神はからい
久石あまね
母の想い
昨日は久しぶりに中学の頃の友達と会って、鳥貴族で飲んだ。
朝起きると二日酔いの頭はグラグラし、起き上がるのも一苦労だった。
リビングルームに行くと母が机に向かって何やら作業をしていた。
折り鶴を折っているようだった。
青い鶴だ。
「おはよう、駿也」
「おはよ」
僕は何の感情も込めなくそう短く言った。
「駿也今日友達とまた飲みに行くんだよね?」
あっそうだった。今日は街コンで知り合った夢子さんと飲みに行く予定だった。
母には男友達と飲みに行くと言っている。
「うん、拓哉と飲みに行く。ってなんで折り鶴折ってるの?」
「暇だから」
母はそう言って含み笑いした。
なんだかあやしい。何かあったのだろうか?
しかし僕は母の笑みを詮索しなかった。
その後母は何品か料理を作り置きしてくれて実家に帰った。
僕はひとりアパートで夜まで本でも読んで過ごした。
そして夜になり、夢子さんと待ち合わせしている、居酒屋に向かった。
電車で三駅の居酒屋まで音楽を聴きながら駅のホームでぼうっとしていると、突然腹痛がした。
腹痛はだんだん大きくなり、立っておれなくなった。
気がつくと僕は救急車で運ばれていた。
原因は昨日居酒屋で食べた刺し身に寄生虫が入っていたことだった。
僕は手術された。
夢子さんとの予定は不本意になくなってしまった。
夢子さんに申し訳ないなと思った。
翌朝、病室でテレビを観ていると、ひとりの女性が映っていた。
僕は啞然とした。
その女性は夢子さんだった。
美人局で何人もの男性を騙していたらしい。
僕も危うく騙されることだった。
中には殺された男性もいたらしい。
僕は呆然とした。
しばらく何も考えられなかった。
ふと、ベッドの脇の、棚を見ると、青い折り鶴があった。
きっとこの青い折り鶴を折った母が僕を護ってくれたのだろう。
僕は母の愛情を感じた。
そして母の健康を祈った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます