第1話 君が隣にいてくれたから。

◇幼少期の追憶の中で◇


――「りょーくん、いっしょにあそぼ?」

――「……加奈はなにやりたいの?」

――「えっとねぇ……」


無邪気に笑う私に、静かに笑っている涼。

子どものころから涼はいつも隣で笑って、私と一緒にいてくれた。

いっつも私のわがままに付き合わせて、それでいて、「楽しかった」と言ってくれる涼が大好きで。


――「うわああん、うっ、うわあっ……」

――「加奈、だいじょうぶ……?」

――「うわあん、りょう、くん……」

――「……大丈夫だよ……」


泣いて、辛いときも。

苦しいときも。

ずっとそばにいてくれた。


――君は私の、ヒーローです。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「はーあ……」

「どうしたの?何か悩み事?」

「み、美桜みおちゃーん!どうしよう!」


現れた助っ人に、私は泣きつく。

中学校時代、あんまり話さなかったんだけど、高校になって、結構話すようになった彼女、渡部わたべ美桜みおちゃん。

入学して1か月、もうお互いに気を許すようになってきた。


クラスのまとめ役として活躍して、頭もいい、まさに理想の女子!


「幼馴染の涼に、嫌われちゃった……!!」


言葉にすると、さらに悲しくなって涙が溢れそうだ。


「ああ、涼君。あの女子の間で有名な……。たしか、加奈ちゃんの好きなひ――」

「ああああ、それ以上言っちゃダメっ‼」


何かを言おうとした美緒ちゃんの口を、あわててふさぐ。

それで、私は耐えきれなくなって全部話したんだ。

無視されたこと。

幼馴染じゃないって言われたこと。

関わりたくないって言われたこと。


「美桜ちゃん、私どうしよう……」

「うーん、まずはしっかりと理由を聞くべきね。ちゃんと聞いて、白黒はっきりさせてきなさい」

「理由を……」


確かにそうかもしれない。

意外と私、目の前が見えていなかったのかも。


「ありがとう、美桜ちゃん!」


私は早速今日の放課後に彼を引きとめることを、固く決意したのだった。

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