爆弾魔 VS 盗撮魔 ROUND 2④
サエの家の門から道路に飛び出るシゲミ。右手側30mほど先、左右にふらつきながら走る
武里村「なんでこんなことに……私はただ……趣味を楽しみたいだけなのに……」
シゲミが左肩にかけたスクールバッグの中に手を入れる。
武里村「だがこの程度の修羅場、何度も乗り越えてきた……校長にまで上り詰めた私のポテンシャルは……こんなものではない……」
手榴弾のピンを引き抜き、武里村に向かって放物線を描くように投げるシゲミ。
武里村「まだレンズは1つ残っている……シゲミ……心霊同好会……浜栗組……ヤツらを必ず」
武里村の足下に手榴弾が転がり、爆破。爆風で吹き飛ばされた武里村は宙を舞い、地面に仰向けで倒れる。立ち上がろうと肘から先が欠損した左腕で上半身を起こそうとするが、爆発により両足の膝から下も消失していた。いくら力を入れても立ち上がれない。
音もなく一瞬で武里村に接近し、体の上にまたがるシゲミ。スクールバッグからC-4プラスチック爆弾を取り出し、武里村の顔面にある、弾丸で割れていない最後のレンズの上に貼り付けた。
武里村「待て……私を成仏させたところで……奪った人間の魂が戻るかは分からんぞ」
シゲミ「
シゲミは武里村の頭上を飛び越え、走って大きく距離を取る。そして右手に握った円筒形のスイッチを親指で押した。
武里村の顔に貼り付いたC-4が爆発し、大きな煙を巻き上げた。爆発に飲まれた武里村の全身は霧散。同時に、いくつもの光の玉が花火のように空に浮かび、四方八方に飛び去っていった。
光の玉を眺めるシゲミに、
蟹沢「男の子は無事だ。武里村は?」
シゲミ「消した。すぐにミキホちゃんの容態を確認して。おそらく目を覚ましてるはず」
蟹沢「そうか……なんと礼を言ったらいいか」
シゲミ「私は最後の一発を決めただけ。それまでアシストしてくれたアナタたちのおかげよ、蟹沢さん」
シゲミが武里村を成仏させた直後、ミキホやサエ、
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武里村が消え去ってから3日後
PM 3:23
市目鯖高校 化学実験室
実験用の大きな机を囲むように座る、カズヒロ、シゲミ、トシキ、そしてサエ。
トシキ「さっすがシゲミちゃんだよね!武里村校長をしっかり仕留めて、サエちゃんも無事救出!」
シゲミ「言いふらしてないよね、トシキくん?」
トシキ「大丈夫!まだボクのクラスの人にしか言ってないから!」
シゲミ「だからそれをやめてって言ってるの」
カズヒロ「ケンカすんなよなー。サエが退院できたお祝いの日だってのによー」
サエ「お祝いなんて大げさだな〜。でもみんな本当にありがとう。弟のショウタも、もう平気そうだよ」
カズヒロ「頑張ったのはシゲミだけだなー。俺らはお見舞いしただけー」
トシキ「サエちゃんがやられたって聞いたときのシゲミちゃん、ガチギレで超怖かったよ」
シゲミ「そう?いつも通りだったと思うけど」
カズヒロ「いや過去かつてないほどキレてた。シゲミも裏番長って呼ばれて然るべきだろー」
化学実験室の扉が開く。市目鯖の裏番長ことミキホが入って来た。
ミキホ「シゲミがここにいるって聞いたんだけど」
ミキホを見ながら椅子から立ち上がるシゲミ。ミキホはシゲミに近寄る。
ミキホ「若頭の蟹沢から聞いたよ。武里村を仕留めてくれたんだってね。助かった。ありがとう。血吸先生もすっかり元気になったってさ」
ミキホは右手を差し出す。それに応えるようにシゲミも右手を出し、がっちりと握手をした。
ミキホ「今度ウチに遊びに来てくれよ。組のみんなもお礼がしたいって言ってるから。もちろんサエも、そこの男子2人も」
サエ「やった〜!ミキホ、サンキュ〜!」
トシキ「ボクたち本当に何もしてないけど……お呼ばれしちゃおうか!」
カズヒロ「ミキホの家ってことはヤクザの本拠地だろー?……おしっこもらしても大丈夫なようにオムツ履いていくかー……」
ミキホ「あと別件なんだけど、シゲミ、私が浜栗組を継いだら舎弟になれよ。アンタほど腕の立つヒットマンは他にいない!」
シゲミ「お断りするわ。私、反社会的勢力にはならないって決めてるの」
サエ「ミキホとシゲミが組めば最強じゃ〜ん!で、その2人と友達の私も最強?」
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2日前にさかのぼる
AM 1:36
東京都 新宿区 歌舞伎町にある『BAR ヤリーカ』
7人分のカウンター席しかない狭くて薄暗い店内。一番奥の席に客が1人。武里村の逃走を手助けしようとした男性の幽霊・
避山「マスター、同じの」
カウンターの中にいる黒いタキシードを着た50代後半の男性マスターが、避山のグラスに氷を追加し、ペットボトルのウーロン茶を注ぐ。
マスター「避山さん、毎日ソフトドリンクだけで何時間も居座られると困まるんですよ。しかもいつもツケ。そろそろ出禁にしますよ」
避山「勘弁してよ〜マスター。俺、酒飲めないし金ないし、ここ追い出されたら居場所もないんだからさ〜」
マスターはペットボトルの蓋を閉めると、避山を無視しして予備のグラスを磨きはじめる。
避山「武里村……能力こそ惜しかったが、成仏間際も盗撮のことを考えてる筋金入りの変態性は、あの人も嫌悪しただろうな。他を探すか」
<爆弾魔 VS 盗撮魔 ROUND 2-完->
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