ルートに乗ったのでは?
リバーシーって良いよな。挟まれたら、変われるんだもん。
「そういや、自分等は部活どうするんや?」
最近、フォルテだけでなくリベルとも話す事が多くなった……正確に言うと殆んど三人でいるのだ。
主要攻略キャラ二人がいると、必然的に女子の視線を集める……おじさん、美少年二人に挟まれて肩身が狭いです。女子の視線が冷たい。邪魔者が、混じっていてごめんね。
リバーシーみたくイケメンに挟まれたら、俺もイケメンになれればいいのに。
「僕はサッカー部に入りたいけど、トールは剣術部で確定だもんね」
フォルテが悪戯っぽい笑顔で話し掛けてくる。ギャラリー女子のテンションうなぎ登り……今『私と変われブサイク』って言ったの誰だ?おじさんは陰口に敏感なんだぞ。
「優しいお姉様が入学前に入部届けを出してくれたよ。今日から部に来いってさ」
監視兼練習相手との事。ジュエルエンブレム持ちで元からスペックが高い上に、師匠の特訓で姉ちゃんの実力は大人顔負け……いや、下手な騎士を凌駕している。
つまり中学生では練習相手にならないのだ。
「そう言うリベルはどうするんだ?」
ゲームでは部活に入らず、商売に精を出していた筈。
「俺か?部活はどこでもええ。出来れば生徒会に入りたいんや。王子様とヴィオレ先輩がおるんやで。仲良うなるチャンスやろ」
言いたい事は分かる。王位継承者第一位のリヒト王子と仲良くなれれば、政治的に優位になれる。
「でも生徒会って、スカウト制度なんだろ?」
この学校の生徒会は貴族の子弟が中心となり運営されている。こんな俺でも取り入ろうとした生徒が集まってきたんだ。
仲良くなるチャンスを狙っている生徒は沢山いる。だからスカウトが慣例なのだ。
(場合によってはヴィオレ先輩に頼んでやるか)
俺は実家の事業に精を出したいからパスです。
そんな事を考えていたら、教室がざわめきだした。
「えーっと、いたいた。トール君ちょっといいかしら?」
これが美人な先輩だったら、テンション爆上がりなんだけどな。
「ヴィオレ先輩、どうされましたか?」
やってきたのは中性的イケメンのヴィオレ先輩。貴族の先輩がわざわざ来るなんて、嫌な予感しかしない。
「丁度良かった。リベル君もいるわね。貴方達、昼休みに生徒会室まで来てもらえるかしら?」
生徒会室と聞いてテンションを上げるリベル。
「フォルテ、主命だ。お前が生徒会室に行ってこい」
俺は本家の嫡男だ。命令権がある。無言で俺を睨むフォルテ。許せ、あんなイケメン天国は俺にとっては地獄でしかないのだ。
「トール君、大好きなお姉様から伝言よ“秒で来ないと、しばくわよ”ですって」
……誰だよ。レイラ様はみんなお優しいとか言った奴。姉ちゃんは、有言実行タイプなんだぞ。
「人に無茶振りしようとした報いだ。行ってこい」
フォルテは笑いを堪えながら、俺の肩を叩いてきた。
◇
昼休み、俺はリベルと共に生徒会室にやって来た。
重厚かつ荘厳なドア。どう見ても学校の設備ではない。
しかも入り口には騎士と執事が待機している。執事の方が俺より高貴オーラを放っています。
「トール・ルベールです。ヴィオレ先輩に呼ばれて来ました」
執事さんに一礼して、話し掛ける。今は貴族だけど、根はサラリーマン。訪問先では礼儀を欠かさないのだ。
「お待ちしておりました。王子、トール様とリベル様がお越しです」
扉が開くと同時に白く細い手が伸びてきた。そして俺の右手をがっちりホールド。
「トールさん、良く来てくれましたね。嬉しいですわ」
……姉ちゃん!?そこにいたのは余所行き全開のお姉様……王子の前で猫を被りたいのは分かるけど、手のツボを全力で押すのは止めて下さい。
「トール君にリベル君、良く来てくれたね。僕はリヒト・スフェール。生徒長をしている」
そういって爽やかに笑う王子様。笑顔が眩し過ぎる。王子は一年生で生徒会長に立候補、圧倒的な得票で当選したそうだ。
凄いなと思うけど、この人次期王様なんだよね。よほどの頑固者やひねくれ者じゃなきゃ、王子に入れるよね。
「リヒト王子、お会いできて光栄でございます。リベル・キャナリー、王家に忠誠を誓わせていただきます」
こいつ、標準語話せたのか。しかも、肝心の部分を俺に丸投げしやがって。
「王子、お招きありがとうございます。本日は、どの様なご用件でございましょうか?」
本来なら直答もアウトな相手だ。でも、空気的に俺が確認するしかない。
(おー、睨んでいる、睨んでいる。王宮騎士の息子に神官長の娘、公爵の姪……これはまた見事なイエスマン集団だな)
家柄だけで言えば見事な集団だ。生徒会の一存で教師の首を飛ばす事も可能だと思う。
「生徒会の新メンバーに誰が良いか、ヴィオレに相談したら、君のお姉さんとリベル君……そして君の名前があがったんだ」
姉ちゃんとリベルは分かる。でも、なんで俺なんだ?ヴィオレ先輩、俺を買い被り過ぎだぞ。
「レイラを誘ったら“
もし姉ちゃんが生徒会に参加していたら、ネチネチいびられていたと思う。血筋はともかく数年前までは農家の小娘だったんだし。
(レイラ・ルベールがお家柄をひけらかす様になったのは、
ここで姉ちゃんが対抗するには家柄しかない。価値観が偏ったのも頷ける。
王子とヴィオレ先輩からの問い掛けだ。スルーは出来ない。でもこの答えを、去年まで小学生だったリベルに言わせるのは酷だ。
ここは俺が泥をかぶるか。
「世事に明るい者がおりません。当校は上流階級の子供だけではなく、才能を認められた庶民の子供も通っております。その者達の意見を汲める人間が少ないかと」
流石に王子様相手にお前のイエスマンしかいねーじゃんとは言えない。これでも大分オブラートに包んだつもりなんだけど、生徒会役員の方々は気に入れなかったらしく、俺を睨んでいる。
「あ、貴方は、王子に下々の者と交われと言うのですか?」
公爵家の姪っ子が、俺に突っかかってくる。ヴィオレ先輩を横目で見ると、意味ありげにウィンクしてきた。
「あのな、臣民あっての国家なんだぞ。民が働いて税を治めてくれるから、俺等は貴族出来ているんだよ。王子が交わらなくとも、民の声を届けるのが側近の仕事だろ」
ヴィオレ先輩は笑っているけど、他の役員が激おこです。今までこれだけ苦言を呈された事はないと思う。
「民が税を収めるのは責務であろう。王家があっての民だぞ……これだから拾い子は」
王宮騎士の息子が激怒した。ちなみに家族と顔が似てないから、俺が拾い子か母さんが浮気して出来た子だって噂があるらしい。
「あのね、王家が偉いんであって、あんたが偉いじゃないのよ?それと、うちの両親はブリーゼ・アデール様から祝福してもらっているの。この意味分かるよね……私の弟に喧嘩売るっていうなら、代わりに買ってあげても良いのよ」
お姉様、嬉しいけど王子の前ですよ。
ブリーゼさんの祝福は縁を強くする代わりに浮気をしたら、針が心臓を貫くという呪いに近いもの。
つまり浮気の可能性はゼロっていう証拠になるのだ。あの極貧生活で子供を拾う余裕なんてないし。
「はい、貴方達の負けよ。それにトール君は、書類仕事が得意なの。生徒会に入れて損はないわ」
ちょっと待て。俺も生徒会に入る流れになってないか?
「レイラ・ルベール、トール・ルベール、リベル・キャナリーの三名を生徒会に採用する」
鶴の一声ならぬ王子の一声で、俺達の生徒会入りが決定した……待て、姉ちゃんと王子の婚約ルートに近づいてないか?
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