第2話 超能力開発授業
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サイエンスハイスクール豆知識
アストラルエネルギー研究開発機構のトップに君臨する研究所付属の高等学校。
広大な敷地面積に豊富な研究員と教員、アストラル研究に必要な施設全てが揃っている。
主に主人公赤口蒼太が通う超能力開発学部では、超能力の研究・開拓、軍事利用、医療など、個々の固有能力によって用途は異なるが、軍事利用については学生という身分もあり議論が為されている。
住所は非公開で一般人にはどの場所に位置しているかは不明。
アクセスは許可証、または学生証を使って通過できる東京駅から直通で通っているアストラルを使った電車でのみアクセスできる。
この路線には、サイエンスハイスクール前の駅の他学生や研究員達が使うレジャー施設に繋がる駅も多数存在する。
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「皆さん初めまして。本日から1年超能力開発学部クラスの担任を務めさせて頂きます浅野恵子と申します。よろしくお願いします。」
彼女は少し緊張した様子で自己紹介をしてみせる。手に持っている書類を生徒に配り始め、意気揚々と超能力開発授業について語り始めた。
「今配った書類は寮生活をする上での注意や学校のルールなどをまとめた物になります。休み時間等を利用して読んでおいてくださいね!」
「では早速オリエンテーションとして、超能力開発授業について説明させていただきます!」
「皆さんDNAコンピュータでの解析は既に済んでますでしょうか?自宅近くにDNAコンピュータが無い生徒さんもいらっしゃるかと思いますので、解析がまだの方はこの後1階の受付にその旨を伝えてください!」
この発言を聞いて安心する蒼太であったが、実はこの時点でDNAコンピュータによる固有能力解析を行っていないのは蒼太1人である。
「本日は解析がまだの方でも授業に支障がないように、基礎の基礎であるアストラルの出力その応用である身体強化について勉強しましょう!」
こうして浅野先生の授業によって話は進んで行き、座学の時間はあっという間に過ぎて行った。
「次は先の手順を実践してみましょう!運動場に移動しますのでこちらは着いてきてください!」
「こちらの運動場では、出力したアストラルを的に命中させる。と言うシンプルなものになっております!アストラル出力を一方向に絞り、集中させるのがコツです!なお、人に向けるのはもっての外です。十分注意して的を狙ってください!」
浅野先生によって合図が為された後、一斉に的への攻撃が始まる。
各自的を順調に破壊していくが蒼太と、1人の女性がアストラルの出力に苦戦していた。
「えっと、手順ではまず、攻撃意識を明確にして感情を的に向ける、だったっけ...」
「よしっ!おら!」
手に力を込め、的に向かってアストラルを出力しようと試みるが、真っ直ぐ一直線には飛ばず、近距離で大量に溢れ出し、霧散してしまっている。
「あれ、なんでだ?」
周りが出来ているのに、なぜ自分には同じことができないのかと疑問に思う蒼太。
焦っては余計な感情が入り混じる為的を攻撃する事に集中するがなかなか上手く行かないようである。
その一方、端の方で蒼太と同じく苦戦する者が1人。
彼女の名前は屍毒恵水(シドクエミ)
固有能力は酸化。
あらゆる物質を酸化できる。
蒼太とは違い、全くアストラルを出力出来ていないようである。
「ど、どうして...」
彼女はかなり焦っている様子で感情と意識が大きく乱れ、最初の方こそあらぬ方向にアストラルが出力していたものの、今となっては全く出てきていない。
隣でその様子を見ていた女性が声をかける。
「大丈夫?落ち着いて。」
「私は金剛美綺、貴女は?」
慌てた様子で恵水は答える。
「あっ、あのっ!」
「えっと、その...屍毒恵水です。すみません...」
何故か謝罪の言葉を入れる恵水
その言葉を聞いて笑みを浮かべる美綺。
「ふふっ、貴女おもしろいのね!」
「あまり出力がうまくいってないみたいだけど、きっと焦っているだけ、もう一度落ち着いて的に集中してみて!」
それを聞いた恵水は一度深呼吸をし、真っ直ぐ目線を的に向けてアストラルを出力した。
「えいっ!」
不安定な出力だったが見事に直線で出力され、破壊までは行かずとも、的に当てることが出来たようだ。
「あ、あのっ、その、ありがとうございますっ」
小さいのが大きいのか良くわからない不安定な声で感謝する恵水
「いいのよ。お互い頑張りましょうね!」
一方で蒼太は灰腹にアドバイスを受けている最中であった。
「お前の場合出力自体は上手くいってるし、その出量もかなりのもんだから、真っ直ぐ細く、前に飛ばせれば的は破壊できると思うぜ。」
「もっとアストラルを一点に集めて局所的に少しずつ放出してみると良いぞ!」
「なるほど、こんな感じかな?」
受け取ったアドバイスをもとに集中してアストラルを出力する。
するととんでもない速さでレーザーのように細く放出されたエネルギーは的を射抜いた。
「おおっ、すげぇなお前。細すぎてレーザーみてぇになってやがったぞ。しかもあの的の後ろにある壁、穴空いてねぇか?」
これを見て唖然としていたのは灰腹だけでなく周りの生徒や浅野先生も同様である。
「アストラルの出力は基礎中の基礎ですが、かなり難しい技術です。今年の生徒さんはどうやら優秀な生徒さんが多いようですね!感激です!」
浅野先生はそう発言すると次のフェーズへ案内した。
「次は体内でアストラルを出力せずに循環させ、身体能力を高める技術を実践してみましょう!」
「先程授業で手順は教えた通りですが、あくまでもこの技術による身体強化は体内で循環させたアストラルを利用した運動エネルギーと熱エネルギーで運用される為、筋力が強化されるわけでも骨が固くなるわけでもありません!使用には充分注意しましょう!」
「もしも循環させるアストラルの配分を間違えて壁や地面に激突しそうになってしまった場合は、先程実践した出力を直線ではなく平面で出力し、近距離でガードするようにしてみてください!自分を守る為に使うので的を破壊した時のような敵意を向けてはいけませんよ!」
浅野先生の合図の元、運動場でアストラルによる身体強化を行い、50m走を行う運びとなった。
そしてタイムはこのような結果となった。
赤口(0.8秒)
灰腹(5.4秒)
金剛(5.7秒)
屍毒(6.9秒)
他の生徒は省略。
平均タイムは5.8秒(男女混合)
赤口のタイムだけが異常なほど速く何が起きたかは5分ほど前に遡る。
「よし、体内でアストラルを循環させるのはかなり上手くできるぞっ!50m走なら元々足の速さにも自信あるし、いいタイムが出るといいな!」
意気揚々と準備運動をする蒼太。
クラウチングスタートの構えを取り、スタートの合図と共にアストラルを体内に循環させる。
すると一瞬のうちにゴールテープを突っ切り、壁へと吹っ飛んで行く。
「危ねぇ!」
「危ない!」
灰腹と浅野先生が真っ先に気付き、ガードに特化したアストラル出力を行う。
灰腹はまだ遠距離でガード出力を行えない為赤口の背中に合わせて出力を行い、対して浅野先生はおそらく激突するであろう壁に三重でガード出力を遠隔で繰り出す。
合わせて四重になったアストラルは時速にして約225kmで飛ぶ赤口を凄まじい轟音と共に受け止める。
おそらくこれが無ければ死亡していたであろう。
本来アストラルを固有能力で使わずに具現化する場合は燃費が悪く、体力の消耗が激しい為非効率であり、使う者は殆どいない。
それを加味した上でのカリキュラムであったが浅野先生の想像を遥かに上回る出力だった。
「痛ってぇ...」
蒼太はゆっくり起き上がったと思えばすぐに気絶してしまった。
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