ジャンキー・ゴースト(全3話)
ジャンキー・ゴースト①
AM 2:17
東京都 渋谷駅近くの裏通り
道路に仰向けで大の字に倒れる男性。グレーのパーカーを着て、フードを被っている。その男性の腹部に馬乗りになり、逆手で握った包丁を振り下ろす学ラン姿の少年・リク。男性の胸を何度も突き刺す。やがて男性の体は霧のようにその場から消え去った。
立ち上がるリクの背後から、
リク「どうでした?オレの殺しのテク、ちょっとは上がりましたよね?」
避山「プロの俺から言わせるとまだまだお粗末だ。確実に致命傷になる首を狙え。生身の人間は胴体を雑に傷つけてもやがて失血死するが、幽霊は出血しない。急所を狙って一発で仕留めないと逃げられる可能性がある」
リク「でも今の幽霊はちゃんと仕留められましたよ」
避山「いつもマウントポジションで押さえ込めるとは限らねぇだろ」
リク「……褒めてもらえると思ったのに、手厳しいなぁ」
避山「もし今のお前がシゲミやハルミを相手にすれば、100%返り討ちだ。もう少し一般人の幽霊を相手にして、殺しのスキルアップをしろ」
リク「俺だって幹部ですよ!チームの役に立ちたい!」
避山「その意識はご立派だが、俺も
リク「それじゃオレが満足できないよ!」
語気を強めるリク。同時に彼がまとっているドス黒い邪気が一層濃くなる。
リク「オレたち幹部は向風さんから『怪異暗殺者を始末しろ』と言われた!他の幹部たちはすでに準備を始めている!オレだけちまちまトレーニングしなきゃならないなんて、プライドが許せない!」
避山「だが、今さっきお前が殺した麻薬の売人のようにいかないのは事実。自爆特攻でもする気か?」
リク「……麻薬……麻薬か。避山さん、オレはすぐにでも怪異暗殺者を始末したい。でも自分が成仏するのは絶対に嫌だ」
避山「ならどうすんだって聞いてんだよ」
リク「代理を立てるんです。オレの代わりに怪異暗殺者と戦ってくれる代理を」
避山「そんな知り合いがいるのか?」
リク「これから作ります」
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PM 16:24
表参道にあるカフェ
テラス席で向かい合うように座るハルミとジン。
ハルミ「学校終わりに呼び出してすまんのぉ。午前中にアタシャのオリジナルブラックウォーターガンが完成してな。どうしても今日、見てほしかったんじゃ」
ジン「いえ、俺もハルミさんに相談したいことがあったんで」
ハルミは足元に置いていた青い巨大な風呂敷袋を机の上に置き、広げる。ガトリング砲を模したカラフルな水鉄砲と、背負えるように2本のベルトがついたタンクが包まれていた。
ハルミ「ジンくんのブラックウォーターガンはセミオートのアサルトライフルを基準に設計されとった。ワンショット・ワンキルを狙うスナイパーが使うならそれで良いじゃろう。が、高火力でバンバン撃ちまくりたいアタシャの性分には合わんのでな。水の射出速度を高め、さらに砲身を6つに増やすことで連射性重視に改造した」
ジン「マジすか!?俺、ポコポコの母の部下と戦ったとき、今のブラックウォーターガンじゃ多人数を相手にするのは無理だって感じたんです!これなら相手が何人いようがお構いなしだ!」
ハルミ「じゃがデメリットもある。砲身を増やした分、一つひとつの作りをシンプルにせざるを得なくてな。遠くまで出力を維持する機構にはできんかった。有効射程は50mがせいぜいじゃろう。それに、一瞬で大量の水を射出するから大きなタンクが必要じゃ。これを背負うと重くて腰をいわしそうになる」
ジン「まだまだ改良の余地ありですか……もし完成したら、俺の分も作ってくれませんか!?」
ハルミ「ええじゃろう。もう少し時間をくれ。で、ジンくんの相談というのは?」
ジン「また射撃の稽古をつけてほしくて。しばらく実戦から離れてて、腕が鈍ってる気がしてならないんです」
ハルミ「もちろんじゃ。今週末、ウチに来とくれ」
ジン「ありがとうございます!」
ジンがお礼の言葉を発した直後、人々の悲鳴と、重い物体が落下したような衝撃音が2人の耳に飛び込んできた。
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