落とした財布

 青空が広がる空の下、僕はふぅと息を吐いた。二三回深呼吸すると心地の良い気分になった。


 ここは大阪府と奈良県の間にある、金剛山の麓のバス停。


 バスには30人ぐらいの人が乗っており、みんなこの金剛登山口というバス停で降りた。


 さあ山頂まで登ろう。


 僕は背筋を伸ばし、リュックのベルトを手で握りしめ、一歩づつ慎重に歩を進めた。


 実は今回の登山には目的があった。


 一ヶ月前のある日に、夢で、「金剛山」、「神社」というワードが頭に浮かび上がってきたのだった。


 僕は目を覚ますとスマホで「金剛山」「神社」と検索した。すると金剛山の山頂に葛城神社という神社があることがわかった。


 僕の今回の登山はこの葛城神社に参拝するのが目的だった。


 山頂まで休憩をいれて80分で登った。


 紙パックの野菜ジュース、500ミリのペットボトルの水が空になった。


 僕は山頂の売店でソフトクリームを買って食べた。


 空っぽの胃袋にソフトクリームが沁みる。


 おいしいの一言だ。


 そして売店のおっちゃんに葛城神社の場所を聞いて、葛城神社に向かった。


 参道を歩いていると、「〇〇さん(僕の名前)今すぐ山頂の売店までお越し下さい」と放送で呼ばれた。


 僕は焦った。


 僕の身内が死んだのかなと一瞬思った。


 葛城神社に向かう参道で放送で呼ばれたので、もしかしたら神様が「お前は葛城神社には来るな」と言っているのかもしれないなとも思った。


 僕は急いで売店に向かった。


 売店に着くと、「〇〇です(僕の名前)先ほど放送で呼ばれた者です」と名乗った。


 「自分何か忘れてない?」


 おっちゃんは言った。


 僕はリュックの中を探した。


 あっ、財布がない!


 「財布がありませんっ!」


 「これ自分の財布やろ?」


 おっちゃんは僕の青い長財布を持っていた。

  

 「拾ってくれはったで」


 「ありがとうございます!誰が拾ってくださったのですか?」


 「もういはれへんわ」


 僕の財布を拾ってくれた人はもう姿を消していた。


 言葉で言い表せないほどの感動を味わった。


 財布の中を見てみると、お金、カードなどそのままの状態で残っていた。


 僕は神様に護られていると思った。


 僕はその後、葛城神社に参拝した。


 葛城神社では、僕の財布を拾ってくれた人に、幸運が訪れますようにと祈った。


 神様はきっとその人に幸運を降ろして下さるだろう。


 僕はその後、下山して、バスに乗って自宅まで帰った。

 

 家に帰ったあと、改めて、財布を拾ってくれた人、神様に感謝した。


 僕は今回の登山で、やはり僕は様々な人の御縁で護られていると感じた。


 財布を拾ってくれた人とも御縁があるからこそ、僕を助けてくれたに違いない。


 神様はいつも僕を護って下さっているのだ。



(これは実話です)

 

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