思わぬ展開

 僕は京セラドームに野球を観に行った。


 僕はオリックスファンだ。


 この日は平日のナイトゲームで、観客はサラリーマンや、明らかに最近ファンになったと思われるユニフォームを着たOLがいた。


 試合はワンサイドゲームでオリックスは敗戦した。


 帰路につくと、京セラドームの最寄り駅である大正駅のトイレに入った。


 個室に入ると、誰かが忘れたのか、財布が落ちていた。


 財布の中身を見ると13万円入っていた。


 キャッシュカードも何枚か入っていた。


 一瞬、盗んでしまおうかなと思ったが、先日、母に助けてもらったことを思い出した。


 そんなことをしたら、母を悲しませてしまう。


 僕はトイレから出たあと交番にそれを届けた。


 数日後、スマホに電話がかかってきた。


 交番からだった。


 今すぐ来てほしいと言われた。


 僕はカバンを持ち、電車に乗って交番に向かった。カバンのオリックスのキーホルダーがキラリと光った。


 交番に到着した。


 交番には、白いスーツを着た、白髪の老男性がいた。


 僕は一瞬で、その老男性が社長だなと思った。彼のオーラでわかった。


 老男性は僕に自己紹介した。


 彼は株式会社〇〇の社長だった。


 僕は仰天したふりをした。


 社長だというのは、はじめからわかっていたことだった。


 君にお礼をしたいと言われた。


 彼は僕のカバンに付いている、オリックスのキーホルダーを見てこう言った。


 「君、オリックスファンなのか?」


 「はい、そうです」


 社長は、ほうと大きく頷いた。


 「弊社はオリックスバファローズ球団のシーズンシートを所有している。もし良かったら、君に贈呈したいのだが」


 僕はありがとうございますと言い、シーズンシートをもらった。


 僕は彼に深いお辞儀した。


 「ありがとうございます」


 僕は大きな声で言った。

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