オーククエストは無茶振りみたいです
オーク、剥製でしか見た事がないけど、まともに戦って勝てる相手じゃない。
見た目まんま二本足で歩く猪だ。
ゆうに二メートルは越す身長。丸太の様に太い手足。多分殴られたら一撃でお陀仏だ。
人間は、普通の猪に素手で勝つ事はほぼ不可能だ。罠を仕掛けるか、弓や鉄砲があって初めて互角……何か策を練らないとまずい。
(クエストを受注とか言っていたよな……まじ?)
掻くふりをしながら、右乳首にそっと触れスマホを立ち上げる。
クエスト 修行の成果を見せろ
内容 オークを倒して、修行の成果を見せて下さい。ですのでストーンクリエイトや助っ人を頼む事は禁止します。
……師匠、無茶振りが過ぎます。でも、受けてしまったから撤回は出来ない。
報酬 オーク一体につき銅の座布団三枚
これ大きい。植物図鑑や設定集は手に入れた。残るは……
召喚能力 金の座布団一枚
ネットショッピング 銀の座布団五枚
ジュエルエンブレムパワーアップ 銀の座布団一枚
魔物基礎知識 座布団一枚
今持っている座布団は一枚。先に魔物図鑑を手に入れるべきか。
「オークはいつから出没する様になったんですか?」
今必要なのは、何より情報だ。俺の持っている知識では、オークは人里離れた森の中に住んでいる。畑に出る様になったのには、切っ掛けがある筈。
「三か月前ですわ。あんな汚らわしい魔物が我が家の領地にいたなんて……いいえ、これもアムール様が私に下さった試練なのですね」
神官長の娘はそういうと厳粛な顔で頷いた……いや、試練丸投げですか?
「貴方の領地に教会を建てた時期と同じね。それでト―ル君に払う報酬はちゃんと用意しているんでしょうね?他家の……しかも伯爵家の孫に頼むんだから、無償って訳にいかないわよ」
流石にヴィオレ先輩。俺からは聞きにくい事を聞いてくれた。
「人々の……民の笑顔こそが報酬だと思いませんか?」
思いません。その人達は、うちの領民じゃないし。
「ト―ル、断りなさい。貴方がオークを倒せば、確かに領民に笑顔は戻るわ。でも、それは領主様の信頼が損なわれるのと同じなの。無礼にあたるわ」
流石は
ゲームでのレイラ・ルベールは、普段は強気で高圧的な性格。でもピンチにや修羅場になると、テンパりまくる性格だった。
でも今は普段はおしとやかで誰にでも優しい(俺を除く)性格。しかし修羅場になると、歴戦の勇士へと変わるのだ。
「ひいっ!でも、お金以外なら何とかします」
哀れ、神官長の娘涙目。分かるよ。姉ちゃんがち睨みは、まじで怖いもんね。
(神官長は俺に助けを求める位、切羽詰まっている。多分、教会建設で懐に余裕がないんだろうな)
普通なら金を積んでお願いする所だ。それが出来ないから、俺に白羽の矢をたてたと。
「お金は必要経費だけで良いですよ。報酬は製薬のスキルを持っている神官を派遣してもらえれば、オッケーです」
現金関係になれば領主や官僚も絡んでくる。そうすると、かなり面倒な手続きが待っているのだ。
なにより今後クラック帝国との戦争になる可能性が高い。製薬技術は喉から手が出る程欲しいのだ。
「ト―ル君、その手の話は商人を絡ませた方がええでー……一人で儲けるのはなしやで」
話を進めていたらリベルがしなだれ掛かって来た。キャナリー家は自由と商売を重んじている。
多分、俺の言動からもうけ話を嗅ぎ付けたんだと思う。
「分かったよ。後から協力してもらうから、まずは離れろ」
これだけ言って逃亡エンドは笑えない。虎の子の座布団を使って、魔物辞典をダウンロードしておこう。
◇
今から違う国に亡命しようかな。無事に魔物辞典はダウンロード出来たし、問題なく使えた。
魔物辞典 監修いつも優しいロッキ師匠
オーク
旧獣人類。雑食で攻撃性が高い性格です。力も強く、知能も高いですよ。
日本人の徹君に分かりやすく言いますと、知能は小五レベルで、力はゴリラ並みだと思って下さい。
そして性格はDQN。畑に来た理由は色々ありますが、簡単にいうと楽に美味しい物が手に入るからですね。
それとオークは、3から5の小集団で行動しています。漫画やラノベみたく、友好関係は築けませんよ。
さあ、一人でオークを倒すのです!
PS・オークさんも生きている。棲み処を守れば、人間に危害を加えないよ。だって、同じ世界に住む仲間だもん……そんなお花畑な事を言っていたら、確実に殺されますよ。
詳しい説明ありがとうございます。弟子としては弱点とかも、教えて欲しかったんですが。
こんなの相手に罠なしで戦えと?
(肝心の俺の実力は……)
剣技 姉ちゃんや二コラさんに全敗。槍や斧を使っても勝てません。
魔法 初級攻撃魔法なら光と闇以外全部使える。でも、殺傷能力は皆無。
ファイヤーボール 肉を生焼けに出来る位
ストーンバレット 一ミリ位の木の板なら貫けます
ウオーターバレット 厚紙なら貫けました
ウインドカッター 細い枝なら斬れます
結果、オークに致命傷を与えるのは無理と……がちでどうしよう。
(魔法と武器を組み合わせて戦うか)
色々と組み合わせを考え行く。
「ト―ル様、失礼致します。ご明察の通り、オークが里に降りたのは教会の建設が切っ掛けですね。オークの棲み処を壊して民に被害を及ぼす等、為政者の風上にもおけません」
流石は二コラさん、たった数日で調べ上げてくれました。
教会は山を丸ごと使った物になるらしい。
「しかし、なんで今更そんな教会を建てる必要があるんですかね?王都に立派な教会があるって言うのに」
異世界転移したとは言え、俺の根っこは日本人だ。だから、この世界の主神であるアムールに対する信仰心なんて欠片もない……愛と美の女神なんて、俺には無縁な存在だし。
「神官の修行場兼信者の結婚式場にするつまりらしいですよ。しかも。かなり贅を凝らした物になるのだとか……きっとアムール様も失望されますよ」
アムール教の教義である美しさの捉え方は、様々だ。神官長の様に見た目の美しさに重きを置く人二コラさんみたく行動の美しさを大事にする人。
でも、この世界の人間……特にジュエルエンブレム持っている人はアムールを崇拝している。それは二コラさんも一緒だ。
だから『俺、無神教なので。アムール教とか興味ないっす』って言うのは、ガチでアウトらしい。
「修行場はともかく、そんな豪華な結婚式場なんて元をとれる程の需要はあるんですかね?」
信者の寄付と税金で建てるみたいだけど……そんな所で結婚式を挙げて離婚したら、大恥だぞ。
「リヒト様のご結婚に使うという名目で、国からも多額の補助金が降りています」
思い出した!その教会知っている。姉ちゃんが主人公に『
って自慢するんだ。でも、結婚式を挙げるのは主人公な訳で……。
「同じ生徒会にいるから娘にもワンチャンあると思ったんですかね?すいません、キャナリー商会に鉄の剣と銅の槍を発注してもらえますか?」
教会建設は我が家とは無縁。まずはオークを倒してやる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます