オーディション②
モモ「御社の新製品『ブラックウォーターガン』の触れ込みが、私の特技とマッチしていると感じたからです〜!私、除霊ができるアイドルとして売り出し中でして〜!」
「除霊」という言葉を聞き、3人の表情が変わる。両端の液野、
水志摩「除霊はどうやって行うのでしょう?」
モモ「声を使います〜!私が出す高音域、人からはめちゃくちゃ不快だって言われるんですけど、幽霊にとってはもっと耐え難いみたいで〜!聞いた幽霊は成仏しちゃうんです〜!」
液野「……じ、実際にやっていただくことはできますか?」
末鬼「いや、やらなくていいだろう。確かに
液野「た、確かにそうですが……」
末鬼「重要なのは知名度や好感度だよ。特にメインの購買層であるファミリーに人気があるタレントを起用したい。その観点だと、広背さんはイメージキャラクターとして適切ではないように思える。まだまだ無名で、ファミリー層向けのアピールポイントにも乏しい」
末鬼の発言に、モモは若干の怒りを覚える。まだほとんど会話していないにも関わらず、不合格の烙印を押されたような気分になったからだ。
水志摩「社長のおっしゃることも一理あります。ですが、広背さんが本当に除霊ができるなら、『ブラックウォーターガン』のイメージキャラクターとして唯一無二。かなりの話題性も期待できると思います」
末鬼「お前の言ってることは全部思い込みでしかないんだよ水志摩ぁ!」
液野「候補者の前です。2人とも口論は控えてください」
突如始まりかけたおじさんたちのケンカを目の当たりにし、モモの怒りは急激に冷めた。自分より怒っている人を見ると不思議と冷静になれるものである。
怒りが収まったことで、モモはより冷静に状況を分析できた。社長の末鬼はモモを落としたがっているが、液野と水志摩は少なからずモモに興味を示している。合格するには、まず液野と水志摩の印象を高めて味方につけ、末鬼へアプローチしていくべき。売れないながらも15年近く芸能界に身を置き続けたモモ。こなしたオーディションの数だけは他のアイドルに負けない。だからこそ土壇場でも冷静になれた。
モモ「本物の幽霊がいないので除霊できたか証明することはできません!ただ私の高音域、超音波と呼んでいますが、その威力を体感してもらえれば本当に除霊できるんだと分かっていただけると思います〜!液野さんと水志摩さんの言うように、ぜひ一度披露させてくださ〜い!」
液野「本物の幽霊……それなら目の前に」
末鬼「余計なことを言うな!」
末鬼が血相を変える。額には大量の脂汗。その表情は怒りが半分、焦りが半分といった感じだ。なぜこれほどまでに応募者に特技を披露する機会を与えたがらないのか、モモの中で疑念が湧いてきた。
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