TABOO・INITIATION
月見山六花
第1話 入学式と不可解な剣
「必要な持ち物は揃えたけど、どうして必要な持ち物リストに武器の項目があるんだ?」
持ち物リストをチェックしていると確かにそこには各自に武器を一つ持参するようにとある。
「明日から入学式か...いやぁ困ったな...確かに超能力開発をカリキュラムに組み込んだ新しい学校みたいだけど武器なんてそう簡単には用意できないし......」
そう言って自室を後にし、物置部屋へと向かう蒼太。
「蒼太?そんなところでなにしてるの?」
どこか心配そうな顔をした母親が問いかける。
「あっ、母さん。良いところに来た」
「実は明日の入学式で必要な持ち物なんだけど、そこに武器が必要って書いてあったんだ。何かないかなと思って物置部屋に来てみたんだけど武器なんて置いてあったりしないよね?」
すると母は何か思い出した様子で散らばった物品を移動し始める。
「どうして武器が必要かは知らないけど、ずっと部屋の真ん中に邪魔な剣が置いてあるのよ」
「重くて誰も動かせないから、ずっとこのままにしておいたらしいんだけど物騒な事に使わないなら、持って行っても良いわよ」
そう言って何やら埃被った鉄の箱を開くと、中にはどう見ても重そうには見えない細く、華奢な剣が入っていた。
「これが...重い?そんな馬鹿な」
そう言って手に取ってみると確かに重い、見た目からは想像も出来ない質量を感じられる
「うわっ!なんだこれ。持ち上げる時はめちゃくちゃ重いのに持ってしまえば何故か普通に維持できる、、いや、でも振り翳そうとしたり下そうとしたり、とにかく動かしたらまた持ち上げたときみたいにすごく重い、気持ち悪いなこれ」
「ちょっとこんな狭い部屋でそんな長い物振り回そうとしないでよ!危ないでしょ!」
「それはそうと、あんた良くそれ普通に持てるわね。父さんでも持ち上げるどころか箱ごと引きずって移動すらもできないのよ?」
「へぇ、そうだったんだ。確かにこんな部屋の真ん中にこんな邪魔な箱置いてあったら片付けられないもんね」
なぜ部屋の中に古びた西洋の剣が置いてあったのか、そんな事は知る由も無いが明日の入学式に必要な持ち物を揃える事が出来た事もあり、どこか嬉しげな蒼太。
急いで自室へと戻り剣を抜いて戻る途中で一緒に持ってきたリンゴを試し切りしようと試みた。
「うっ、やっぱり重い。なんなんだこれ」
「よしっ!! おりゃぁぁぁ!」
なんとか剣を持ち上げ、振り翳す。
すると剣はリンゴを切るどころか、置いていた机まですり抜け、空振ってしまった。
「え?どうなってんだ?今、確かに振り翳したよな?通り抜けた...どう言う事だ?」
落ち着いて考え直しても今起きた事実は変わりようがなく、ただ、すり抜けていた。それ以外考えられなかった。
しかしどうしてもこの剣を使いたかった蒼太は2時間も剣を振り続け、遂にその時が来る。
「クソッ!この!どうにかなりやがれ!」
2時間も剣を振り続けたせいかかなり立腹した様子で剣を振り翳す。
「うわっ!」
あろう事か切ろうとしていたリンゴは一振りで粉々に粉砕してしまった。
しかし2時間前と同様に机だけはすり抜けた様である。この不可解な現象に蒼太は頭を悩ませたが、先に好奇心が湧いてきたようで。
「これもしかしてすごい剣なんじゃないか!こんな俺でも使っていい代物なのかな!学校で武器を何に使うのかわからないけど、明日の入学式、楽しみになってきたぞ!」
そう言って重そうにしながら剣を納め、明日の入学式に備える為、早めに就寝する蒼太。
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そして迎えた入学式当日。
「蒼太〜早く起きなさい!遅刻するわよ!」
「今行くよ!」
起床を済ませ、昨日準備した荷物をまとめてリビングへと向かう。
すると何やら母が見慣れない家電を使っているのに気が付いた。
「母さん何その世紀末みたいな変な形の炊飯器」
「あぁ、これのこと?昨日送られてきたんだけどご飯炊けろ〜って思いを込めると電気も無しにご飯が炊ける魔法みたいな炊飯器なの!あんたが今日から通う学校から送られてきたのよ。なんでもこの炊飯器もその学校で研究されたものみたいよ」
「へぇ!そんな物まで作れるようになってるんだ!アストラルエネルギー?だっけそれがさっき母さんが言ってた思いを込めるってやつかな」
「あんた今日から入学だって言うのに殆ど勉強してないのね、そんな調子で超能力開発なんて受けられるのかしら...」
母が心配するのも無理はない。
アストラルエネルギーはここ最近で最も注目されているエネルギーの一種で石油に変わる温室効果ガスを発生させない人間由来のクリーンエネルギー。
全世界の科学者たちが研究に勤しみ、たびたびニュースになっている為この概念を知らぬ者は世間知らずと言う事になる。
そうこうしている間に朝食と身支度を済ませて、いよいよ家を出る。
サイエンスハイスクールは寮生の学校、暫くは帰ってこないと言う蒼太は恥ずかしそうな顔をして母に感謝して家を出る。
「母さん、暫く帰れないけど、元気しててね!」
「寂しくなるわね、超能力なんて便利な物身に付けてくるんだから、社会の役に立てるように頑張るのよ!気をつけて行ってらっしゃい!」
母に別れの言葉を済ませた蒼太は学校へと向かう。
電車に乗りたどり着いた場所は恐ろしく綺麗に整備された新しい駅。
駅を出るとそこには高校とは思えない大きさの敷地が広がっていた。
「これが、俺の通う学校、デカすぎんだろ......」
そう言って驚きながら恐る恐る正門を潜り、職員に案内されながらも入学式が行われる会場へと赴く
そわそわしながら式が始まるのを待っていると、1人の男が話しかけてきた。
「ここに座ってるって事はお前、超能力開発学部か?もしアストラルエネルギー製品研究開発学部なら向こうの席だぞ。」
「えっと、俺の事?俺は超能力開発部で合ってると思うよ...君の名前は?俺の名前は赤口蒼太、よろしくね!」
「すまなかった、自己紹介がまだだったな。俺の名前は灰腹榮治郎だ。固有能力は温度上昇、よろしくな!」
ここで交わされた自己紹介に違和感を覚える蒼太。
「え、固有能力って?俺そんなの知らないんだけど」
「おう、そうか、まだDNAコンピュータによる解析を済ませてないんだな、、本当なら入学前までに済ませてある程度データを取っておくんだが、ちゃんと入学式の事前説明は読んだのか?」
「あ、そう言えば良くわからないページがあってそのままだったどうしよう、入学早々退学になっちゃう!」
焦る蒼太、ここまで準備して大学では別れの挨拶をしてきた母に合わせる顔がない。
「おう待て、そう焦るな、DNAコンピュータは田舎にはねぇから学校でも解析はやってるぜ。入学式が終わったら手続きを済ませてくればいいさ」
「ありがとう!あ、そろそろ式が始まるみたいだねこんな僕に優しくしてくれるなんてすごくいい人だ!あとでお礼させてよ!」
「そこまでしてもらう義理はねぇさ。またわからねぇことがあればなんでも聞いてくれ」
そうして式が始まり、なんのトラブルもなく無事に式は終了した後に1年生のクラス分けがなされた。
と言っても入学する人数はほんの数十人で超能力開発学部の生徒とアストラルエネルギー製品研究開発学部の生徒の2クラスで構成される事となった。
今年から新設される学校のため入学する人数が少ないのも頷ける。
元から在籍していた者は上級生ではなく職員、教員、研究員で元々研究所だった施設を学校に改築したようである。
案内された教室の席に着くと隣の席は先ほど会話した灰腹であった。
「席隣だったんだね、よろしくね!」
「おう、よろしく頼む」
暫くすると美人な教員?担任の先生だろうか?何やら書類を持って教室へ入ってきた。
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