帰って来なかったら、許さないからね。ほら、寝ぐせついてるわよ。もう、幾つになっても手が掛かるんだから」
姉ちゃんは、そう言うと優しく笑ってくれた……前世も合わせると四十年以上生きているんですけど。
◇
馬車に揺れて目指すは王都北西部にある神官長の領地。今回の御者は爺ちゃんと本人の希望で二コラさんがしてくれました。
「ちょっと疑問に思ったんですけど、神官なら部下にパラディンとかいるんじゃないんですか?」
そして何でわざわざ俺を選んだのか?色々釈然としない。
「おりますが、殆んど神殿建設に携わっております。本人の熱烈な希望だそうで」
アムール教の信者にとって、神殿建設に関わる事は凄く名誉な事らしい。神官長という立場上、部下の希望を無下に出来ないそうだ。
何よりジュエルエンブレム持ちの人間は大規模な建設に欠かせないらしい。大きな石も持てるし、整地も楽々行える。早い話は重機代わり。神官長にとって民の安寧より、神殿建設の方が大事って事だ。
「それでも四割は動かせるんですよね?しかも、たいして仲も良くない俺に頼む理由が分からないんですよ」
調査をしてくれた二コラさんなら、何かを掴んでいる筈。
「主な理由は二つあります。騎士を派遣させたらしいのですが、オークが現れずに失敗。もう一つの理由はレイラ様とト―ル様への嫌がらせらしいですよ」
俺達が来るまでは、王子の信頼を一心に得ていた。そうは言っても、ただのごますり。実務に強い俺とリベルが入った事で窓際族へ。
しかも、普段は靴もメイドに履かせてもらっている様なお嬢様方だ。身の回りの世話で姉ちゃんに敵う訳がなく暇になったと。
「思いっきり逆恨みじゃないですか!」
こちとら何十年も事務仕事をしてきたんだぞ。中学生のお嬢様に負ける訳ないだろ!
「でも一番の理由は、討伐対象がオークだからでしょうな。オークは忌み嫌われているんですよ。近づいただけで穢れが移ると言われていますので……もう少しでつきますよ」
神官だと三日は神殿に入れない決まりだそうだ。何より素材が取れずに旨味がない。
◇
今から断っても許されると思う。これが日本だったら、ネットでフルボッコにされているぞ。
「自然破壊ってレベルじゃねえぞ。どう見ても自業自得じゃねえか!」
かなり大規模な工事だとは聞いていたけど、ここまでだとは……山の木は全て伐られ、オークどころか小動物すら住めなくなっている。
オークは、最初餌場を潰されたから畑に来たんだと思う。でも、山を降りて来たら食べ放題な畑があったと。
「お静かに……ここで神殿建設への否定的な言動はまずいですよ。私はもう少し探りをいれますので、ト―ル様は待ち合わせ場所へ行って下さい」
普通、中学生位なら保護者が同伴すると思う。でも二コラさんは、俺の
ちなみに待ち合わせ場所には、一度討伐へ行った騎士が来る手筈になっている。
◇
地図アプリを起動させながら、待ち合わせ場所へ移動する。
(まさかあいつ等じゃないよな)
そこにいたのは、フルアーマーを着た騎士。しかも、ピッカピカに磨かれた鎧である。なんか鳥の羽とかでかざっているし。
でも、兜は被らずに、すました顔で立っているんだよな。イケメンで絵になるのが、余計に腹が立つ。
(オークが金物を嫌うのを知らないのかよ。あいつ等、鼻が良いから逃げるに決まってるだろ)
いや、俺もあいつ等に近づきたくないけどさ。
「貴方がト―ル様ですね。お嬢様から話は聞いております。まずは馬車に乗って下さい」
イケメン騎士は俺と一緒にいる所を見られたくないのか、そそくさと馬車に誘導してきた。
「そうですけど……前回の討伐の時も、そのお姿だったんですか?」
藁にも縋る思いで聞いてみる。お願いだから否定して。
「ええ、俺達の美しさに、オークも恐れをなした様で姿を現しませんでした」
おじさんは若者の根拠のない自信に恐れをなしています。
(この世界で見た目の良さが、実力の証明なっている。勘違いしてもしょうがないか)
「その点ト―ル様なら……何かあったら俺達が助けますので、安心して下さい」
俺はおとりかいっ!言外に不細工扱いしているし……まあ、事実なんですけどね。
◇
さっきまでやる気は霧散していたけど、現状を確認して復活した。元農民として、この惨状は見逃しておけない。
畑は無残に踏み荒らされ、作物は食い散らかされている。ろくに飯を食べていない様で、村人達は瘦せ衰えていた。
「さて、切れ者と名高いト―ル様はどう動くのですか?」
人を小馬鹿にした嫌な笑みだ。人目がなくなって安心したのか、騎士が素の顔で話し掛けてきたんだと思う。
「すいません。誰か野良着を貸してもらえますか?それと、これは私の昼ご飯なんですが、良かったら子供達に食べさせて下さい……お前等は馬車に引っ込んでろ。金属の臭いを警戒してオークが近づいて来ないんだよ」
騎士達が引きつった笑顔になっているけど、無視。おじさんは農作業をしながら、オークをおびき寄せます。
勝てるか分からないけどねっ!
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