第2話 君への想いは止まらない。

「……お前が、不幸になるんだよ……」

「え…………?」


彼が顔をゆがめて、そう言った。

意味が分からない。

それって、涼が私のそばにいたら、私が不幸になるっていうこと……?


「なんで……」


なんで。

さっきまで気持ちよかった風が、急に冷たく感じられた。


「涼といることが、私にとって不幸だとでもいうの……?」


そんなことない。

私は涼といるだけで嬉しくて、胸がきゅうっとなって、心臓が異常なほどのスピードで波打つ。

こんなに好きなのに。


私が涙目で涼を見ると、私の視線から逃げるようにして涼が横を向く。

でも、ゆっくりとうなずいて、小さな声で「そうだ」という。


その声に、大きな絶望感が私を襲う。

ぐらり、と視界が傾く。


でも、まだ涼と離れたくなくて、涼との時間をあきらめたくて、私は必死に言葉を紡ぐ。


「私、幸せだよ?涼と一緒にいる方が、幸せなんだよ?」

「お前、」

「離れて、なんて言ってほしくなかったっ……」

「——っ」


勝手に涙があふれてきて、まだ蓋さえ開けていないお弁当の上に、ぽたぽたと落ちる。


何より、あきらめたくなかったものは。



涼との、ハッピーエンド。




「涼のこと、ずっとっ………!」





もう、止められなかった。







「好きだったんだよっ……」




涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、涼にありったけの想いを伝える。

今までせき止めていた何かが外れて、あふれてくるのは涼への想い。


好きだよ、好きだよ。

大好きだよ。


私の言葉に涼は驚いたように目を丸くする。


ねえ、ちゃんと伝わった?

伝わったの?


私が涼のことをじっと見つめると、涼は私の涙を拭いてから、言った。



「……お前の気持ちには応えられない」



切なさが混じった、でも私が大好きな声でそう言った彼は、私に近づいて、震えるくらい小さな声でつぶやいた。



「俺、ずるくて、ごめん」



え、と思う暇もなく、体が一瞬で温かく包まれる。

涼に抱きしめられてる、と思うと同時に、彼がわたしに向かって何かを言った。



「でも、お前のこと、………



聞き取れず、もう一回聞きなおそうとしたけれど、彼に抱きしめられている温かさをずっと感じていたくて目を閉じていた。


久しぶりに、彼の温かさに触れた気がした。


今日、勇気を出して彼と話しをして、分かったことは2つ。


1つは、彼は、私でも知らないなにかを抱えていること。


2つ目は、こんなにも彼への想いが溜まっていたこと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る